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優しい巨人 GW690

これまでの文脈

最近のお気に入りのカメラはHasselbladSWCとNikonF3で、SWCの開放F値が4.5と少し暗いので、露出の問題さえなければSWC、暗い時や気軽な撮影はF3という風に使い分けていました。
SWCは非常に優れた描写能力を発揮してくれて、とてもいいカメラなのですがパノラマ写真(1:2~9:16くらい)にしようとすると、もともとが1:1のスクエアフォーマットなので、1:2で28mm x 56mmとなり135フィルムの横長バージョンくらいのフィルム領域しか使用できなくなってしまいます。それでも4つ切りプリントくらいならば特に問題はないのですが、なんとなくもったいない気がします。
中判でパノラマ写真となると、最も高画質な選択肢は4x5カメラ(大判カメラ)に612フォーマットのフィルムバックを取り付けることですが、大判カメラが個人的に苦手なのと結構いいお値段がするのでちょっと無理となり、次善の策として手元にあるGW690を試すことにしました。

GW690の印象【ハンドリング面】

GW690はRF式の69フォーマット中判フィルムカメラで、67より大きいフィルムカメラの選択肢としてはGシリーズは唯一なのではないかなと思います。マミヤプレスは大きく重いし、GX680は写りはよくても持ち運べる気がしません。
ハンドリングの観点では、RF方式を採用しているためミラーやプリズムがなく軽量です。PENTAX67に標準レンズで2.4kg、SWCで1.4kg、GW690で1.4kg程度だという数値を見ればかなり軽く作られていることがわかります。また、シャッターボタンがボディ全面と軍艦部の二か所に存在し、縦位置と横位置の両方でシャッターが切りやすくなっています。
二重像に関しても、ライカほどの見やすさは無いですが、使用するには十分だと思います。近景のポートレートなどに使用する場合には、ピントが結構浅いのでストロボを併用するとかした方がいい写真にはしやすいです。
もともとは集合写真で大判カメラを持ち出すのが大変だったところをGシリーズが置き換わっていったことから、周辺まで優れた描写性能を有しつつ軽量なカメラで、開放F値も3.5と比較的扱いやすい良いカメラなのではないかなと思いました。


開放F値3.5で、二か所にシャッターボタンを配置。

GW690の印象【描写面】

FP4+をSilversalt現像液で現像しました。作例をご覧ください。絞りは3.5~5.6で撮影しています。

ボケはきれいで、解像面はかなりトリミングしても耐えられそうな解像感です。4カット目は手の部分を拡大してもかなり解像しているので、その描写性能の高さには驚きました。その割に柔らかい描写なのでポートレートにも良さそうです。
一方で3カット目の時計にはピントは来ていますが、カメラ部分はぼけてしまっています。結構ピントにシビアで、浅いピント面であることがわかります。近景~中距離においては絞り込んだ方が良さそうです。そうなってくると気軽なハンドリングから少し遠ざかってしまいますが、その辺はいい加減さをどの程度受け入れられる撮影かを毎回吟味する必要があります。
多少のピンボケは許容してもボケ感が上質できれいなので4カット目のようにそれなりにまとまった雰囲気に感じられそうです。一方で下の写真はf8.0で撮影しましたが、しっかり絞り込んで撮影するとかっちりとした良い写真になりそうです。

2枚目は1枚目からスクエアにトリミングしたものです。当然ですが、66フォーマットと同じになるので、全然画質に悪影響は感じられません。69で撮っておいて66にトリミングしても周辺まで優れた描写能力をもっているので違和感はあまりないです。

GW690の感想

中判フィルム一本で8カットしか撮れませんが、それ以外はスナップに使っても良いし、がっつり風景に使ってもいいし、何かと優秀なカメラであるように思います。一方で近距離での撮影ではピントに対してかなりシビアな要求になるので、自分なりに納得のいくファインダーの個体を探してみた方がいいのかなと思います。
基本性能の優れたレンズに6x9の大きなフォーマットという組み合わせで、ボケを効かせた柔らかい描写から、絞り込んだきっちりした写真まで多様な要求にこたえてくれる懐の大きいカメラのように思います。8カットしか撮れませんが、そのうちの半分でもいい写真になっていたら十分だと思える人はカジュアルに使用しても良さそうです。
初期の問題であるパノラマ撮影に関しては少し画角が狭いので、難しいようですが、今回をきっかけにしてGW690の良さに気づけたのでよかったのではないかなと思いました。

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