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なぜサッカー指導者が組織論やコンピテンシーについての記事を書くのか

皆さん、はじめまして!山口遼と申します。
この記事をご覧になっているのは、もともと私のことをご存知の方が多いかもしれませんが、一応簡単な自己紹介をしておきます。

現在私はサッカーの指導者をしております。
鹿島アントラーズのジュニアユース→ユースときて、一度サッカーを辞めて東京大学に進学、東大サッカー部で選手に復帰するもその後指導者に転身し実質的な監督を3年務めた、という少し特殊なキャリアを今日まで歩いてきました。

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今年はフリーで活動しておりますが、これだけ時間的に自由の利くタイミングはなかなかないので、様々な活動に挑戦する年にしたいと考えています(今年ももう半分過ぎたわけですが…)。

さて、この度noteを通して発信をしていきたいと思い立ったわけですが、テーマはあえてサッカー以外の話題にしようと思っています。具体的には

・ ティール組織や心理的安全性などの組織論
・ システム思考やデザイン思考、論理的思考力などのコンピテンシー
・ アクティブラーニングやワークショップ、PBLなどの学習環境デザイン

といったコンテンツを考えています。サッカーの指導者である私がわざわざこのようなテーマでnoteを書こうと思った理由には、昨年までサッカーの指導者として現場に立つなかで強く感じていた2つの想いが関係しています。

質の高い指導者を増やしたい

1つには「もっともっと質の高い指導者を増やしたい」という願いがあります。サッカーは元来シンプルなルールにもかかわらず複雑な現象を孕んだスポーツであり、それを指導するというのはとてもむずかしい行為です。
ピッチ内で直接状況を感じとることも、スタンドから俯瞰で試合を観ることも出来ず、最も色々なことを感じとりにくいピッチサイドから試合や練習を分析し、改善の指示を出すというのは容易なことではありません。

一方で、このような難しさを含んだスポーツであるサッカーにおいても、明らかに質の高い指導者は存在します。ペップ・グアルディオラはその中でも「勝率」(及び種々のスタッツが驚異的なことも言うまでもありません)という点において群を抜いています。
彼の残している記録は、監督としてのここまでの13年のキャリアでなんと30個ものタイトルを勝ち取るという信じがたいものです。

このような域に達している指導者はこれまでのサッカーの歴史を振り返っても彼以外には存在しませんが、それ以外の指導者の間でもその「追及の度合い」にはかなりのバラつきがあります。
サッカーの複雑性をコントロールしつつもその創発性を活かそうとする指導者もいれば、サッカーの複雑さにかまけて努力やアップデートを怠る、あるいは金銭的な事情などによりそのような努力にリソースを割けない指導者もやはり多いなという印象です。

私が指導者になった原動力には、「選手時代にサッカーを追求しきれなかった」という後悔があります。
選手のときに関わってくださった指導者の方はみな、熱心かつ真摯に向き合ってくれましたが、それでも自分のようにやり残したことがある感覚を抱くのですから、このような感覚、あるいはもっと大きな後悔を抱えてサッカーを離れる選手がきっと全国には大勢いるのだろうと思ったのです。

どのようなレベル、カテゴリーの選手に対しても、もっとサッカーというスポーツについて知り、もっとサッカーというスポーツを好きになってほしいと感じるようになりました。
そしてそのためには、サッカーを教える指導者のクオリティを向上させることが必要だと考えています。

組織論/マネジメントのノウハウの横展開

そしてもう1つ、私が指導者として過ごす中で強く感じたのは、「サッカーの指導者ってこんなに勉強することあるのか」ということです。

元々プロの指導者としてやっていくつもりはなかった自分は、学生として2年間指導者をやったら普通に就職するつもりでした。
だからこそ、やるからにはとことん質を追求しようと思い、指導者になる前に、何なら受験生のときよりも必死に色々なことを勉強しました。

そのときに出会ったのが、今でも自分の指導理論の中心であり、昨年出版させていただいた書籍のテーマでもある「戦術的ピリオダイゼーション理論」でしたが、当然ながら今でも毎日のように勉強し、自己破壊とアップデートのサイクルを回し続ける日々です。

中でもなるほどなと思ったのが、サッカーの指導者は一般企業のマネージャー、管理職の持つべき能力や資質とかなりの割合で重なり合っているなと気付いたことでした。
選手という複数の人間をマネジメントする立場なので、当然と言えば当然なのですが。

マネジメント、あるいは組織論について学ぼうと思ったときには、サッカー界の名監督の自伝を読むよりも、一般の組織論についての書籍を読む方が遥かに再現性や応用性が高い知識が得られました
自伝はその性質上、生存バイアスを感じるものも多いですしね。

例えば、以下の5冊の書籍はいずれも”組織”をテーマにした書籍ですが、下に行くほど抽象性が高くなっていく様子が伺えるかと思います。(全て読んだとは言ってない)
抽象的であればあるほど他分野に応用しやすいジェネラルな知識が身に付きますが、一方でより具体的な応用事例などは専門的なソースからの方が学びやすいという特徴があり、これはもちろん取捨選択とバランスの問題です。
とはいえ、サッカー界は全体的に原点にあたることや抽象的な学びを軽んじすぎている印象があります。

そんな中で私が感じたのが、「サッカーの指導者として身につけたマネジメント経験や知識は他分野に活かし得る」というものでした。

理由は主に2つあります。

1つ目は、サッカーの指導者とは本来「マネジメントのプロ」であるからです。来たる試合に向けて選手たちをモチベートしながら、サッカーという複雑なスポーツにおいて向上を目指す、というサイクルは、いわゆるマネジメントに他なりません。
ざっと挙げるだけでも組織論/マネジメント複雑系科学システム思考デザイン思考心理学など、サッカー指導者としてマネジメントに関連する分野で学んでおいて損はないだろうというものがこれだけ存在します。

※運動生理学、解剖学、運動学など、マネジメント以外に学ぶべきこともたくさんありますが・・・

つまり、サッカーの指導者としての教育を受ける、サッカーの指導者として成長するとはすなわち、マネージャーとして教育を受け、成長することと同じような意味を持つはずなのです。

2つ目は、サッカー界に限らず、マネジメントに関する悩みを抱えている人は多いからです。
日本の企業などでは、プレイヤーとして優秀な人がマネジメント職に就く場合が多いように思われます。
ただ、プレイヤーとマネージャーで求められるものは違います。プレイヤーとしては優秀だからこそ部下への要求が高すぎてしまったり、部下のモチベーションコントロールまで頭が回らなかったり、しまいには自分がプレイヤーとして部下を手伝うことでなんとか帳尻を合わせていたりと、マネージャーがマネージャーとして機能していない集団、職場は多いです。

このような理由から、近いうちに一般の企業に対する組織論/マネジメントの講義、研修を行いたいと考え、準備を進めています。
※まだまだ試作段階ではありますが、下記のようなワークショップを開催したりしています。

さらに言えば、このような観点でサッカーとそれに関する学問/考え方を学んだ私が、細々とでもそれを他業種にも応用し役に立っていくことは、中長期的にはサッカーの社会的価値を向上させることに繋がると考えています。
これこそが、組織論/マネジメントの知識を他業界にも横展開したいと考えているもうひとつの理由です。

サッカー以外のコトを書く

ここまで話してきたような背景から、今回noteを始めるにあたり、サッカー以外の内容、すなわち自分がサッカーの指導者という立場を通して学ぶことができた組織論やマネジメント、あるいは様々な思考体系などを中心に、自分が思ったことをゆるく投稿していこうかと思います。

私はサッカーの指導者であり、サッカーの現場にこれからも身を置いていくつもりです。Twitterなどで発信をしていると、どうしてもそのような一面ばかりが強調されて伝わってしまいます。

しかし、これから書こうと思っている「サッカー以外のこと」は確実にサッカー人としての自分へと影響を与えています
それらすべての相互作用によって今の自分が形成されているのです。

「サッカーで学んだことを一般的な内容に翻訳して発信することで、サッカーというスポーツの社会的価値を上げる」という先ほど述べた目的を目指しつつ、このnoteは自分のサッカー以外の部分を垣間見せる場所にも出来れば良いなと思っています。

更新頻度には不安しかありませんが、なるべく早く様々なコンテンツを更新したいという気持ちはありますので、皆さまこれからよろしくお願いします。

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