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日記・上白石萌音『いろいろ』感想 −くどうさんが見せてくれた朝ドラ-

 上白石萌音さんのエッセイ『いろいろ』を読み終えた。


 個人的なこだわりで、タレントさんのエッセイはあまり読まないようにしている。なんとなくそのネームバリューで本を選ぶのが嫌なのだ。

 だから上白石萌音さんのエッセイを手に取っているのは自分にとってかなり珍しい。普段だったら書店で平積みになっているその本から意図的に目を逸らしたりする。

 そんな偏屈な僕がこのエッセイを手に取った理由は、上白石萌音さんが「くどうれいんさんの文章が好き」とおっしゃっている記事を読んだからだった。

 くどうれいんさんという盛岡の作家さんがいるのだけれど、僕はその人の書く文章がたまらなく好きなのだ。同じ「くどうれいんさん推し」の人がどんな文章を書くのか気になった。

 本を開いてみると目次の量に驚いた。50個のテーマのエッセイが並んでいた。タレントさんのエッセイだとたくさんの空白と写真を駆使してなんとかページ数を稼いだ努力が垣間見える本が時々あるけれど、これは読み応えがありそうだと密かに期待を胸に寄せた。

 本文を読んでみると、普段から文章を読み書きする人が書く言葉だとすぐに分かる。心地良い文章でするする読める。言葉が好きな人なんだと文章の節々で気づく瞬間がある。

 エッセイの中では女優さんの仕事の話に触れる場面が出てくるけれど、そうやって話に出てこないと「女優さんが書いた文章」という感覚を忘れてしまう。

 上白石萌音さんのことは知っているけれど、名を知らない文化的に豊かな人が書いたエッセイという感覚で読んでしまう。自然で、穏やかで、芯があって、ひとつひとつの文がたおやかだ。

 上白石萌音さんがくどうれいんさんの文章を好きな理由がなんとなく分かった気がした。というか、上白石萌音さんが書く文章が僕は好きだ。

 不思議なもので、エッセイを読み始めた時に『カムカムエヴリバディ』というドラマのことをまるで知らなかった。エッセイに時々出てくるタイトルのドラマだけれど「多分以前出演したドラマなんだろうな」ぐらいにしか思っていなかった。

 後に知り見ることになったのだが、なんと朝ドラである。しかも現在進行形で放送中で、上白石萌音さんが主演。自分がいかになにも知らないまま『いろいろ』を手に取ったかが分かってしまった。

 今朝、その朝ドラ『カムカムエヴリバディ』の1週間のダイジェストを見た。それまでの話を時々見ていてなんとなく内容は知っていたのだけれど泣いてしまった。良かったね、安子ちゃん、稔くん……。ひなたの道を生きて。

 実は朝ドラもなるべく見ないようにしていた。というより、時間帯的に全然見られないのだ。世の中が朝ドラに沸いている時、いつも蚊帳の外だった。 

 様々な物事が色々な形で繋がっていくのを最近切に感じるようになった。くどうれいんさんが好きだということから朝ドラを見るところに繋がっちゃうんだから、なにがどんな風に繋がるかなんて誰も知りようがないのだ。



P.S. まったくの無意識のチョイスだったのですが、この感想を書いている時に大橋トリオさんの曲をずっと流していました。偶然ですが、偶然って嬉しいですね。僕は『デイジー』が一番好きです。



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