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"warm"は温かい?

 以前にも書いたが、アメリカでは一般に使用される単位が異なる。

 他に異なる単位を使う例として温度がある。 医療現場では摂氏(Celsius)を使うことが増えてきているものの、一般にはまだ華氏(Fahrenheit)のほうがよく通じる。そのため、「体温が40℃もあります」と言うと、患者さんに「それって何度のこと?」と華氏での数値を聞かれることがある。

 温度に関する単語に”warm”がある。一般には「温かい(暖かい)」と訳される。例えば、ショックの患者で、

The extremities are warm to the touch.

とあれば、手足を触って温かいという意味で、手足が冷たい(cold to the touch)場合との対比なので、この訳で良さそうである。

 しかし、

The patient complains of intermittent episodes of redness and warmth of his face and neck that last around 5 minutes.

という文章では、「間欠的に顔と首が赤く温かくなり、5分程度続く」というのは違和感がある。皮膚は温かいのが正常なので、ここでは患者があえて訴えていることを考慮すると「間欠的に顔と首が赤くて熱くなり、・・・」のように”warm”を「熱い」と訳すのがよさそうだ。

 宮脇孝雄氏の『翻訳の基本』によると、

It is warm today.

というように気候を表す場合でも、”warm”は「暖かい」よりも「暑い」と訳す方が正しいそうである。