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【名将対決!】明徳義塾VS県立岐阜商

8月15日(日)
甲子園大会1回戦

1回戦屈指の好カード、雨天順延によって名将同士の対戦を待つこと3日間。馬淵・鍛治舎両名監督の経歴は今更触れるまでもない、ここでは試合前の両監督の心理戦を。馬淵監督「こっちに来る前からある程度の情報もあり、打者の癖、長所、短所などほとんどデータを見せてもらった。県大会は2回戦から決勝まで全部見ている」そして勝利へのポイントは「捕手」であると。「県岐阜商の高木君も中軸で捕手。ウチの加藤も四番で捕手。キャッチャーの差が出るかもしれない」 一方の鍛治舎監督「不安も安心もない。県大会4試合と春のセンバツのビデオは何度も見て勉強したので、準備万端、整っています」馬淵監督の野球についてとの問いには「内緒」と。試合後の両監督のコメントを楽しみにしたい。

明徳先発は2ヶ月後のドラフト会議で巨人から6位に指名されたエース左腕の代木、打者3人を9球で片付ける無難な立ち上がり。県岐商は140㌔超えを5人揃える投手陣からエース左腕の野崎が先発、こちらは10球で三者凡退に抑える上々の立ち上がり。2回、まずは県岐商が大きなチャンスを掴む。1死後に5番中西が左安、行方は死球となった1死1、2塁から内藤が右安を放ち満塁に。ここで鍛治舎監督が動き、ボールカウント1-1からスクイズを仕掛ける。しかし湊が外のボール球を空振り、三塁走者が3本間に挟まれタッチアウト。その後湊は三振に倒れ先制機を逸した。明徳バッテリーはウエストした訳ではなく、代木と野手の連携で咄嗟に外したように思える。攻撃でスクイズを外れされたことがないと言う馬淵野球、守りでは相手にスクイズを成功させないということか。その裏明徳は2死から山蔭が死球で出塁するも井上は三振に倒れ無得点。3回の県岐商は先頭野崎が四球で出塁、広部が送り、梅村は死球で掴んだチャンスも松野は三振、高木は左飛と好機を生かせない。高木が追い込まれてからノーステップに切り替えるあたりは、秀岳館の選手を見ているよう。その裏明徳も四死球でチャンスを作るも後続が倒れる。県岐商は4回、5回と三者凡退、明徳は4回に代木がチーム初ヒットを放つが続かず、5回は先頭が四球を選ぶが後続が野崎を捉えられない。前半戦終え、2回のピンチを脱し、競った展開に持ち込んだ明徳ペースのように感じられた。しかし試合が動きやすいと言われる6回に県岐商に先制点が入る。死球で出塁した梅村を1塁に置いて3番松野はバントを空振り後、強硬策に転じ3球目を右中間にタイムリースリーベースヒットを放つ。今度はここで馬淵監督が動き、大胆な継投を見せる。エース代木に代わり変則左腕の吉村にスイッチ。すると前進守備のショートにゴロが2つ、いずれもボール先行のファーストストライクを打ったが、まるでそこに打たせたかのようだった。最後は行方が見逃しの三振に仕留め、守備から流れを作る。県岐商は先制したものの、とてもリードしたとは思えずに後味悪く守備につくことになった。その裏1死後に森松が左飛を打ち上げるがレフトが目測を誤り落球、相手のミスに乗じる明徳野球が始まる。すかさず鍛治舎監督はレフトを交代させるが、続く4番捕手加藤が“お返し”のタイムリースリーベースヒットを右中間に放ち同点。さらに代木が右犠飛を上げ逆転する。相手のミスを見逃さない明徳野球の真骨頂が発揮された場面であった。7回、県岐商は内野ゴロ3つで三者凡退、野崎の打順で代打を送ったため7回裏から当初先発予定だった小西にスイッチ。明徳は1死1、2塁とチャンスを作り中軸に回るも追加点を奪えず。8回、県岐商は途中出場の後藤が中安で出塁、梅村が送り、ここで迎えるは松野。前の打席が長打だっただけに明徳外野陣が深めの守備を敷いていた中、1-2から右安を放ちセカンドランナーが帰り同点。高木は遊併に倒れる。その裏明徳は2死から四球で出塁するが無得点に終わり、同点のままいよいよ9回へ。5番から始まった県岐商の攻撃は三者凡退に。その裏明徳は1死から1番米崎がストレートの四球を選び出塁。ここでも発揮された明徳野球、2死になってもスコアリングポジションに進める送りバントを決め、サヨナラのお膳立てを作る。この期待に森松が応え、2-2から馬淵監督春夏通算甲子園52勝目となる中越えのサヨナラ打を放ち、名将対決に終止符を打った。

試合後、ポイントになった6回の継投の場面を馬淵監督は「吉村は度胸あり、『低めで打たせてとれ』と。期待通りで、辛抱の試合だったが、ああいう形が明徳のペースかな」と。一方鍛治舎監督は「明徳はここ最近、確率性の高い野球に変わってきたと感じる。よくあそこで、吉村くんに代えたな」と驚き、「さすがに百戦錬磨の監督だと思いました」と、そして「やはり四球がきいた。選んで、選んで、選び抜かれて負けた」と語られた。最後に、鍛治舎監督は4番捕手の高木のブレーキを勝負のポイントにも挙げたが、試合前に馬淵監督があげた勝利のポイントと合致、その慧眼には驚かされた。

(可里 了)

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