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今の日本はスタグフレーションなのか? 日本経済と暮らしの今後を考えてみた

前回の記事から、だいぶ間が空いてしまいました。
今回の記事は、タイトルの通りになります。

今の日本はスタグフレーションなのか?

最近の経済記事や報道記事を見ると、「スタグフレーションのような」、「スタグフレーションに近い」といった表現を見ることがあります。スタグフレーションである、と言い切れないのは「ある種正しい表現」と言えます。

スタグフレーションとはそもそも何か?
端的に言えば「物の値段は上がるのに、給与は下がり失業者が増える」最悪の事態を指します。では、今はスタグフレーションなのかというと、そうではないため、先述の表現になるのです。
物価は実際に上がり続けています。物価の上昇と、賃金の上昇を考慮した、実質賃金は下がっており、「手取りから生活に必要な支出を払った後に残るお金」は減り続けています。(単純に生活が苦しくなっている)

スタグフレーションであれば、それに加えて失業者の増加や賃金の低下が襲ってきます。しかし、今回はそうはなっていません。
大学生の内定率は過去最高水準に達しており、24年4月に入社した大学生の内定率は98.1%と過去最高を記録。就職を希望した学生のほぼすべての方々が就職したと言えます。また人手不足から賃金は上がり続けており、アルバイト求人は時給を上げても応募すらない状態が広がっています。
物価が上がり、賃金が上がっている、この現象だけを見れば、インフレが続ていると言えます。

インフレではないのか?

では、インフレとはなぜ言わないのでしょうか。報道するメディアの思惑というようなことではない理由がいくつかあります。

①生活苦の人たちが急増している

まず大きな要素としては生活困窮者が急増している点です。通常のインフレも物価がまず上がり、それに釣られて賃金が上がります。もちろん先行して賃金が上がる場合もありますが、高度経済成長期のときも例えば公務員は民間に遅れて給与が上がっていったため、上がるまでの途中は生活が苦しくなっていったと言われています。これは公務員に限らず、国鉄、専売公社、電電公社などの準公務員的な企業もそうであり、限られた一部の話というわけではありません。
しかし、今回は物価の上昇が急激であり、比にならないレベルで生活苦の人たちは増えています。

②GDPが悪化している

インフレの場合は消費が活性化していきます。賃金が上がるので、みんなお金を使うようになるのが一般のインフレです(高度経済成長期にマイカーや白物家電をみんなが買い、バブル期にみんなが浮かれたように)。
しかし、今回は賃金が上がっていても消費は低迷しています。実際にGDPは悪化しており、その理由はGDPの大部分を占める個人消費(国民の皆さんが買い物をする額)が低下しているためです。つまり全体的に生活が苦しくなっているか、冷え込み始めているわけです。そのため、①の理由にもつながるのですが、食料バンクなどの民間支援や寄付が減り始めており、さらに生活困窮者の増加、悪化につながっています。

③企業間の格差が進行している

インフレの場合は、消費の活発化、経済の発展、企業の発展につながっていきます。しかし②で書いたように消費は低迷しています。そのため、元々利益を多く稼いでいた会社や、海外などで着実に利益を稼げる会社は賃金を大幅に上げていますが、そうではない会社は賃金を上げることができていません。なぜなら、売り上げが増えていないからです。
有識者がいつも指摘しますが、日本の雇用者の7割弱が中小企業に勤めています。そして、この中小企業が先述したように利益拡大できずにおり、賃金を上げる原資を確保できていません。そのため、全体の消費が低迷しており、物価は上がっていくため生活が徐々に苦しくなっているのです。

では、今の状態は何なのか?

一言でいえば、「カオス」、「無秩序」と言わざるを得ません。
仰々しい言葉ですが、その理由は以下の通りです。

①実質賃金が下がっているのに増税をした

今年から森林税という税金が、年間1,000円徴収されます。また電気料金の補助も終了します。本来、実質賃金が下がっている場合は減税を行い、消費喚起し、実質賃金が上がったら、適度に税金を取っていくのが王道です。なのに苦しい状況下でさらに税金を取れば、さらに生活困窮者は増えていきますし、消費意欲は下がります。これが悪化すると、生活保護者などが増え(既にすごい勢いで増えていますが)、結果的に財政をさらに圧迫することになります。

②体力のない企業を支援している

自民党という党は元々保守派であり、地方の保守勢力に支援され発展してきました。地方の保守勢力とは何か。専業農家と中小零細企業の経営者です。つまり先祖代々の土地で暮らし、先祖代々の生業を受け継いでいる人たちです。彼ら彼女らの支援と援助(献金)で、自民党は発展してきました。
そのため、自民党は自分たちのためにも、地方の現代のニーズにあっていない中小零細企業を守らないといけません。しかし、その結果、日本の経済が低迷したのも事実です。

③賃金を思い切って上げないでいる

これも②に関連しますが、本来であれば最低賃金を大きく引き上げる必要に迫られています。経済同友会の代表幹事である新浪氏は年頭所感で、今後3年間で最低時給を2,000円程度に引き上げる必要があると発言されました。
この2,000円という数字、現在の1,000円程度から大きく乖離しており、驚かれた方も多いと思いますが決して根拠がないわけではないと思います。
私が推測するに、現在の欧米の最低時給が円換算すると2,000円前後に収まります。そのため、日本も2,000円程度まで上がると購買力が上がり、世界の購入競争で欧米各国や中国と戦うことができるのです。
現在、失われた30年の間に、経済が日本より大きく発展した欧米各国や中国は日本よりも高い価格で物を買い、日本は買い負けするようになりました。日本の最低時給は欧米各国並みに引き上げ、また戦えるようにしないといけないという考えなのだろうと感じました。
しかし、現在の政府は2030年代半ばに最低時給1,500円を目指すと言っており、このままでは先進各国との差はさらに広がりかねません。(先月、岸田首相は達成時期を早めると発言していましたが詳細な時期等は明らかになっていません)

今後どうなるのか?

高度経済成長期やバブル期と大きく違う点は、年金暮らしの高齢者があまりにも多いということです。彼らはお金をあまり使いません。そのため資産を多く持っているとしても消費向上にはあまり寄与せず、経済の発展を促進することは期待できません。また、年金暮らしのため、インフレになっても収入がすぐに増えることはありません。そのため、空前の人手不足で、バブル期並みの賃金上昇を持っても、「国民の3割前後が、あまり消費もせず、収入も増えない人たち」であるため、経済が上向かないでいます。

1年以上前から、こういった経済の記事を書いてきました。そして、その中で今後を考察してきましたが、既に半年、1年の期間で想像を大きく超え始めてきています。
リクルートやシンクタンクの想定を超える速度で、人手不足、そこからのインフラ停滞・縮小が始まっています。一例としてバスの減便、教員不足などです。ここからの復活、活性化は至難の業になります。よく自動運転やITツールの活用を復活ののろしとして期待する人が多いですが、特効薬にはなりません。
自動運転をするにしても、それらのシステム開発、運用保守、新しい機材の開発や生産、オペレーターの確保、新しいリスクへの対応など、結局人手は必要だからです。

日本の慣習や文化を変えないといけないところまで来ているのだと思います。例えば、全体朝礼や社長からの訓示、社是の唱和などの廃止。無駄な出張の撤廃。意味のない会議の廃止。有能な若手の抜擢登用。年功序列の廃止。人材の流動化。こういった、以前から言われ続けていることを、それぞれの企業、経営者が、いよいよ真剣に向き合う必要が出てきていると思います。

例えば、北海道でヒグマ対策を辞退した猟友会の件が報道されました。全国の消防団員は減少し続けています。教員不足は歯止めが利かない状態です。民生委員も減少しており、保護司も不足しています。
これらの仕事はすべて奉仕の精神が根底にあり、少ない報酬やもしくは無報酬で対応を求められています。
また不思議なことにこの国は、危険な仕事や大変な仕事など、誰もやりたがらない仕事ほど、誰かの正義感や優しさに甘え、奉仕を求めてきました。結果として、今ではなり手が不足し、社会問題に発展しています。

必要な仕事にお金を出し、必要ではないことに予算は出さない。
必要な仕事を行い、必要ではないことはやめる。
有能な人に見合った対価を払う。

こういった当たり前のことをできるようになるか、なれないか。いま、その瀬戸際なのだと思います。5年後、10年後に、今よりはいい日本社会であることを願うばかりですが、果たしてどうなるか。
今後も記事をいろいろと書いていきたいと思います。

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