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キムタクとばあちゃん

祖母は大正7年生まれ。


生きていれば106歳。


キムタクとはもちろんSMAPの木村拓哉だ。


ばあちゃんはキムタクが好きだった。


ばあちゃんの若い頃のアイドルは誰だった?と聞いたことあるが、舟木一夫と言っていた。


子どもの頃のことなので、どんな人か分からないし検索なんて言葉もなかった1990年代のことだ。


中学生くらいで舟木一夫を初めて目にして正直、キムタクと全然違うじゃん…とは思った。

舟木一夫


でもまぁ、イケメン、面食いなんだということはわかった。



とにかくばあちゃんはキムタクを好きだったし、1990年代後半ごろはテレビをつければ何処かしこにはSMAPはじめ、キムタクは出まくっていた。



 『SMAP×SMAP』がはじまったのは1996年、『ロング・バケーション』も1996年らしいがこちらはあまり覚えていない。



同時期だと『人生は上々だ』や『ギフト』でのキザなのになぜかカッコいい…素行不良なのになぜかカッコいい…ザ・キムタクなドラマを始め、


大瀧詠一の「幸せな結末」を聴くとイコールな『ラブジェネレーション』や、『古畑任三郎』の田村正和とキムタク、そして宮沢りえのビジュアル映えしまくりの3人で大人の恋愛模様を描いた『協奏曲』なんて恋愛ドラマも、


80歳手前のばあちゃんと小学校高学年か中学生くらいのガキんちょで一緒にみていた。



正直、ばあちゃんも私もドラマの内容や意味なんて理解してない。



だけどいつも
「やっぱりキムタクいいねー」「キムタクカッコいいねー」なんて会話して満足してた。









2000年代。私は高校生の年代になり、思春期真っ只中で現実の恋愛も経験しだした。



家族以外との付き合いも増え出し、家の外での世界が忙しくなる年頃だ。



だけどばあちゃんとは『Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』や『HERO』も一緒にみてた。


80歳を越えたばあちゃんは耳が遠くなりだしていた。だけど相変わらずキムタクは好きだったから、キムタクドラマと『SMAP×SMAP』は欠かせない。




聴こえないけどテレビ画面の中のキムタクやSMAPがコントで笑わそうとしたり、ゲストの芸能人が楽しげにしている。



そしてなにより、それを一緒にみている家族の誰かが笑ったり楽しんでみている。
そういう空間がばあちゃんは楽しそうだった。



そんな空間を作ってあげたくて一緒にみていた。



この頃、木村拓哉のエッセイ本『開放区』をばあちゃんにプレゼントした。









2007年の『華麗なる一族』
このドラマがばあちゃんと一緒にみた最後のキムタクドラマだったと記憶している。



ばあちゃんは90歳手前、私は20代前半。仕事に熱が入り忙しく過ごしていた。



脚の手術もあったりして足腰が弱っていたばあちゃんはベッドで過ごす時間が増えていた。



テレビがあったのはベッドが置いてある寝室とは別の居間だったから、テレビをみるには移動しなくちゃならない。



ずっとベッドで居させたくなかったから、月曜日の夜10:00『SMAP×SMAP』の時間にはわざわざばあちゃんを起こしにいっていた。



一緒に見ていても、もうほとんど聴こえていない様子は見てとれた。周りに合わせてなんとなーく笑ってるのもわかっていた。



聴こえないことからだんだんと頭もボケてくばあちゃんを認めたくなかったんだと思う。




なんだか遠くに行ってしまう気がするばあちゃんを無理やり繋ぎ止めておきたかった。



そんなばあちゃんと私たちを繋ぎ止める接点といえばキムタクだった。




お互いに不器用な歩み寄りだった。







2010年代にはもう『SMAP×SMAP』もキムタクドラマも見なくなった。




ばあちゃんは1日のほとんどの時間をベッドで過ごしていたし、私もほとんど家にはいなかった。




後日聞いたには、たまーに妹がばあちゃんと一緒にキムタクドラマをみていたそうだ。




そして2016年にはSMAPは解散し、『SMAP×SMAP』も終了。



もう寝たきりでボケぼけだったばあちゃんだったが、SMAP解散は兄弟でも示し合わせて伝えなかった。








2018年ばあちゃんは亡くなった。




SMAPの解散は知らずに逝った。



100歳の大往生だった。




近々、実家の軽いリフォームをするので整理をしなければならない。



ばあちゃんが使っていた本棚があるのだか、確かキムタクのエッセイ本『開放区』があったはずだ。



機会があれば読んでみようと思う。



ばあちゃんが読んだかは知らないし、もう知る術もない。


やたらとキムタクドラマのリンクを貼りまくりましたが、別に「STARTO ENTERTAINMENT」のまわしもんじゃあございません。

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