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【解体新書】古の中判レンズ"SEKOR 80mm F1.9"の放つ魅惑の性能

こんにちは、りょんりょんです。本名に変えました。
本名でもりょんりょんでも好きな方で呼んでくださればと思います。

そんなこんなで新年の目標を除けば1発目のnote。
【解体新書】と銘打つには生意気カマしてますが、今回お話しするのは"SEKOR 80mm F1.9"です。いわゆる「オールドレンズ」ってやつですね。

SEKOR 80mm F1.9 & M645-GF マウントアダプター

このレンズを購入するに際して参考にしたのは以下のサイトとけんちゃんさん和田さんとのお話です。

性能的な話はこちらを参考にしました。分かりやすい。

作例はこちらを。素敵な写真が掲載されてます。

ただこのレンズ、ネットで調べてもGFXと合わせた情報がそこまで出て来ないんですよね。(調べ方が悪かった可能性もあるが)

ということで、このnoteにGFXと合わせたSEKOR 80mm F1.9の性能と魅力、発見したことをつらつらと書き残しておきます。
きっと私のような迷える子羊(オールドレンザー)ならば参考になることでしょう。

購入経緯

端的にまとめると以下の4点が理由です。

  1. 50mmより望遠寄りの単焦点レンズ

  2. F値の小ささ

  3. 手頃な価格

  4. 中判オールドレンズの淡い描写&ボケ感

悩みの種は③ですね。GFXの純正レンズって基本20万降らないんです、敷居が高い。中古でもなかなか値段が下がらないので手が出にくい。(先日64mmF2.8が10万ちょいで落ちてましたが…)
それでいてF値はそこまで小さくないんです。(これが②ですね)
ズームでF4、単焦点でF2.8くらいでしょうか。もう少し小さいのもありますが、お気軽に試していこうとはなかなかなりませんね。

その点オールドレンズであれば(モノは選ぶ必要がありますが)、比較的安くかつF値が小さいものや様々な焦点距離のレンズを使うことができます。
懸念としてオールドレンズは描写の柔らかさや独特なボケ感を有していることが挙げられますが、④にあるようにそれは私が求めているものであったので問題ありませんでした。むしろ中判オールドレンズを使ってみたかったのでwin-win。古の銘玉に触れられるのもメリットです。

①についても簡単に。
私は普段X100Vという換算35mmのコンデジを使っています。スナップするのに狭過ぎず広過ぎずしっくりくる画角なので愛用しています。
反対に仕事では50mm単焦点を使うことが多いです。被写体とのちょうどいい距離感が心地よく、プライベートでも手元に置いておきたいと感じるようになりました。
50mmよりもさらに望遠に踏み込んだ画角を求めた結果、全てを叶えるレンズ"SEKOR 80mm F1.9"に辿り着いたというわけです。

正直、PENTAX 67 105mm F2.4 & 165mm F2.8 のセットとどっちを買うかはかなり悩みました。そのうち買う気がする。

外見/基本性能

レンズを紹介していきましょう。

1975年製
M645マウント(マミヤM645式バヨネットマウント系)
・焦点距離80mm=換算64mm相当
F1.9/ボケ味F1.5〜1.6相当
・レンズ構成:6群7枚
・フィルター径:67mm
・最大径×長さ:75.5x59 mm
重量:420g
・AF/MF切り替え可能(ぽい)
最短撮影距離 0.7m

「レンズは資産」とは言いますが50年近く前のレンズと考えると、時を超えて人々の手に渡って残り続ける風格を感じます。

GFXの中判センサーを使う際には焦点距離は0.8倍、つまり80mmは64mmとなります。50mmよりも少し望遠寄りの画になりますね。50mmだとちょっと広いからもう少し圧縮したいと思っていた私にはぴったりな画角です。

見た目はこんな感じ。なぜでしょうね、同じ黒塗りなのにオールドレンズの方がかっこよさ感じるのは。
絞りと焦点距離の数字と目盛、白緑橙の色遣いは個人的に好きですね。

凸凹しているところがピントリング、1.9の数値が振られているのが絞りリングですね。絞りリングにはつまみが付いているので引っ掛けて回しやすくなってます。
絞りリングが少し緩く、つまみにちょっと当たると変わっちゃうこともあります。さすがに揺らすとかカメラを動かした程度では変わりませんが、撮影する時は一回チェックした方がいいかもです。

GFXに付けてもケラれませんのでそのまま使えます。

使用方法

M645マウントはもちろんGFXに直付けできないのでマウントアダプターが必要です。今回は購入時にセットで売ってましたが、新品で通常1〜2万くらいするかと。

GFXへの装着

レンズとマウントアダプター、マウントアダプターとGFXをそれぞれ付けていきます。接合部分がちょっと固めなので人によっては装着の際に少し力が要るかもしれません。
しかもこのSEKOR、レンズ全体が大体どこもリングで回るので付けにくいです。うっかり絞りリングをガッと回すと壊れてしまいかねないので注意しましょう。レンズ先端の方を持って回すかマウントアダプターを回すと付けやすいです。

装着の図

はいカッコいい。
マウントアダプターが長めなので全体的に飛び出してるように見えますが、GFXの見た目ががっしりしてるので違和感はないですね。
話には聞いていましたが、前重心になるのでレンズ以上の重みは感じるかもしれません。私は普段"GF45-100"というレンズを使っているのですが、それと比べると体感軽かったです。あのレンズ1kgとかあるんでね…重過ぎる。
対してこのレンズは420g。マウントアダプターと合わせても600g前後くらいか。そりゃ軽くも感じます。
なので私の「軽い」は真に受けない方がいいかもしれません。

カメラ設定

実はこのレンズ、このままだとシャッターを切れません。レンズを付けて「さあ試し撮りだ…っと」とシャッターを切れなかった瞬間は不良品かと思って焦りました。

GFXのメニューから設定を変える必要があります。(これを調べるのが意外と時間かかった)
電子接点があれば大丈夫かもしれませんが、私のマウントアダプターには無いので無い用の設定を記載しておきます。
自分に対して「無知は罪だぞ」と思っている人間ですが、知らないことは繰り返さないために調べて知ればいいのです。(開き直り)

設定メニューの「基本設定(レンチのマーク)」を開きます。

2ページ目の「レンズなしレリーズ(レンズ無しでシャッターを切ること)」を「ON」にします。これだけです。
ここが「OFF」だと、カメラが「レンズ付けてる」と認識していない状態ではシャッターを切らないというようになっているのですね。おそらくデフォルトだとOFFになってます。

電子接点がないから?オールドレンズだから?
検証してないので分からないですが、今回の事例だとSEKORを「付けている」と認識してない状態なのでシャッターが最初切れなかったわけです。

特徴① 開放時の描写

お待たせしました、本題です。
作例を交えながら描写について解説していきます。

ピント面(立体感

F1.9を買ったんですから開放でパシャパシャ遊んでいきたいところ。ということで家の中や周りを散歩して試し撮りをしていきました。

手前ボケがエグい。
右側のピンクは物干し竿に吊るしている雑巾なのですが、言われないと何なのか全く分からないことでしょう。
左側の少し離れた植物たちのボケもかなりのものです。ボケが強くて向こう側の電柱が透けて見えます。

そしてピント面はしっかり解像しています。トラックの輪郭も線が太いです。ちょっと被写体遠いけど。
光が直接強く当たっているのでなければ割とシャープに解像してくれそうですね。とは言っても現代レンズのバチバチの写りよりは柔らかい印象を受けます。

手前のものも撮ってみました。窓辺と縁に落ちる影です。影が可愛いから撮ったのは言うまでもありません。

こちらはカーテンの模様にピントを合わせたのですが、光が当たっている分だいぶ柔らかく写っています。ピントが当たっている輪郭に霞のようなふわふわな光が入ることが特徴です。
またF1.9(ボケ味はF1.5〜1.6相当)というシビアなピント面なので、少し外れただけでボケ感が出てきています。右下の縁なんかが良い例です、フワッフワです。
レタッチでシャドウを上げてもないのに影の部分にモヤモヤ感を感じられるのも特徴でしょう。

周辺減光

F1.9の開放で撮ると周辺減光が掛かり、加えて中心部が明るくなります。この周辺減光は割といやらしさがなく、被写体が際立つように感じるので私は掛かってくれてる方が好みだったりします。

1段絞ってF2.8で撮るとこの周辺減光が無くなり、全体的に光の明るさが平されているようになります。
比較しないと分かりにくいので、作例は次の特徴②で出しますね。

特徴② 絞りを変化させた時の写真の違い

全く同じ景色をF値を変えて撮影してみました。写り方の違いにちょうどいいかなと思ったので紹介します。
まずF1.9とF2.8の描写の違いです。

F1.9
F2.8

少し光の強さが変わってしまったので周辺減光は一概に比べられませんが、ピント面はF1.9の方が柔らか。「何ならちょっとピント甘くない?」とすら思ってしまうような画になっています。
F2.8の方がその点、輪郭がシャープなのが分かるでしょうか。分かりにくいと思ったので拡大写真も上げておきます。

F1.9
F2.8

これは一目瞭然でしょう。F1.9の方は輪郭に光をまとっているかのようになっています。シャープさはあまりありません。ここは好みが分かれるところですね。
F2.8は輪郭のシャープさが際立ち、当たり前ですがボケ具合も開放よりは落ち着いています。

お次は駐輪場にあったソファです。ベンチじゃなくてソファがある辺りめっちゃ良い。全て撮って出しです。

F1.9
F2.8

ここで見る分には微妙な差なんですが、F1.9に周辺減光が掛かってます。暗さもボケも四隅が顕著ですね。
そしてソファーの明るさ。F1.9の方が気持ち明るく見えます。

F4

F4までいくとF2.8よりさらに周辺減光は軽減されたかのように感じます。ここ以降は周辺減光の変化は小さく、ボケの変化になってきます。

F5.6
F8
F11
F16
F22

作例

レンズ特性も大体分かっていただけたかと思いますので、この日散歩してきた道中に撮影した作例を載せていきますね。ここからの写真はレタッチしています。
通常15分もあれば終わる散歩コースに1時間以上掛かっているので、「写真を撮る人は一般人よりも進む速度が6倍遅い」という持論は今のところまだ正しそうです。

F1.9。光が当たる部分はかすみ掛かった解像度。
F1.9。木にピント。手前と奥のボケで立体感がある。
F1.9かF2.8。アロエのウネウネが際立つ。
F1.9。ぽつん石。
どこまでも続くブルーシートと重石たち。
F1.9?手を繋ぐ家族の暖かみすら感じる。(本人の感じ方次第)
F1.9か2.8。ぽつん鳥と木のボケも好きだが、
水に沈むブロックの朽ちてる感が好き。
F1.9かな。水面に映る柱にピント。
手前の柵のボケ感好きだが少し絞っても良かったかも。
水面の橋と柵で挟んで、水面の柱が主題になるように。
F1.9。葉が光を反射してるところはかすみ掛かったように。
トロけた淡い描写が出せるのも良い。
F1.9。ワイヤーのなだらかなボケが心地いい。
ワイヤーと柱の接合部がシャープな写りでビビった。
F1.9かな。橋にピント合わせたので水面のピントが淡く、静けさを感じられる。
下部の周辺減光が割と目立ちますねこれは。
F11前後も撮りましたがこっちの方が好きかも。
F1.9。包まれた布にオイル缶が謎過ぎ。
F1.9。マクロ的な感じで撮れるかなと。
最小が0.7mなのでそこまで近付けはしない。
おまけの超拡大写真。
開放で葉脈までしっかり写っている。
F1.9。左側の周辺減光がこれはキツめに出ている。
水の色とススキの枯れた橙の対比が綺麗。
F2.8?葉の影が淡くて陽の優しさを感じます。
F8。全体的にシャープな写り。
真ん中の雲がかわいかったので撮りました。
F1.9。もっこりした木を際立たせようとしたけど、もうちょっと引いても良かったかな。

「写真を楽しんで撮る気持ち」を思い出させてくれる古のレンズ

MFということもあってか、撮りたい被写体に対して時間を掛けて向き合うことがこんなに楽しいかと、心躍らせながらシャッターを切っていました。まるで初めてカメラを手にした時のような、身の周りのもの全てに全身全霊で向き合って夢中で撮影していました。

X100Vで直感的にパッと撮っていく撮影も楽しいですし、SEKORでMFをじっくり合わせながら被写体と向き合う撮影も楽しい。OLYMPUS PENで直感的ではあるがフィルムなので少し慎重気味になる撮影も楽しい。
どのカメラもそれぞれの良さがあっていいですね、みんな違ってみんな良い。

あまりに楽しかったので詰め込んでnote書いちゃいました。
作例や他の写真はTwitterメインで上げてますので、まだフォローしてない方はぜひしてね。

りょんりょんでした!それでは。

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