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広島新庄VS横浜 2021年全国高等学校野球選手権大会

8月11日(水)
甲子園大会1回戦

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台風9号の影響で開幕が1日延期となった大会第2日目。第2試合に登場する村田浩明監督が率いる新生・横浜の戦いぶりに注目した。対戦相手は広島新庄、相手にとって不足なし。広島新庄は前任の前田守昭監督が2020年3月31日付で退任し、宇多村聡コーチが監督に就任。ちょうど1年前の同日に交流試合で甲子園での采配デビューを果たしている。広島新庄は田口、堀といった左腕の育成に定評があり、今大会エース花田の他にレベルの高い左腕西井と秋山の2枚を揃える。一方横浜村田監督も昨年4月に母校の再建を託され就任、しかし昨秋、今春ともに県大会準決勝でコールド負けを喫する屈辱を味わう。チームカラーを一変させ臨んだ夏、3年ぶりに甲子園出場勝ち取った。30代半ば若き同世代の監督対決は予期せぬ波乱の幕切れとなった。

横浜先発は右腕宮田、130㌔台のストレートに変化球を織り交ぜ、3回まで一人のランナーも出さないピッチング。広島新庄先発はエース右腕の花田、トップ緒方が初球をセンター前に運び出塁。安達が送った後、金井は三振、4番立花は左飛に倒れ先制機を逸す。2回は先頭宮田が振り逃げで出塁、内野ゴロ2つで2死3塁の場面を迎えるも増田は遊飛に打ち取られる。3回も先頭板倉にセンター前ヒットを放ち、3イニング連続で先頭打者が出塁。緒方は送りバントを試みるもキャッチャーへの小フライで送ることが出来ず。安達が3邪飛に倒れた後に板倉が2塁スチールに成功、しかし金井が左飛に倒れる。序盤横浜がチャンスを掴むが一本が出ない。相手のミスを生かせず、自らもミスを犯す、横浜にとっては悪い流れを自ら作る嫌な展開で中盤を迎えることに。広島新庄花田は2回に144㌔を計測。

中盤に入った4回広島新庄のトップ大可がチーム初ヒットをセンター前に放つ。2番繁光は送ることなく右飛に倒れ、続く平田は投ゴロでランナーが入れ替わる。4番花田は二ゴロに倒れ無得点。その裏横浜はこの試合初めて三者凡退に抑えられたうえに岸本が流れを相手に渡しかねない見逃し三振で攻撃を終えたことが気になった。BS朝日の解説者聖光学院の齋藤監督が膠着状態で気をつけることは四球とエラーと長打と解説されたが、いよいよゲームが動き出すことに…5回広島新庄は先頭藤川がセンター前ヒットで出塁。牽制を2つ挟んだ2球目、積極果敢に盗塁を仕掛ける。横浜バッテリーは気配を感じていたのかウエスト、しかし捕手立花が投球を取り損ね易々とセカンドへ。2死後、8番1年生の河野が4球続けたストレートをセンター前にはじき返し1点を先制する。揺れ動くゲームの流れを掴み、ミスを見逃さずに奪ったこの1点はかなり重く、横浜を苦しめると感じた。その裏2死から板倉がこの試合自身2本目のヒットを放つが、緒方が中途半端なスイングで三振に倒れる。6回広島新庄は三者凡退に、その裏横浜は先頭安達がレフトへのヒット、続く金井はショート強襲のヒットを放ち、無死1、2塁と逆転のチャンスを作る。ここで4番立花にはバント、しかし最後は強硬策に転じ二遊間を抜けるかに思えた痛烈な打球は放つ。が、セカンド大可が好捕し、痛恨の4-6-3のダブルプレーに。実はここに隠れたファインプレーがあった。セカンドの大可が投球と同時にポジショニングを1、2歩セカンドベース寄りに変えていた。続く宮田はあえなく遊飛に倒れ、絶好のチャンスを逸した。

終盤の7回、広島新庄は1死後に藤川がセンター前ヒットで出塁するが、続く瀬尾が1-6-3のダブルプレー。横浜は先頭岸本が四球を選んだところで100球を投げ終えた花田が降板、地方大会で33イニングを投げ与四死球3つの西井にスイッチ。玉城が送った1死2塁も増田、板倉が抑えられ無得点。8回、広島新庄は三者凡退、横浜は2死から1、2塁と塁上を賑わすも前打席同様にチャンスでファーストストラクを見逃した宮田が三振に倒れた。迎えた9回、ゲームが大きく動く。1つ目のポイントは横浜が8回を終え103球と好投の宮田に代え1年生杉山を起用したこと。広島新庄はトップ大可が一ゴロ、ファーストからのトスをカバーに入った杉山がこぼし出塁。記録はヒットだが横浜らしくないミス。初登板でミスも重なり、牽制する余裕もなく、2球目にスチールを許す。繁光は5球目を捉え、三遊間を破り無死1、3塁とチャンスを広げた。ここまで広島新庄のヒットは全てストレートを打っていたが、続く3番平田は横浜バッテリーが3球続けたスライダーを引っ掛けるも前進守備の一二塁間を抜け、待望の追加点を挙げる。ライトが3塁に送球する間にバッターランナーは2塁を陥れ、無死2、3塁と横浜を追い詰める。ここで状況に応じたバッティングが出来なかったことが2つ目のポイント、4番花田は2球目のスライダーを打って浅めの左飛となりタッチアップ出来ず。5番藤川は初球の高めのボール球に手を出し三飛に。6番瀬尾は前足を上げるタイミングからストレート狙いと思え、スライダーを引っ掛けて二ゴロに倒れ追加点を奪えず。ここを凌いだことで“潮目”が変わった。9回裏横浜は先頭岸本がストレートを打ってライト前ヒットで出塁。ここで広島新庄は3枚目のカード秋山を投入。しかし7番玉城がセンター右へ運び無死1、3塁と繋いで見せた。横浜は代打に延末を送るがあえなく三振。続く板倉は二飛に倒れ万事休すかと思われたトップ緒方の2球目、真ん中寄りに来た甘いストレートを一閃、レフトスタンドに放り込むスリーランで逆転サヨナラ勝ち。2死と追い込まれてもファーストストライクを振れる緒方を褒めるべき一打。

試合後の宇多村監督は「打った緒方選手を褒めるしかありません、9回の攻撃でもう1点取れていれば」と悔やまれた。打順が主軸に回っただけに強硬策をとったが、1点で十分な展開であったにも関わらず、大量点を欲しがるかのようにいずれも振りが大きかった。一方村田監督は「ここまで苦しい試合になるとは…緒方は切り替えができる選手、やってくれるのでは」と期待されていた。名門復活の第一歩を踏み出したが、完全復活にはまだ道険し、と思えた試合であった。

(可里 了)


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