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ドアと鍵の物語〜第二章 3

さあ、やっとタンジェへやってきた。ちょうど1年前の11月、季節は夏から秋、そして冬へ変わろうとしていたが、まだ外のテラスでの朝食が取れる陽気だった。この章の初めに載せた写真、それが後にサンクチュアリと知るホテルの鍵置き場だった。バス停からこの街の旧市街の広場まではタクシーに乗った。この街は最後に訪れたからタクシーの乗り方もわかっていたし、ホテルの前まで連れてきたタクシーの運転手に追加でチップを払い無事に入り口まで辿り着いた。この街で1番高い場所にあるダールヌールというホテルに。ダールヌールとはアラビア語で光の家という意味だ。

オンライン英語勉強会でアラビア語に詳しい方がいてモロッコのことをいろいろおしゃべりした。その方も言っていたようにモロッコはこの世界の西の端にありマグリブと呼ばれている。日の沈む国という意味だ。日出る国日本と真逆ではないか。対極にある場所へ行く、それが今回の旅の目的だった。目的地へ着いた。さあ、何が始まるのかな。

ホテルのミニスイートへチェックインした時にはフェズでの一連の鍵のトラブルのことは忘れていた。特に部屋に入れなくなるくらいなら誰かが入ってきた方がいい、なんて言葉を放ったことは完全に忘れていた。数日後にやってくる人は私が呼んだのだなと今にして思う。世界は繋がっているし無意識もそう。でもとにかくこの時はモロッコ最後の街を楽しもうとホテルにチェックインしたところだった。ステキな部屋に1人きり。仕事ができるデスクもある。ここで原稿書いたら捗りそう。パソコンを広げてみる。ちょっとホテルの中を散策してみよう。複雑なつくりの建物だった。

やれやれ、外出して帰ってきたらホテルの入り口のドアが開かない。ここも壊れかけている。教えてもらった方法の数字のキーを押す方法では開かないので呼び鈴を鳴らし中からら開けてもらう。

このホテルはカズバの1番上にあり、ドアまでたどり着く道がまっすぐ行って右に左に曲がる。日本ではあんまり道に迷ったことないのに難しい。目印のほとんどなかったマラケシュの迷宮に比べればいくつか道を見分けるポイントがあるし、例のマラケシュで道に立っていた、そっちは行き止まりだよと教えてくれるありがた迷惑なおじさんもいない。私のホテルは行き止まりの先にあったから何度も騙された。この道が行き止まりであっても、私は行き止まりへ行きたいんですよ。とフランス語で何というのだろう。

写真はシャフシャウエンで泊まったホテルのドア。スマイルという部屋。笑顔は大事だよ。

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