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コストコの「トレジャーハントShopping」戦略の秘密


Behind Costco's Treasure-Hunt Shopping Strategy | The Economics Of | WSJ

コストコの戦略の裏側に迫る(私の中での)WSJ大人気シリーズ、The Economics Of。ちなみに英語での発音は「スコ」です。最初のコを強く発音します。Not コストコ~。

一般的なお店とは異なり、通路の案内板や店内マップはありません。あるのは通路番号だけです。さらに、コストコは常に商品の一部を移動させ、新しい商品を入れています。

なぜ、コストコの店舗はこのような設計になっているのでしょうか。
そして、この設計がなぜ、コストコを今日のような巨大小売企業に成長させることができたのでしょうか?
※以下の図は株価推移。92年には8~10ドルだった株価が2022年の最高値では600ドル近くまで上昇している(2022年1月21日現在は481.61ドル)

コストコは「トレジャーハント(=宝探し)」のような購買心理を利用し、顧客を引きつけてます。基本的には「割引率が高くて、驚きの価格」「本当に面白い」「いつまでもそこにあるわけではない」という商品を、棚に並べてるということです。

コストコの宝探し戦略の背景にあるコアには、お客様に探検を促し、常に新しい面白い商品があることを保証し、それがゆえにお客様がより長く買い物をし、より多くの商品を購入することにつながる、という考えがあります。

現在、コストコは803の店舗と27万5千人の従業員を誇る世界最大の小売業者の一つです。

コストコは「倉庫型クラブ(Warehouse club)」という業態の一つでした。それは、店に行って商品を1つ買う代わりに、店に来て会員になり、(例えば)中小企業であれば卸売価格で、基本的に低価格で提供するというものでした。
※倉庫型クラブ(Warehouse club)の形態はコストコが創業された1983年より前にSol PriceやA&Pによって実践されていたようです

ほとんどの会員は、ベーシックプランで年会費60ドルを支払っています。年会費120ドルを払うと、より特典のあるエグゼクティブ会員にアップグレードすることができます。会費はコストコの儲けのほとんどを占めているのです。
※2021年のAnnual Reportによると、年間の総利益$5 billion(5,683億円)に対して、会費からの収入が$3.9 billion(4,433億円)

『コストコの経営陣の最大の目標は、会員数を増やすために、よりエキサイティングな商品をより安く提供できないか、この精神にあると思います。会員費で儲け、できるだけ安く物を売るというモデルです。

利益を上げるために価格を上げるということは、社内規定(Internal Code)に反します。』
※小売価格を上げて利益を増やすことがInternal Codeに反するとういのは、わおーですね。

(安く提供するために)商品を棚に並べる時間を節約することも含まれます。天井まで積み上げられたパレットを見ることができるのは、そのパレットを解体し、一つ一つの商品を棚に並べるための時間(=労働力)が費やされてない、その分の時間(=コスト)が節約されているということです。

コストコによると、小売店でよく見られる25~50%の利益上乗せ(mark up)に比べ、コストコの商品は平均して11%しか利益を上乗せしていません。
※例えばコストコが1ポンド100ドルの和牛を卸売りから仕入れた場合、わずか111ドルで会員に販売されるということ。

『コストコには長く勤めている熟練の仕入れスタッフがいます。コストコのお客さんが何を欲しがっているのか、本当によく分かっているんです。そして、そのような商品を良い価格で購入するのが上手なのです。』
※写真は「プレミアプロテインバニラ味」をゲットしてご満悦な会員

『そうすると、そういうものを見つけるのに、ある種の熱狂が生まれるんです。』
※「カークランドブランドの電子レンジ用ポップコーンを買ってきました」と嬉しそうな会員様

ほとんどの小売業者は、買い物客はより多くの選択肢を望んでいると考えてますが、コストコでは限られた数の商品を売っています。

『ウォルマートとは異なる方法で、商品にそのスペースを与えているということです。つまり、その商品が(すぐに)売れなければ、その店から去ってしまうという、(商品間の競争は)非常に熾烈です。棚に並べる商品であれば、(商品自身が)自分の居場所を獲得しなければならないのです。』

コストコは通常のスーパーマーケットの1/10以下しか商品点数がありません。

しかし、コストコの品揃えは少なくても、その品揃えは評判が良いのです。
Kirklandはコストコのプライベートブランドです。

『ある価格で何かを提供したいとき、メーカーのサプライヤーにはできないことがあります。だから、自分たちで作るんです。』

1995年の発売以来、この自社ブランドはその品質と価格の安さから、日用品として高い評価を得ています。

コストコの年間売上高1,660億ドルのうち、カークランド製品は4分の1を占めています。
最新2021年のAnnual Reportでは年間売上は1,920億ドルに達し、そのうちKirklandブランドの売上は590億ドル、総売上の30%を超えるレベルまで成長しています。

『その顧客ロイヤルティのおかげで、コストコはパンデミックの間も好調を維持できたのです。
コストコは確かにパンデミックを生き延びただけでなく、パンデミックの中で本当に繁栄したモデルなのです。』

ネットショッピングの人気が高まっているにもかかわらず、コストコは会員を店舗に誘導する戦略に傾倒しています。

『何年も前から、人々はコストコに疑問を抱いていました。
アマゾンにやられるぞ。オンラインでのプレゼンスを高めるべきだと。でも、そうはなっていません。

コストコははっきりと、お客さんに店に来てもらい、買い物をしてもらいたいと言っています。

衝動買いをさせたいのです。店に来て、商品を見て、さらに買ってほしいのです。その方がうまくいくし、値段も安いんです。』

【龍成メモ】

今回はAnnual Reportや英語のブログも見ながら動画を観たので、さらに面白かったです。「スコ」という発音の仕方が一番ウケましたが、原価に対してたった11%しか利益を乗せず、総利益のほとんどが会費から来るというのも驚きでした。

Annual Reportによると2021年末現在で全世界に828店舗あり、そのほとんど(87%)が北米(+メキシコ)にあります。

アメリカ大陸以外では、なんと日本が30店舗と最多で韓国・台湾・オーストラリアを含めて考えると、海外ではヨーロッパよりもアジア・オセアニアに力を入れてるようです。

本文中でも補足説明として書きましたが、リアル店舗中心というコロナ禍においては大逆風にも関わらず、売上が18%増の 1,920 億ドル(21.9兆円)、純利益はなんと25%増の50億ドル(5,683億円)という好結果でした。

Walmart、Target、Kroger、そしてAmazonをアメリカ市場における競合として捉えてるようです。

またコストコ同様のビジネスモデル(倉庫型クラブ warehouse club)の競合としてはWalmartのSam’s ClubBJ's Wholesale Clubの名前が挙げられています。

ちょっと面白いところで言うと、636箇所のガソリンスタンドを運営していて、ガソリン事業は全売上高の約9%を占めているそうです。
また、地味にEコマースの売上高も2021年の全売上高の約7%もあります。

トラベル事業もあり、バケーションパッケージ、ホテル、クルーズ等の旅行商品をコストコ会員向けに提供しているそうです(米国、カナダ、英国で展開)。

2021年末現在、全世界トータルの有料会員は6,170万人。エグゼクティブ会員は2,560万人、米国及びカナダにおける有料会員(関連会社を除く)の55%を占めるそうです。17%の有料会員は海外メンバーです。

#コストコ #ウォルマート #アマゾン #経営戦略

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