見出し画像

purseは財布?

 学生時代にアメリカ旅行で財布を買おうと思って、「”purse”を見せて欲しい。」と店の人に言うと、ハンドバックコーナーに連れていかれたことがある。アメリカ英語だと”purse”は財布ではなく女性のハンドバックを意味するのだ。それに対してイギリス英語だと、”purse”は財布で、ハンドバックに相当する単語は”handbag”である。 英語を母国語にしない人にとってはややこしいこと限りない。

 そういえば、テイクアウトはアメリカ英語では”takeout”だが、イギリス英語だと”takeaway”だ。車のウィンカーもイギリス英語だと”winker”だが、アメリカ英語だと”blinker”となり異なる。アメリカの車はウィンクではなくまばたきするのである。

 話を”purse”に戻すと、”purse”を使う医学的表現として、”pursed lip breathing”というのがある。日本語では「口すぼめ呼吸」と訳されていて、その名の通り口をすぼめてゆっくりと息を吐く呼吸である

慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患のある患者さんで呼吸困難を和らげるのに有効であるとされている。英語には”purse one’s lip”という表現があり、「(不満・疑いの気持ちで)口をすぼめる」ことを指すので、これからくる表現なのだろう。

 ではなぜ口の形が財布(あるいはハンドバッグ)と関係あるのだろう?これは、昔の財布の形が巾着袋のようになっていて、口の部分を紐(purse string)で縛る形状になっていたためと考えられる。財布の紐で財布の口を縛ったときの口の形を表しているわけである。このような口をギュッと縛るタイプの縫合のことを”purse-string suture”と呼ぶ。