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ワインの色はそもそもどのように出て、なぜ好みが分かれるのか?

1. 冒頭

前回投稿のまとめ(自然派、ビオ&オーガニック、通常ワインの違いについて )

前回の記事では世の中に存在する主に3種類のワインの違いについて説明しました。
内容をざっくりいうと・・・
1. 通常及びビオ&オーガニックワイン(以下B&O)などの一般的に消費されているワインには実はぶどう畑と醸造時のジュースに化学物質がふんだんに投入され、多くの人的介入も存在する。
2. 自然派ワインにはそれら化学物質の投入や人的介入が皆無に等しく、要するに自然が与えたぶどうという恵を生産者がただワインというものに変換する手伝いをしているだけ。
・・・ということだった。気に入ったらスキお願いしまーす!!!


*僕のワインに関する投稿について

僕は自然派ワインのインポーターですが、投稿自体は一個人として行っています。
自然派の方の知識は2022年から生産者の元で2年間の現場研修をさせてもらっているのである程度ありますが、通常及びB&Oワインについては基礎レベルでしかありません。現場研修もしてなければ、積極的に勉強もしていません。
よって、本投稿に限らずこれら2種類のワインについて述べている事は自分の知識範囲内であること、ワイン初心者へ向けた基礎レベルの情報であることが前提となっています。

2. まず、そもそもなぜ白ワインは白くて、赤ワインは赤いの??

これ、意外と一般的に知らない人が多いので端的に説明します!・・・

  • 白ワイン:白ぶどうが収穫後そのままプレスされてジュースになる。
    --> これをダイレクトプレスという。

  • 赤ワイン:黒ぶどうが収穫後に数日間〜数ヶ月間「マセラシオン」という色を抽出する工程を経てプレスされ、ジュースになる。

    • では、赤ワイン用に作られる黒ぶどうをダイレクトプレスするとどうなるのか⁈
      答えは、"ほぼ"白ワインになっちまうんですね!えっ?w
      これはですね、一般的によく食べられている巨峰やピオーネなどと同じく、黒ぶどうは皮を剥けば中身の実は透明ぽいからなんです!赤ワインは色の「抽出」によって出来るワインなのです。(厳密にいうと白ワインもプレス中に皮の色がほんの少し抽出されるため、あの黄色とか緑がかった色になります。)

ほおほお。。じゃ、ロゼワインは?
これは黒ぶどうがダイレクトプレスまたはほんの少しのマセラシオンを経てプレスされジュースになる。たったこれだけのことで、ロゼ用のみのぶどうなどは特に存在しません。

マセラシオン約2週間後の黒ぶどう
(マセラシオン期間中にすでに粒内で発酵していて、これをプレス後またタンクに戻してジュースが発酵してワインになります。)
白ワインはこのようにプレス機に直接入れてプレス
(量を入れる為にプレス前に足で少し踏みスペースを作ることもあります)

近年話題のオレンジワイン

ん、ちょい待て、なんだそれ。そんなワイン聞いたことないゾ‼︎
これはただ、白ぶどうをマセラシオンしただけのワインなんですねぇ〜。
実はこんなに単純なこと。
でも、オレンジワインは通常及びB&Oワインではなぜかあまり作られていません。
なんでだろう?マセラシオンする時間と場所などのコストがかかるからかな?

3. どうして色の好みが分かれるのだろう?

白も赤も、ましてやロゼもオレンジも、ただの色なのにそれで好みが分かれてしまう事に疑問を感じる。

でもこれは、消費者が原因ではないと思ってます。つまり、色の好みがある皆さんを否定しているのではないんです。
この原因は通常及びB&Oワインの醸造にあると思います。
因みに前回投稿で説明してあるが、もうここでは面倒なのでこの通常及びB&Oワインは皆さんが一般的に認知している「ワイン」と呼びます。
ワインは基本的には醸造時、何百種類も存在する化学物質の中から必要とされるものがジュースに投入される。
つまりどういうことか?
こういうものを入れれば入れるほど、原料のぶどう本来の味わいが落ち、人工的に味が構成されていく。典型的には人工酵母の添加、補糖、補酸、大量(自然派の観点から見ると、です)の亜硫酸塩の添加など。
ワインと自然派ワインの畑仕事の違いはひとまず置いておいて、まずここで僕が皆さんに問いたいのは、これってちょっと残念じゃない??ということ。

めっちゃくちゃザックリとワイン醸造におけるこれら化学物質の登場について一応話すと・・・
ワインは20世紀以降、これら化学物質が登場したおかげで「楽に」作れるようになった。これは以前までは人がやっていた沢山の畑仕事を機械で行えるようになった農業の進化と同じようなイメージ。
きっと、いつものアレですよ。大体みんなお金を求めちゃったんでしょう。。こう解釈して良いと思う。資本主義社会では当たり前なのだから、しゃーないと思う。
ワインはこうして「楽に、もっと早く多く安く」と作られ普及するばかり、人間は本来の葡萄酒の味を忘れてしまったと予想できる。
(まあ、この現象のおかげでワインが量産され、日本でもワインが容易に楽しまれるものになったのだろうから、それはそれで感謝しないといけない。でもそれはワインに限らないことだろう。)
そう、言い換えると、一般的にワインは「自然の味」から「作られた味」へ変化し、人はそれに慣れてしまったのだ。
だから、ワインにしか慣れていない人が自然派ワインを飲むと、「何これ塩っぱくてグレープフルーツみたいな味!」とか「何これめっちゃ野菜みたいな味!」とか、もう何これ状態で最初は戸惑う人が多い。でも、この表現の豊かさこそが本来のぶどうジュースが発酵した味なのだ。それが面白いのだ。好きか嫌いかは別として。(まあ個人的には、最初は戸惑っても色々試してれば100%と言って良いほど必ず好きなものは見つかると思ってる。)
因みに僕は今年住んでいるジュラ地方で、もちろん自然派で、10年間樽で全くノータッチで熟成されているワインを去年試飲したが、そのワインの香りと味両方の表現力は物凄いもので、自分がまるで森に居るようにさえ感じたことがある。
あの感覚は、不思議で、いわゆるマインドトリップだった。
神の雫という漫画をご存知の方もいると思いますが、漫画の中で度々見る登場人物がワインを飲むと妄想してマインドトリップするシーンのあれ。あれに近いような感覚だ。
あなたはワインを飲んで、このようなことを感じたことはあるでしょうか?
恐らくないと思います。これはなぜなら、ただの人間の力なんかよりも遥かに強い自然の力でしか表現できないものだからだと僕は思っています。

さて、話しを戻すと、要するにワインにはぶどう本来の味を変えるものが沢山入っているということ。
まず、畑仕事で殺虫剤や除草剤など、いわゆる剤系を使っていて、農薬散布や土を効率的に耕す作業のために数トンの機械を何度も出入れさせている時点で、土壌内の環境は本来の姿からは程遠く、ぶどうの野生酵母のポピュレーション(人口?量?日本語下手でわからないw)もそうしないのと比べると大幅に減るので、醸造では最初から酵母添加をせざるを得ないわけです。
そして醸造中にはぶどう由来の澱や酵母、菌などの活動を抑制、又は排除するために瓶詰めまでに一度もしくは数回液体が濾過される。
しまいには、それらの要素の活動を更に制御するために、亜硫酸塩というものがどのタイミングにでも投入される。
よって、ワインはほぼ自由自在に、生産者の意図する味へとなり完成する。
要するに、ぶどう本来の味の表現がないため、味がどうしても似通っていき、結果好みの判断材料がたった一つの「色」にまで限定されてしまう。
少なくとも、一般的に消費されているレベルのワインはこのケースが多い。
個人的な見解だが、色で好みが分かれてしまう一番の原因はこれだと思う。
これ、ちょっと残念だと思いませんか?😅
とんでもなく表現豊かな自然派ワインを愛する僕からすると、自然派ではすべての色において大っ嫌いなものもあれば、大っ好きなものもある。色なんて関係ない。
だがしかし、ワインは何を飲んでもどうしても味が大体同じように感じてしまう。
(もちろん、その中でも素晴らしいもの/一般的には消費されていないハイレベルなものは違う。)
違いが出るとしたら、生産地と品種、頑張っても年くらいだが、むしろこれらもだいぶ怪しい。考える気が起きないほど、味に特徴がない。
土壌の種類、畑の向き、標高、熟成された容器(例えば樽は樽でもサイズと使用年するによって樽香の強さは全く異なる)、セラーの環境、ましてや生産者の特徴までは自然を相手にしている自然派ワインほどは絶対の絶対に出ない。
一般的には飲まれているワインはそういうものなのだ。

3. まとめ

結局、一言でいうと、まあいいから黙って自然派ワインを一回飲んでみてよ!になるw
それは置いといて、真面目に続けると、今回のまとめは以下になる。
・ワインの色はマセラシオンという皮由来の色の抽出の有無で決まる。
・色の好みが発生する原因は、個人的には醸造が人工的だからである。

最後にちょっと余談だが、僕はスーパーワイン通の知り合いでリスペクトしているお一方に、一度こう言われたことがある。
「世の中で最も自然派なワインはDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)だと思うよ」と。
僕はDRCを最後に飲んだのはこの方と一緒で、その時はまだ自然派ワインの仕事をしていなかったため味でそれがどうなのかはわからなかったし、ましてや実際にDRCの仕事を見ていないからなんとも言えない。
DRCをご存知ない方のために、これはブルゴーニュの世界で最も有名なワイナリーの一つ。ワインはとっっっっっっても高価だ。
ワインファンの皆が夢見るロマネ・コンティが自然派だとすると、「ワイン」の頂点は自然派なのでは?
という嬉しい疑問が湧く。ニヤニヤ。

それでは次回は自然派ワインとワインの畑仕事の違いについて書きたいと思います。


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