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「風と書簡」/ 詩


水の流れは
連綿と続く 巡りの旅で
湖水がやがて入れ替わるように
淡水が海水と混じり合うように
自由と 柔軟性をもって
営まれている


様々なものを乗せたこの世界は
目に見えるかたち
また 見えないかたちで変わり続け
季節の歯車がカタリと音をたてる
そのような節目や 
汽水域のように
異なるものの出逢いに 錬金術を起こす地点を
惜しげもなく点在させているのだ



水の旅程や
昨日と今日の狭間に
継ぎ目があれば不自然だろう
細胞の入れ替わりや
夜更けから明け方への流れが
たゆたいながら移ろうように
なめらかに漸次的 ぜんじてきなのだから




風を浴びる
古びたものが流れ去り
余白が生まれて少し身軽になる


水に波をつくる風も また旅の玄人で
縦横無尽に世界を翔け
小さな旅人たちの書簡に
潮騒という消印を押し続けている





巻貝の記憶を
ナミマガシワの夢とともに同封し
蝋封には海鳥の足跡
ハマゴウの面影を切手にして
そんな手紙を したためたら
海原をわたる風に託す




行き給え
どこまでも
やがて熱をもち 
水飴のようにトロリとするまで



芳醇さも やがて飽和し
光の速度でいつしか星と成ろう
精錬し 純度を高めながら
陽の光に煌めいて
この世界を周遊するのだ


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アンソロジー詩集
「あめつち vol.1(theme/変わる)」
収録

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꙳★*゚.。 ☆。.:*・゜

過去作品より。

去年の晩秋に締切だった、三つの詩のうちの一つです🍂🍁


...海、最近全然ウロウロしてないなぁ🌊

( ˙꒳​˙  ).。oO