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異業種から来た人のものさしで見る

障害福祉サービスの従事者には、異業種から転職をして来た人がいっぱいいます。中には働きながら資格を取ろうとしている人もいます。その異業種から転職してきた人は、利用者がもつ障害特有の行動が理解できずに悩むことがあります。また、そのときに投げかけられる質問が専門職に気づきを与えてくれます。

私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。今は、理事長業務が主な仕事です。しかし、以前は、直接支援をする支援者でした。そのころの話です。

ある支援者が、こだわりがたくさんある利用者の支援をしていました。その利用者は、扉が開いている、置かれている物が曲がっている、カバンのチャックが開いているなど、決められた型からはずれることを絶対に許すことができない人でした。それらを型からはずれたことを正せないと、大きな声を出したり自分のことを叩いてしまうことがありました。

こだわりを阻止したために…

ある日、支援者とその利用者が外出をした際、その外出先で大きなハプニング起きました。今から20年ぐらい前のことで、トイレの男性用便器が進化を始めたころです。そのころ男性用の便器にセンサーが付き、男性が便器の前から離れると自動的に水が流れるというシステムが普及し始めました。それが大きな禍(わざわい)になりました。

その利用者がお手洗いを済ませ、便器の前から離れると自動で水が流れて便器の洗浄を始めました。するとその利用者は、水の流れを確認するために便器の前に戻ってきました。水が止まると利用者は納得をして便器の前を離れました。するとまた水が流れ始めました。利用者は、戻って来て便器の前に立ちました。その繰り返しです。そのとき支援者は、しびれを切らして利用者を無理やりトイレから連れ出してしまいました。そのあと、利用者は大声をあげて抵抗し大騒ぎになってしまいました。

急がば回れ

障害の特性を知らない支援者は「なんでそんのことを気にするの?」「それぐらい我慢しなさい」そんなふうに思います。しかし、そこが気になる人にとっては一大事です。それを見逃すことができません。自分とは違う行動すべてを特異な行動だと思ってしまうと解決にいたりません。

トイレの水にこだわる人の場合、何回か繰り返しながらセンサーにギリギリ引っかからない立ち位置を見つけます。そこに上手に誘導をしていきます。そのやりとりが煩わしいと思ってしまうと支援はできません。たぶん、諺の「急がば回れ」だと思います。

異業種から来た人のものさしで見る

異業種から来た人にとっては驚く行動がたくさんあります。しかし、専門職は利用者の行動や反応に慣れ過ぎてしまい対応が遅れることがあります。利用者の行動が当たり前すぎて、周囲の人の目を感じなくなります。利用者が大きな声を出していても気にしません。

障害福祉サービス事業において異業種からの転職者の意見は、ひとつのものさしです。専門職意識が強い人はより専門的なものさしで見ようとします。そのため、一般の人が持つものさしと目盛りがずれます。そこから誤解が生まれます。

支援者会議で障害特有の行動を説明をしながら、慣れ過ぎている自分に気づき反省します。私たち専門職は、一般の人が持つものさしを借りて測る習慣が必要です。

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