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爪切り

私の仕事の一つに「爪切り」があります。最近の私は、老眼が進んでいます。自分の爪を切るときも苦労します。特に足の爪はピントが合わずたいへんです。そんな私にとって、人の爪を切る支援は、かなり難易度の高い仕事です。

以前、爪切りは医療行為にあたるのか、という議論がありました。それについては、2005年(平成17年)に厚生労働省が提示した「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」において、爪に異常がなく本人の容体が安定している場合に限り医療行為ではないと書かれています。

爪切りは、医師法では医療行為です。ただし規制対象外で介護支援者に認められています。たしかに爪切りは危険な支援です。間違えて利用者を傷つけ、そこから化膿したら一大事です。しかし看護師が常駐しないグループホームでは、誰かががやらねばならず以前から私たち支援者がおこなってきました。

自閉的な傾向が強い人

私は、障がいのある人が利用する事業所を経営しています。今は理事長です。しかし、昔は現場の支援者でした。また、今でも直施支援にあたることがあります。

利用者の中には、自閉的な傾向の強い人がいます。一般的に自閉的な傾向が強い人は、いろいろな不安を抱えていたり、いろいろな物に過敏に反応してしまうことがあります。そのため、静かな場所にこもったり、先が見える同じ行動が好きだったり、独特のこだわりを持ち自分の世界に没頭したりします。それらはすべて安心して暮らすための工夫です。

人に対しても同じです。警戒心が強くあります。知らない人がかかわりを持とうとすると、叩いてきたり泣き出したりすることがあります。かかわり方は、いつも同じ人がそばにいてこの人は大丈夫と、思ってもらい少しづつ集団や他の人との関係を作っていきます。

人にさわられるのが苦手な人の爪を切る

警戒心の強い利用者の爪を切るのは、ご本人も支援者も緊張します。それでなくても人に対して警戒心が強くあります。そこに爪切りを持って支援者がせまっていくので、利用者は体に力を入れて身構えて丸くなります。そこをじっくりじっくり解きほぐし爪を切ります。しかし中には、逃げ回る人もいます。

そういう利用者の場合、ある程度、長い付き合いの支援者ではなければ爪を切らせてくれません。そこで私の出番です。

今回の利用者は、人にさわられるが苦手な利用者でした。爪を切るのも二日がかりでした。一日目は足の爪を切り、二日目の今日は手の爪を切りました。たかだか爪を切るだけです。しかし、終わったら利用者も私も汗びっしょりになっていました。まるでスポーツのあとでした。

人にさわられるのが苦手な利用者にとっては、とても苦痛なことだったと思います。辛かったですね、ごめんなさい。


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