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行動を誘うデザインパターン集を考察してみた

行動を誘うデザイン集の事例を分析してみて分かったこと、活かせそうなヒントをまとめました。

★時間のない人向けサマリー
・狙っている行動にはどんな閾値(例えば汚れ、空腹感、体重)があり、どうしたらその値が蓄積されるのかを考える
・HMWクエスチョン(どうしたら〜できるだろうか?)を分解することでアイディアを出す
・目的の二重性を確かめる方法「□□している時、〇〇のニーズを満たしている」に当てはめてみる
・ユーザーが新しい環境に慣れていない時はインセンティブよりも不安を取り除く方が良い


閾値を超えさせる

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ドアノブのケースは洗剤をトリガーとして半強制的に手を洗わせ、トイレする前に手を洗わせるというものです。

手洗いの場合を考えると「手が汚れた」から「手を洗う」が日常生活では普通です。同様にシャワーを何日も浴びていなかったり、汗をかいたりすればカラダをきれいにしたくなるし、お腹がある一定程度減ると空腹を感じて食事を取ろうとします。痩せたいと思っていても、ある程度太ったなと感じるまでは運動なんてしないのが人間です。

つまり行動が起こっていない時、それはまだ閾値に達していないのです。この事例では手に洗剤を付けることで手洗いの閾値を一気に突破しています。行動が発現するには「閾値」に達する必要があるということです。

ターゲットになる行動にはどんな閾値(例えば汚れ、空腹感、体重、イライラ)があり、どうしたらその値が蓄積されるのか、どんなキッカケがあれば閾値を突破できるのか。

あえて行動を変えずに目的を達成する

バイク版蚊取り線香はバンコク市内を走るバイクのマフラーに専用カートリッジを付けることで、市内中に蚊取り線香成分を撒くというものです。

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普段取っている行動(バイクを運転する)を変える必要がないことは、ユーザーにモチベーション(蚊を退治したい!)がなくても抵抗感がないため導入しやすそうです。

この事例ではHMWクエスチョン(どうしたら〜できるだろうか?)を分解することでアイディアを思いつくことができると思います。

おそらくエージェンシーが考えた問いは「どうしたらバンコクの街すべてに蚊取り成分を噴霧することが出来るだろうか?」です。

それを後ろから分解しつつ、相乗りを試みます。

街のすべてに=すでに街に広く普及しているものは何か?
蚊取り成分の噴霧=すでに噴霧されている状態のものは何か?

それぞれに当てはまるアイディアを出し組み合わせていったのかなと思います。

しかしわざわざ工場で取り付け作業が必要だったり、高価だったりするとなかなか普及しないでしょう。

ワンタッチで装着できる、蚊取りカートリッジがカッコいい、自分流にカスタマイズできるなどするとユーザーがより広がると思います。

無意識に働きかける

2011年、ロンドンで暴動が起こった時に広告会社のOgilvyは政府の依頼で「路面店のシャッターに子供の顔を描く」策を取りました。

結果として暴徒による破壊行動が激減し成功を収めました。これは子供の顔を見るとかわいいと感じたり、守るべき対象だと認識する効果があるようです。まあ確かに赤ちゃんの顔が描いてあるシャッターを壊すのは気が引けますよね…。

割れ窓理論のように「ココは盗みに入っても大丈夫そうだな」とハードルを下げるのではなく、ハードルを上げることで行動を防ぐこともできます。

簡単さで利他主義を引き出す

いらなくなったモノをこの袋に詰め、路上に置く、誰でも袋の中に欲しいものがあれば、持ち帰ります。リサイクル業者も回収でき、最終的に残ったモノは市がゴミとして収集します。

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リサイクルしたい気持ちがあっても、その手段や方法が手軽でなければ、ハードルに感じてしまい「ん〜まあ不用品ゴミでいいか」となりがちです。

袋に詰めて家の前に出すという行動自体は普段から行なっているため作業のハードルは低く「それならやってもいいか」と思えたのかもしれません。

デザイン的にも黄色を使うことで街中でも視覚的に見つけやすいということもポイントだと思います。また透明部分もあることで中身が見えるため、毎回袋を漁ることなく良さそうなものが入っていれば手にとって見ることができます。

やる気よりも容易さにフォーカスした方が良いというBJ・Frog氏の考えに通ずるものがあります。

「目的の二重性」でWin-Win

オフィスワーカーによる保護犬お散歩キャンペーンでは「保護犬に触れ合ってもらいたい」団体側のニーズと「運動不足を解消したい」オフィスワーカーのニーズを散歩というツールで実現しました。この考え方は「仕掛け学」でも目的の二重性として紹介されています。

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目的の二重性を確かめる方法として「□□している時、〇〇のニーズを満たしている」に当てはめてみるのがオススメです。

□□はユーザーが望ましい行動をしている時の状態、ここでは「散歩」
〇〇はユーザーの抱えているニーズ、ここでは「運動不足」

□□をしている時にユーザーの抱えているニーズを満たしているのか当てはめて、矛盾がなければ有効性が高いアイディアだと思います。

あくまでも先に考えるべきはターゲット行動である「保護犬に触れ合う」です。この団体は経験則から「保護犬と触れ合った人は高確率で引取書類にサインする」などの事実を捉えていたと思います。

無料で参加できることも魅力の1つであり、さらに職員が一緒に付くことで犬の散歩に慣れていない人の不安をなくす効果があります。

新しい体験や文脈に触れる時、人は本能的に不安になります。たとえば外国に行く、凝った料理をするなどです。不安になると人は「明確な指示や権威に従うこと」でその不安を紛らわそうとします。

つまり、ユーザーが新しい環境に慣れていない時はインセンティブよりも、不安を取り除く方が良いでしょう。

この例で言えば、保護犬を散歩したら付近のランチ割引チケットがもらえることより「職員が一緒に散歩します」の方が不安がなくなるのだと思います。

タクシーのシートベルトを締めるとWiFiが使える様になるキャンペーンも同様です。タクシー側は安全にお客さんを運びたい、お客さんはWiFiを使いたい、そこでシートベルトをキッカケにしてどちらの目的も達成しています。

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公式に当てはめてみると

「シートベルトをしている時、WiFi接続のニーズを満たしている」

となります。

逆に、反転させても公式は有効なのかもしれません。

たとえば

「シートベルトをしていない時、スマホが使えなくなる」

とニーズを逆手に取ることもできます。「料金が割増になる」「運転が荒くなる」「とてもゆっくりで走る」などユーザーにとって「嫌なこと」を使って行動を誘うこともできそうです。


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