見出し画像

スカッシュ元プロ&日本チャンピオンが語る①/日本人史上最高世界ランク18位の渡邉聡美選手の大躍進について

2度目の投稿でいきなりですがスカッシュネタでいきます。
(聡美のことは昔から知っている仲なので普通に名前で書きます)
彼女が現在起こしている波に便乗して、書かせてもらいまーす。

聡美は先週マンチェスターで開催されたシルバーイベントで、世界10位SJ Perryと15位Tesni Evansを破り自身初のベスト4入りを果たした。準決勝では残念ながらここ数年勢いのある世界9位のNele Gilis選手に敗退したが、慣れていない舞台、連戦の疲れなど色んなことを考慮するととても良い試合だった。
まずは、本当にマジでおめでとう!!
いやー素晴らしいぃぃぃ!!くぅ〜〜〜!!としか言いようがない圧巻のパフォーマンス。日本のファンは時差にも関わらず夜中にライブで応援。日本スカッシュ界にとっては物凄く楽しい数日間だった。
フランス在住の僕は時差ほぼなしで、一人でワインでほろ酔いながらTV画面にしがみつき声を出しながらノリノリで応援した。それはそれで楽しかった。笑

聡美は去年も香港の大会で当時世界7位だったRowan Elarabyを破り世界のプロスカッシュ界(以下PSA)の注目を集めた。今ではPSA界ではGiant Killer(大物キラー)と呼ばれているほど。
でも、この著しい成長ぶりは一体なんなのか?何が彼女をこんなにも短期間で強くならせたのだろうか?
ちょうど一年前に生で見た、世界20位台にやっとの思いで勝った時の彼女とは見違えるほどのプレーを今大会では見せた。
個人的な見解だが、この成長はテクニックでもフィジカルよりも、「人間的」な成長から来てるものだと観戦中すぐに思った。
僕は去年9月にも彼女の試合をフランスで生で観る機会があったのだが、少なくとも今大会でのプレーはたった8ヶ月前と比べてもその人間的な成長が明らかに出ているような印象を受けた。当時と比べると、ラリー間の落ち着き具合も含め、プレーの質がまるで別人のように圧倒的に良くなっている。選手としての全ての要素がレベルアップしている。素晴らしいぃぃぃ!!(2回目w)
多分だが、正確には覚えてないが約1年半前?に何もかも便利な日本を離れ、イギリスの大学へ留学し、現地で勉強や食事、体調、スケジュール管理なり、プレー以外のことで色々と苦労しているんだろう。自分もアメリカの大学に行ったりPSAを回っていたからよく分かる。(と勝手に思っている。)
要するに、本人の考える能力が飛躍的に上がったのでは、という事。

反対意見がある方は遠慮無く言って欲しいが、なぜ自分がそう思うかだけちょっと書きたい。
今大会で僕にとって一番目立ったところは、先ほどの「ラリー間の落ち着き」もそうなんだが、メインは「ボールを打つ際の微調整に対する注意の払い方」だった。
これは全ラケットスポーツ共通して一番大切な要素の一つ。元からこの面でのセンスがある人はこれを考えずにできるが、実際にはない人が9割以上だ。
(自分で言うのもアレだが、自分はこのセンスが抜群だったから、運動神経も体格も恵まれなかった中なんとかやってこれた。)
微調整というのは体重移動や面の合わせ方、グリップの持ち換え方、瞬時のショットセレクション、など色々とある。聡美は、去年と比べるとこの要素のレベルが段違いで上がっていた。
今までだったらミスっていたショットを何本も決めていて、リアルに驚かされた。
彼女は元から運動神経と体格にとても恵まれているから、自分なんかよりは体重移動や体のポジショニングが断然うまいけど、他の要素は今までは正直目立つ良さはあまりなかった。
で、今回感じたこの大きなステップアップは、異国で一人での学生生活とPSA活動などコート外で今までよりも遥かに考える機会がある日々を過ごしている事から身についた習慣による成長だと思っている。
幼い頃から去年までは、ラリー間の表情にはいつも焦りや興奮などその場面での感情がモロに出ていたが、今大会では自分的には聡美のコート内での表情から初めて冷静さが伝わってきた。頭の中で状況を整理しているような感じ。
本当は、この冷静さは遅くても10代後半くらいには欲しいものだが、聡美は元の能力が高すぎてこれがあまりなくてもPSAで容易に30位くらいまでの実力を手に入れられた。
料理と同じように、素材から全く違ったのだ。で今は、この素材の良さをうまく活かせるシェフが就いたような感じ。でも、まだまだこのシェフはスタート地点に立ったばかりの新米シェフ。
世界トップ5、特にSherbiniは頭2つ抜けてるが、彼らは最高の素材を一流シェフが活かし素晴らしいものができている。

さて、最後にちょっと厳しいことを言ってしまうかもしれないが、彼女がここ最近破ったトップ選手の3人は去年から勢いがグッと落ちている。ElarabyとPerryは特にそうだ。
聡美が本格的にTOP10に食い込むとしたら、下り坂ではなく上り坂にいるNele Gilis, Olivia Fletcher, Georgina Kennedyなどに一度勝つことが必要でしょう。男女問わず、11〜15位でもTOP8にほとんど勝ったことがない選手は珍しくない。この3人はいずれも厚い壁だが、この成長を手にしたニュー聡美なら、普段の練習効率や試合ごとの吸収能力など総合的に今までよりも効率的に強くなれると思うので、勝利は遠いようですぐ近くにあるように見える。(今年?今年? :D )
まだまだ明らかに改善できるところがたくさんある中、既に世界ランク18位なんて、贅沢な悩み〜ポテンシャルしかないやん。このままドンドン強くなってほしい!頑張れ〜!
勝手に自分一人で、今回の聡美のパフォーマンスは彼女の本物の幕開けを意味するものだと、考えながらダラダラと長文を書いた夜でした。
こんなに熱弁しといて、的外れな見解だったらそれはそれでウケる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?