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ガザの未来像をめぐり、深まる米国とイスラエルの溝

U.S. and Israel Split Over Gaza Goals, Muddying War’s Endgame というWSJの記事から。

あくまでもハマスの殲滅を目標として掲げるイスラエルと、戦争自体も人道的観点を考慮して進めて欲しいと考えるアメリカでは、考え方に大きな開きがあります。

当初はイスラエルがやることを100%支持していたアメリカのスタンスがなぜ変化したのでしょうか。

記事の内容も含めて以下に、その理由をまとめます。


民主党の党内の議員から猛烈な反発を受ける

イスラエルの首相であるネタニヤフに支持を表明したあとに、民主党の党内からイスラエルの行為(=民間人を大量に殺戮している)に対する強い反発があり、後にバイデン大統領は発言のトーンを修正することになります。

バイデン大統領の支持率急落

バイデン大統領は、言い間違いが多すぎるために会見の数が激減していたり、いざ外に出ると飛行機に乗るタラップで転んだり、演説後も床で転び尻もちをついていたりします。そのため、認知能力や体力に対する懸念が増しており、大統領選における支持率が伸び悩んでいます。

一方で、トランプ元大統領は検察に起訴されるたびに、支持率を伸ばしています。

そんな中、パレスチナ人に対する空爆で民間人犠牲者を多数出しているイスラエルを全面的に支援しているバイデン大統領に対する反発から、たった3週間のうちに、民主党支持者における大統領への支持率が11%も落ちてしまいました

このままイスラエルの戦争を支持し続けると、来年の大統領選における再選がさらに危うくなります。

米国内のユダヤ人すらイスラエルによる戦争に反対

米国内では 、"Not in our name" という文字がプリントされたシャツを着た大勢のユダヤ系が "Ceasefire Now" という横断幕をかかげ、イスラエルによる戦争に抗議しています。

"Not in our name" というのは「我々の名前(=ユダヤ人)を使って戦争をするな」という意味です。もちろん、イスラエルによる戦争を指示するユダヤ系米国人も多数いると思いますが(その中の一部は、大学に言論統制をするように圧力をかけています)、そうではない人々も大勢いるということです。

ユダヤ系アメリカ人は民主党を支える大きな票田であり、何よりも多額の寄付を行う大スポンサーです。

その人達(の一部とは言え)がまさかイスラエルの戦争に反対するとは、バイデン大統領にとっては青天の霹靂(へきれき)です。

反イスラエルに傾く世界の世論

当初はハマスとイスラエルの両者に冷静な対応を求めていたトルコは、イスラエルの度重なる空爆のより態度を一変させ、「イスラエルこそ戦争犯罪国家」だと糾弾しました。

ヨルダンのラニア王妃は「なぜイスラエル側に偏るのか。欧米のメディアや政治家は、すぐイスラエルに都合のいい物語を採用する。(人が死亡した場合)パレスチナ人は『死ぬ』と表現され、イスラエル人は『殺される』と表現される」と述べ、欧米のダブルスタンダードを批判しています。

同王妃は「銃を突きつけて人を殺すのは間違っていると言っておきながら、爆撃によって人を殺すのは問題ないのか?」という点も指摘もしています

フランスのマクロン大統領は開戦直後とは全くトーンが異なり、人道的観点からの停戦を求めています。

そもそもフランスにおけるイスラム教系の人口は、500万人を超えるという推計もあります。日本の人口比で考えると1,000万人を軽く超える人々がイスラム教徒ということになります。ドイツにも500万人以上のイスラム教徒がいます。

これだけの数のイスラム教の国民を抱えた状態で、このままイスラエルを支持し続けると、国内の怒りが制御不能になる危険性があります。そのため、スタンスを変えたのだと思います。

【龍成メモ】

当初はイスラエルを全面的に支持していたWall Street Journalですが、ここ最近は必ずしも肯定的でない記事も増えてきました。WSJの戦争プロパガンダも少し和らぐのかもしれません。

ウクライナについても、欧米がゼレンスキー大統領に対して停戦を促し始めたようです。そもそも無限に兵力を投入できるように見えるロシアに比べて、ウクライナは兵士の数が足らなくなる懸念があります。

欧米の国民のウクライナを支援する気持ちは、数字上も離れてきているといます。Gallupの調査では「アメリカはウクライナを支援しすぎ」と考える国民が41%にも上り、3ヶ月前の24%と比較して急増しています。

長引く戦争に加えて、欧米の国民の気持ちがイスラエル・パレスチナ紛争に奪われているという要素もありそうです。

#イスラエル #パレスチナ #ガザ #ウクライナ

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