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ライフスタイルを支援に活かす

入職して2年目の支援者を対象にしたオンライン研修を実施しました。今回の研修の中心は、ライフスタイルです。自分のライフスタイルを知り、自分の価値観を確認し、他者のライフスタイルを予測することで、利用者の意思を尊重した支援ができるようになることを目的としました。

ライフスタイルを知るためには、アドラー心理学の技法の一つ「ライフスタイル診断」を用います。今回はワークの時間を設けて、ライフスタイル診断を行いました。このライフスタイル診断は、早稲田大学のエクステンションセンター中野校で開催された向後千春先生の「アドラー心理学講座」で学んだ技法です。

指導でなく支援を

私は、障がいのある人が利用する事業所を経営しています。一般的に「支援」と呼ばれることが私たちの仕事です。「支援」とは、利用者の意思を尊重して、利用者が思い描く生活を実現するためのお手伝いです。しかし、以前は違いました。私がこの仕事に就いたころは「支援」ではなく「指導」でした。

「指導」の時代は、利用者の思い描く生活よりも支援者の思い描く生活像が優先されました。当時は、自立のためにこうあるべきだ、そういうかかわりでした。しかし今は違います。利用者がどういう生活をおくりたいか、それが尊重されなければいけません。研修では、利用者の望む生活を実現するためにライフスタイルの予測をしました。

ライフスタイルは、自分にとっての最優先目標です。自分がどういう生活をしたら幸せに暮らせるか、そこがライフスタイルに反映されます。

研修を進めていくと、研修に参加している支援者の中に、担当する利用者の顔が浮かび、ぼんやりとその人のライフスタイルが見えてきました。

ライフスタイルを知って支援を見直す

私は、ある利用者のライフスタイルを予測して支援方針を見直したことがあります。

その利用者の名前を仮に花子さんとします。花子さんはグループホームで生活をしています。なにもすることがない時間は、ホームのリビングに座って、他の入居者や支援者の動きを見て、言葉をかけます。社交的な人です。

その花子さんに対して、私たち支援者は、もう少し自分の部屋ですごすことも必要ではないかはないかと思いました。そこで、ガイドヘルパーとの買物の際、花子さんに好きなDVDを買うことを勧めました。ご本人も喜んでDVDの映画を買って来ました。買って来ると、パッケージを持って、みんなに見せていました。しかし、自分の部屋で映画を観ることはありませんでした。支援者が、ディスクをセットして再生をしても、支援者が花子さんの部屋を離れると、花子さんも支援者にくっついて部屋を出てきました。

次に、私たちは、花子さんが好きなアーティストのライブDVDを勧めました。花子さんは、DVDを買って来ると、みんなに嬉しそうにパッケージを見せました。しかし、部屋でライブDVDを観ることはありませでした。

私たち支援者は、他の入居者が不穏になったとき、花子さんが自分の部屋ですごせると良いと思っていました。しかし、いくら支援者ががんばっても花子さんは自分の部屋で余暇をすごすことはありませでした。

ライフスタイルBタイプ

アドラー心理学の技法の一つ、ライフスタイル診断では「Bタイプ」というのがあります。「B」は「baby」の「B」です。「Bタイプ」はbabyのようにみんなに愛されることが最優先目標です。

花子さんの日常を見ていると、常に誰かに声をかけ、誰かから声をかけてもらっているときに幸せそうな表情をしていることがわかりました。また、支援者に対する気遣いも忘れない人です。ライフスタイル診断のBタイプにある項目に当てはまることがたくさんありました。

私たち支援者は、好きなDVDを観る習慣ができると、日々の生活が充実すると考えました。しかし、花子さんにとってみれば、リビングから外されることは、仲間外れにされたと思えたのだと思います。辛い思いをさせてしまいました。そこに気づいて花子さんの支援計画を見直しました。

このようなかたちで、利用者のライフスタイルを知り、それを支援に活かしていきます。

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