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日本酒の日じゃなくても考えたい仙禽の話 仙禽ひやおろし・アッサンブラージュ山田錦・雄町・亀の尾 (仙禽特別編)

どうも、仙禽ファンのりょーさけです。
ふふふ、ミーハーだと言うがいい。ちょっと記事書いただけでファンづらかよ!って突っ込んでもらっても構わない。

…一応言っとくと、言い訳をしておくと仙禽は大学生の頃から好きでした。
仙台の酒屋さんが推してる銘柄で、「変わってるけどいいですヨ~」って店主さんが言ってくれて。

単純な僕は何回も仙禽を買って、自分の家や友人の家で仙禽を飲んでいた。

あの頃は仙禽だったら何でも買ってたな。
若者なんで今で言うモダン中心に。ちょっと盛り上がる日にはその当時としては高級な18%精米だかも買った。(今は山形の楯野川さんが精米歩合1%の酒をつくってしまったからなあ。)

マリアージュのマの字も知らなかったけど、シチューとかハンバーグとかと合わせて無邪気に喜んでいた気がする。友人たちのところに持っていっても「すげえ!」ってなった。素人目にもすげー酸味だったけど。

そんな事もあったな、って今日の朝出勤しながら思った。
こんなに大切なものだけれど、ちょっと忘れていたかなって少し悲しくなった。

さあ、そんな思い出を改め確かめ味わうがごとく買ってきました。仙禽ひやおろしアッサンブラージュ(平たく言うとブレンド)、山田錦・雄町・亀の尾です。

通称赤とんぼです。デザインが素敵なことこの上ないね。

仙禽がつくった3つのお酒をブレンド&熟成させたものです。

ちょっと補足すると、仙禽レギュラー商品には現在「クラシックシリーズ」と「モダン」シリーズがあります。

こっちの字が読みやすくてかっちりがクラシック。

こっちの字が読みにくくてかっこいいのがモダン。

デザインだけでなく味にも特徴があり、クラシックは落ち着いていて料理と寄り添うような味となってます。モダンはお酒単体でも楽しめるようなややインパクトのある感じ。

ということでこの赤とんぼはデザインから分かる通り、モダン仙禽のブレンド&熟成です。

だからてっきりややインパクト系かと思ったのですが、このお酒…ナイス熟成感です!落ち着いている!入りの香りは熟した杏と梅が主体、ほんのりバナナの香りもするかな。ちょっぴりセメダイン香(マニキュアの除光液のような香りです。少量だと香りに艶が出ます。)があるか?

3つのコメが混じっているから正確な分析はとても難しいですね。1つのコメでもその特徴を完璧にとらえて言語化するのはとても難しいのに。

あえてこれまで飲んできた経験から文字にするなら…全体の印象としてふくよかなのは山田錦の影響でしょうか。このお米は通称「酒米の王様」と呼ばれています。たとえ造り手がまだ未熟であったとしてもとても良いお酒ができるという評判のお米なのです。

で、ふくよかでおっとりに終わらず、横方向に広がる豊かな酸までも感じるのは雄町が中にいるからかな?雄町は現在唯一と言っていい野生の酒米です。(野生=交配種ではない、ということです。)


大粒でコメが溶けやすいが故にコメの味が酒に乗りやすかったり、そうかと思えばある時はスリムな味に仕上がったりと不思議なお米なのです。ただ、味が乗っていてもスリムでも酸が特徴的であるのは変わらない気がします。どんな形になろうと野生の酸味(ただ酸っぱいのではない複雑さがある酸味、位に理解して下さい)を持ち続けるお米、それが雄町です。
その影響か味が広がる…。

で、ふくよかで酸があるだけで終わらない。この酒は。飲み込んだ後にちょっと複雑味がある。これは亀の尾の…影響なのかな…笑

まあ流れ的にこじつけになってしまいますが、亀の尾というお米でつくった酒は特徴がある味をしていることが多いのです。決して派手な味ではありません。個人的には飲み込む瞬間から後味に特徴があると思っています。ただスッキリ流れない。苦味や酸味の足跡を残す…そういうふうに捉えています。

(といっても造る人の方針や造り方、つかう酵母の種類などで話は大きく変わってきますので、「この酒米は○○な味がする!」という言葉は話半分に聞いていたほうがいいかと思います。日本酒は相当特殊な作り方をしない限り素材の味をそのまま表現するというのが難しい飲料なのです。)

と、若干力技も入りましたが、仙禽ひやおろし三種の米のアッサンブラージュはふくよかで落ち着いていて、かつ酸味の広がりもあり後味は複雑さがあるお酒です。とても奥行きがある。

ただ暗いとか涼しいとかじゃなく、それ以上の膨らみを持ち合わせた秋の夜長にぴったりな味わい深いお酒と言えるでしょう…。

で。

ここまでなら僕は今日も仙禽のことは書きませんでした。
書かなかったんですが…。

こんな動画があることを知ってしまったので、赤とんぼ買ってきてレビューして記事まで書いたのですよ…。

【熱い共演】「株式会社せんきん」×「青二才」×「日本酒スタンド酛」の日本酒ミーティング!!https://jp.sake-times.com/knowledge/sakagura/sake_g_doumari_2

これです。今はもう超有名日本酒メディアとなったサケタイムズさんのまだ超有名になる前の対談動画。

日本酒バル青二才の小椋道太さんと日本酒スタンド酛の千葉麻里絵さん(現・恵比寿のGEM by moto店主)が「どうまり」というタッグを組んで仙禽の薄井一樹さんと対談しています。

あのね、これ内容云々とかよりまず雰囲気を味わって!!!!

言葉が聞き取れなくてもいいから、このトップランナーたちが朗らかに語ってる様を楽しんで。ぜひそばに日本酒を持ってきて飲んで。日本酒なかったら他の酒でもいい。

この対談、多分映像になってない前部分があります。多分。映像になってるのはちょっとお酒が入ってトークが温まってからです。予想だけど。
お三方ともとてもいい雰囲気です。みんな超プロ中のプロなのに、平易な言葉で酒を語ってる。

これはまさに超優良ののぞき見盗み聞きと言っていい!(怒られる)

自社のこだわりを語る薄井さん、素直な疑問を投げかけるお二方。
どちらもみていて心地よい。

以下聞き取れた限りで言葉を紹介して短くコメントします。一応引用文だという体裁は取りますが、ちょっと簡略化してある部分もあります。
ちょっと間違っている可能性がありますので、詳細はぜひ見て聞いて下さい。

薄井「フェラーリはF1にでます。自社の技術を結集して望むわけです。そしてフェラーリはそこで培ったものを自社の市販車にフィードバックする。うちが7%精米のお酒を造るのもそれと似ている。そこで培った技術を、市販のレギュラー酒をつくるために活かします。」

そりゃあそんな意気込みでやってれば市販酒が素晴らしくなるわけですよ…。7%って…普段見てるお米の粒が93%削れた様を想像して下さい…米を洗うのもむすのも大変です。

薄井「その蔵の一番の個性はテロワール。その良さを消してしまうような技術の研鑽はしない。テロワールを大切にしたい」

↑かなり簡略化してます。薄井さんの言葉を聞きたいひとは動画を見て!お願いします。

ちょっと補足するとテロワールとは、お酒の味に反映されるであろうその地域の水や土の特徴です。薄井さんは仙禽がある場所の水と土壌の特徴がそのまま酒の味に現れるような造りがしたいと言っています。

(この「テロワール」というのは本来ワインの世界の言葉です。それゆえ「日本酒にはそれは当てはまらないよ」とおっしゃる方もいます。理由も一応あります。日本酒は素材であるお米に麹菌を繁殖させて酒造りに用います。その麹菌の種類による酒質への影響がとても大きい…つまり米の特徴がダイレクトで酒の味に反映されにくいのです。故に日本酒には「テロワール」は馴染まないという人もいます)

そんな中で「それが一番大切です」と言い切れる心意気、そしてそれをもので語れる技術力。それがとても素晴らしいです。

ってこの文章を考えながら先程の動画を眺めているんですが、本当に雰囲気がいい。形式張ってないから自分がその場に臨席しているような勘違いをすることもできる。

BGMがちょっと大きくて言葉が聞き取りづらいのは事実なんだけど、そこがまた「バーで居合わせてたまたま盗み聞きした感」があっていい…笑

僕は内容もそうですが、この雰囲気をぜひ味わってほしい。
ということでとにかく動画を見て下さい。
後は動画が語る。サケタイムズ様ありがとうございます。
これはとても良い対談です。

さっきの思い出ばなしの続きですが。
僕には忘れられない仙禽があります。

7年前のあの未曾有の大災害の中、僕は仙台にいました。出先で被災し、途中一回だけ自分のアパートに戻ってきた。
仙台の中心部なのにやけに星がきらめく夜だった。
最低限の物資を取り出した。
冷蔵庫が止まっていた。
そんな状況でも冷蔵庫中にあった日本酒が気になった。
あまりに突飛な出来事に遭遇すると、人間は存外冷静になることもあるようです。
仙禽だった。今のモダンのラベルだった。
まだ冷えていた。飲んだ。

美味しかった。

(実は隣りにあった鶴齢も飲んだけど笑)

美味しかった。仙禽は。
あの時は「これが最後の酒になるかも」と思った。
それを友人と無言で飲み干して、避難先の別の友人宅に向かった。
とても不安な夜だった。
みんな寝た。僕も寝た。後はドタバタだった。

それから幾歳か経って今。
あのお酒は最後の酒にはならなかった。良かった。心から良かった。
僕は今日本酒を楽しめることが、とても嬉しいです。

そんなエピソードの中にもあるから、なおのこと特別なお酒なのかもしれません。

はい。僕は仙禽が好きです。

様々な思いを巡らせてくれる仙禽に乾杯。
こりゃあ、いい酒だ。

みんなも、飲もう。飲んでよ。

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。