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素人にもわかるリハビリテーション〜生活期編〜

今回の記事は、前回の続きになります。
前回は病院のリハビリテーションってなあに?ってお話でした。

今回は病院から退院したその先、生活期と呼ばれる時期のリハビリテーションですね。
今回長いです。ごめんなさい!
でも最後まで読んでくれると嬉しいです。

そもそも生活期ってなぁに?

生活期っていうのは、病気の治療が終わって生活に戻った時を指します。
生活の場はどこでもよいです。家でも、施設でも、なんなら毎日がホテル暮らしだったとしても、そこで暮らしていれば生活期です。

というわけで、病院から帰ってきます。
無事退院ですね、おめでとうございます〜〜〜〜

…と、100%ウキウキできないのが生活期です(フラグ)

「こんなはずじゃなかった」との付き合いが始まる

家に帰ってからは(または施設に入ってからは)、こんなはずじゃなかったの連続です。
「病前はもっとできた」
「こんなこともできないのか」
「病院でできたのに、家ではできない」

そう、自分の想像を下回った暮らしが始まります(フラグ回収)

こんなはずじゃなかった現実と向き合うことはとても苦しく、辛いものです。
自分の殻に閉じこもったり、できることも諦めてしまう人がとても多いです。
家族もなんと励ましていいか迷いますし、長く落ち込めば気が滅入ることもあります。

そんな暮らしを支えて少しでも良いものにしていくのが生活期リハビリテーションです。

(前提)人生を回復するリハビリテーションに必要なのは伴走者である

これは私の持論になります。
生活期のリハビリテーションは何かを教えたりやってあげたりするのではなく、その人が自分の人生これもありだなと思えるようになるための伴走者になることです。

一言に言ってしまえば病院は体の回復、生活期は人生の回復を目指すことだと思います。
なので、入院中と退院後のリハビリテーションは違ったものになります。


病院のセラピストが専門医だとしたら、生活期のセラピストは在宅医みたいなものですね。
なんでも見るし、病気療養だけじゃなくて、生活のこと家族関係のこと、なんなら金銭的な負担のことも考えます。
そんなふうに職種の特殊技能ではなく、生活を支える全般的な知識と知恵と技能で仕事をしていくと、必然的にPTだからOTだからという資格の差がなくなってきます。

ただ、元の資格の知識や技術はありますし、OTさんの心理的な関わりのうまさを見ていると、やっぱりこのフィールドはOTさんだなぁと思う時もあります。

そんなことを踏まえて、生活期のリハビリテーションについてお話ししていきます。

①機能回復に頼らずにできることを増やす

今ある機能を最大限、効果的に活かす。
それが生活期のリハビリテーションで大切なこと。
なので、やれるけどやってないことは極力減らしていきます。

病院で頑張ってリハをしたおかげでできるようになったけど、本心ではやりたくないなーってことありますよね。
例えば、自分で着替えができるけど、着替えさせてもらってるとか。日中起きて過ごせるけど、ベッドに寝ているとか。
そういう、できるけどやってないことを、普段からやることにシフトします。

なんでやれないのかな?やりたくないのかな?どうしたら苦労なく(ここ大事)できるようになるかな。ってことを考えてアプローチします。

頑張れって言うのは簡単。でも、頑張らなくてもできる方法を探すのです。他には、頑張りたいと思える動機を見つけたりもね。

②背中を押す人になる(家族をトレーナーにしない)

やりたいけどできない(と思ってる)とか、誰かと一緒ならやってもいいなってことありますよね。

コンビニまで行きたいけど無理だと思ってるとか、運動なんてやりたくないけど仲間がいるならやってもいいみたいなね。

そういったときの背中を押したり、一緒にやる人になります。
ここで私が大事にしているのは、家族をトレーナーにしないこと。
他人からも言われて、家族からも言われると逃げ場がなくなります。家では呑気にしてたいんですよ。

優しい励ましなら良いのですが、家族は「やりなよ!」「なんでやらないの?」みたいにやれよ系オラオラ励ましになっちゃいやすいんですよね。「甘えてないで頑張れ!」ってのは言いたい気持ちはわかるけど、こんなはずじゃなかったという気持ちに揺れ動かされる人にはキツイんです。

なので、あなたが言うならやってみようかなとか、あなたとならやってみてもいいって思われるような関係を作って、その上でトレーナーになります。

リハビリテーションじゃなくて人間関係じゃんって思った方。正解です。
暮らしには人間関係が欠かせないように、生活期リハビリテーションも人間関係が鍵になります。

③誰かの辛さを取り除く

介護のある暮らしは、楽ではありません。
体も心も疲れやすく、余裕がなくなりやすいです。

ネットなんかではうまくやれてる介護レポもありますが、あれを鵜呑みにしてはいけません。SNSがキラキラしているのと一緒です。裏では色々あるんですよ。

そんな色々を仕方ないねで終わらせないこと。
何かできることはないか、使えるものはないかを模索します。

セラピストなので、もちろん本人や家族の体と心にアプローチもします。
でも、情報も大きな助けになります。
介護保険だけでなく、地域の活動とか、社協のサービスとか、自治体独自の取り組みを調べます。ケアマネさんの仕事だと思うでしょ?でもケアマネさんってすっごく忙しいんですよ。なので、できることはこっちで調べることも多いです。

あ、でも、ちゃんとケアマネさんに筋を通すことは忘れずに。
勝手にやってると不興を買いますw

ちなみに、私の住んでる板橋区でよくお伝えするのは社協さんがやってる自費の家事、話し相手、外出のお手伝いをしてくれるぬくもりサービスです。

④いきものとしての健康さを助ける

人間も動物なんだよなぁってつくづく思います。
動いていれば大抵のことは大丈夫。
でも、動かなくなると支障が出てきます。

夜眠れなくなったり、うんちが出にくくなったり、活気がなくなったり、話せなくなったり。

そこで薬を出せばいいなんて言っちゃぁいけない。薬は役に立つけど、一番最初の選択肢にしないで置きたい。だって、動いたら結構解決しちゃうことってあるんですよ。

心と体を動かす。そしていきものとしての健康さを保つ。
そのお手伝いがリハビリテーションです。
ちなみに体も大事ですが、心はもっと大事だと思ってます。心の不健康は周りの人を巻き込んで澱んだ空気を作るので、家族と暮らしている人はガス抜きが幸せな在宅継続には欠かせません。

それ、誰でもできるじゃん?

最後に。
それ、誰でもできるじゃん?って思った人。

そう!そうなのです!!
誰にでもできることなんです。

理学療法や作業療法は特殊技能ですが、リハビリテーションは特殊技能でもなんでもなく、その人がよく生きていくためのものです。
だから、本来は本人がやることです。
でも、それは大変だから支える人たちがいるわけです。
そして、その支える人は専門職である必要はありません。

家族、友人、いつものスーパーの店員さん、挨拶だけの近所の人、介護サービスの人、誰もがリハビリテーションに関わる人たちです。

リハビリテーションが特殊なサービスではなく、当たり前に身近にある世の中であって欲しいと願っています。
ちょっと手助けしたり、挨拶して笑い合ったりすることを「エモい」みたいに「リハビリしたわー」って言えたらいいなぁ。

そんなふうに、私は生活期リハビリテーションをを解釈しています。

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