【ホラー小説】グランドオーナリ『第3話』グループ分け
【あらすじ】
【注意事項】
※ある程度の残酷描写は予定しておりますが、過度な残虐描写、性描写などはありません。
※動物は今のところ出番があるか未定ですが、動物が酷い目に合う描写は断固としてありません。
※この物語内に登場する人物や団体名、そして奥那璃村という村などは全てフィクションです。
【エピソード一覧】
『プロローグ』バスの中で
『第1話』応募要項
『第2話』ルール
『第3話』グループ分け
『第4話』自己紹介
『第5話』コーヒー
【前回のエピソード】
【本編『第3話』グループ分け】
「あれ、もしかして私達、同じグループじゃないですか!?」
え?
私は先程のソーダおじさんの一言が頭にこびりついてしまい、しばらくボーっとしてしまっていたようだ。
相変わらず爽やかな彼女は、ニコニコしながら私にプリントを見せてくる。
最初に配られたプリントの裏面で、彼女は右下にある赤色の四角いマークを指差していた。
「ほらここ!同じ色の人同士がグループになるって、あのおじさんがさっき言ってましたよ?」
不安からなのか、もともと私の顔が不機嫌そうからなのか、彼女は何か心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「すいません、ちょっとボーッとしてて…あ、ほんとだ、私も赤色だ」
徐々に実感が湧いてくる。
私は彼女と同じグループになれたことが分かり、少しだけ安心した。
「それでは皆様!スタッフの指示に従って、同じ色の人同士で各自集まってくださいねー!」
30人の集団はゾロゾロと動き出し、6つのグループに分かれた。
その後、胸に色のついたバッジを付けたスタッフが、それぞれのグループの前に立つ。
「はい!良い感じですねぇ!そうしたら今後は各グループの専属スタッフにお任せしますので、私はこれにてドロンです!皆様、充実した7日間をお過ごし下さいね!」
早口でそう言い残し、ソーダおじさんはそそくさと事務所のような建物の中へと消えていった。
私達の前に立っていたのは、気の強そうな見た目の40代くらいの女性で、胸には赤いバッジが付いている。
どことなく、私が嫌いだった中学時代の担任に似ていた。
「自己紹介とかはコテージに着いてからゆっくりやりますから、さっさと行きましょう」
素っ気ない態度も含めてそっくりであるが、それより私は一緒になった他の人達が気になっていた。
みんなでコテージへと向かう中、私は周囲に目を向けてみる。
やっぱり、先程質問していた2人だ。
起床時間などについて質問していた声の小さかった女性、そして私を不安にさせた原因の質問をしたガタイの良い男性で、どちらも私と同じ20代だろう。
もう1人は、白髪の男性、50代くらいだろうか、細身で背筋も伸びていて、スーツが似合いそうな風貌だ。
そして彼女。
スキップでもしそうなくらいニコニコしながら周りの山々を見ている。
コテージの前まで着くと、真っ赤な玄関扉が見えた。
ちょっとギョッとする色味で、どこもこんな色なんだろうかと、ふと隣のコテージを見てみる。
隣は黄色の玄関扉で、先導してるスタッフの胸には黄色のバッジ。
どうやら自分達の色と、各コテージの玄関扉の色が統一されているようだ。
こうやって目の前まで来てみると、流石にちょっとワクワクしてくる自分がいて、少しずつだが不安が小さくなってきている。
「すっげぇなこれ!写真で見るよりすげぇ!」
「確かに、これは是非ともシャッターを切りたい瞬間ですが、今回は頭の中にあるシャッターで我慢するしかありませんね」
男性陣2人が興奮した様子で前に出ていく。
白髪の男性はカメラが趣味なんだろうか、詩的な言い回しが素敵だった。
「いいがらいいがら、時間押してますから!早く入りますよ」
スタッフが手招きしながら私達を中へと入れ始める。
中に入ると、正面に階段、そして右手にリビングダイニングが広がっていた。
左手には扉が2つ、トイレかバスルームだろうか。
「2階上がってくと、寝室がありますので、まずは皆さん寝室へ行って着替えをお願いします。ロッカーに入ってますから、終わったら降りてきて下さい」
スタッフを置いて2階に上がると、正面にはちょっとしたスペースがあり、消化器などが置かれていた。
右手には廊下が見え、手前から順に扉が3つ、廊下を挟んだ向かいに2つ、合わせて5つの扉がある。
「自分はどこでも良いのですが、角部屋が良いとか、皆さん何かありますか?」
私含めみんなどこの部屋に入ろうかモジモジしていたら、白髪の男性が気を利かせて聞いてきた。
「あー、俺、イビキうるさいってよく言われるんで、そうだなぁ…手前の角部屋がいいかな」
「それでは、自分は彼の隣の部屋にしますよ。自分、どんな環境でもすぐ眠れますので」
男性陣の部屋割りがすんなり決まり、続いて声の小さい女性が、私神経質なのでと、ガタイの良い男性から一番遠い白髪の男性の隣の部屋に。
残ったのは廊下を挟んだ向かいの2つの部屋。
「私、角部屋とか全然気にしないので、どうぞ」
最初から残った部屋でいいやと思っていたので、彼女に角部屋を譲ろうと思った。
「え、そんなそんな、大丈夫ですよ!私も気にしないですよ!…っていうかこれ、どっちも角部屋みたいなもんですよね?笑」
言われてみれば、こちら側には部屋が2つしかないから、どっちも角部屋と言われればそうだ。
「あ、でも、そっちの部屋の方がちょっと広いかも?」
彼女に指摘されるまで気が付かなかったが、確かに少し違和感がある。
私の目の前にある部屋は、白髪の男性の部屋のちょうど真向かい。
各部屋は等間隔に配置されているようだが、目の前の部屋の左手、つまり、神経質だと言っていた女性の真向かいにも壁が続いているので、目の前にある部屋は、他の部屋よりちょうど1部屋分広いのだろうか。
「じゃあ、手っ取り早く、このままお互いの目の前にある部屋にするってことでどうです?」
「あ、はい。分りました。そうしましょう」
早く着替えて下に行かなければならないのに、こんな部屋割りで時間を使う分けにはいかないなと、私は彼女の提案を受け入れた。
でも正直なところ、修学旅行の時のように、どっちのベッドにする?どこで寝る?というようなワチャワチャ気分で、彼女とジャンケンとかしてみたかった気持ちもある。
ついさっきまで不安でボーっとしていたのに、何浮かれてるんだ私は。
「そっちの部屋、どんな感じだったか教えてくださいね」
コソコソとした声量で、彼女は私にそう言った。
私は少し照れくさくなり、軽く頷いてすぐに部屋に入った。
部屋に入ると、写真で見てはいたが、やはりそのシンプルな綺麗さに驚いた。
ベッド、サイドテーブル、そして縦長のロッカーといった最低限の家具しかないが、どれも木製でスタイリッシュで私好みだ。
窓からは先程まで私達が集まっていた広場が見えた。
まずは言われた通りロッカーを開けてみる。
そこにはいくつか引き出しがあり、上から順に引いていくと、半袖短パン、長袖長ズボン、そしてパジャマのような肌触りの良い長袖長ズボン、それぞれSMLとサイズ毎に分けて畳まれていた。
下の引き出しには、下着が男性用と女性用で同じように各サイズ用意されている。
服も下着も全て灰色で統一されていた。
私はバスケをすることも考えて、半袖短パンに着替えた。
コンコン!
「お部屋どーですか?」
一瞬ビクついたが、彼女の声が聞こえたのですぐに扉を開ける。
「あれ、こっちとあんま変わらないですね。家具の配置も同じみたいだし…」
彼女に続いて、着替え終わった残りの3人も部屋から出てきた。
「どーしたんすか?」
「ちょっと君、扉が開いているからといって、勝手に女性の部屋を覗いてはいけないよ」
白髪の男性は、ズカズカと近づいてきたガタイの良い男性をそう言って制止する。
「こっちの部屋のほうが広いんじゃないかなぁと思ったんですけど…」
彼女はそう言って私の部屋の隣を指差す。
「確かに…少々気になりますね」
白髪の男性は、顎を手で摩りながら考え事をしているようで、そのまま廊下の突き当たりにある小窓へと歩いていった。
「ん〜窓を開けて外を覗いてみましたが、しっかり壁がありますし、ここだけ部屋が無いというのは妙ですね」
「あの…なんか、扉だけピッと取っちゃったみたいですよね…あ、すいません」
相変わらずの小さい声で怖いこと言わないでよと思ったが、確かにそうとしか思えない。
みんながしばらく考え込んでいると、白髪の男性がコンコンと壁に向かってノックをした。
「ん〜何か空間がありそうな気もしますが、流石にわかりませんね」
顎に手を当てたまま、白髪の男性は続けた。
「当初はここも部屋にする予定だったのでしょうが、何かの理由で部屋として使えなくなったとか。自分はあまり詳しくありませんが、消防法とか建築関係の問題が見つかって…とか、そのような可能性もあるかもしれません」
「おじさん探偵みたいっすね!笑」
先程白髪の男性に制止されたのが気に入らなかったのか、ガタイの良い男性は少し嫌味っぽく言った。
「すみませんね、ミステリーとか好きなもので、つい」
「まぁまぁ!とにかく下に降りましょうよ!あのスタッフさんきっと怒ってますよ笑」
ちょっとピリついた空気になりかけていたが、彼女が颯爽と間に入った。
「そうですね、あのスタッフさんに聞けば、何か教えてくれるかもしれませんし」
そうして私達は、彼女を先頭にそのまま階段に向かって進もうとしたのだが…
コトン
私の後ろで、何かが落ちたような音が聞こえた。
みんなの足が止まる。
「誰か何か落としましたか?」
白髪の男性がみんなの様子を伺うが、私含め全員首を振る。
その音は私の部屋から聞こえたような気がする。
いや、それとも、あの空間から…
私が後ろを振り返り、あの空間の方を見ると、みんなも同じようにあの空間に視線を向ける。
「ま、まさかねぇ…」
ガタイの良い男性が一番ビビっている。
「いや、流石に下の階で何か落ちた音じゃないでしょうか…」
白髪の男性は冷静にそう言うが、表情までは冷静でいられないようだ。
次第に私達全員の意識が、あの空間に集中していくような、そんな空気感になっていた。
ドタドタドタドタ!!!!
私達は一瞬で肩を寄せ合い、あの空間から目を離さなかった。
いや、離せなかったんだと思う。
しかし、この大きな音の主はすぐに判明した。
「皆さんいつまで着替えてんの!!時間押してるって言ったの聞こえなかったの!?」
緊張の糸が切れたのか、私達は互いに顔を見合わせて少し笑った。
「何がおかしいの!?早く自己紹介済ませて、ご飯とか温泉とか、時間決まってるんだから、早く行きますよ!」
みんな口々に、ビックリしたとか、脅かさないでくださいよ〜などと笑いながら階段を降りていく。
大きな音は、階段を駆け上がるスタッフの足音。
物が落ちたような音も、下の階で何か落ちたんだろう。
私達はあの空間に気を取られすぎていて、勘違いしたんだ。
そう思いたかった。
でも、あの時私は…あの空間に一番近かった。
確かに聞こえた…気がする。
スタッフの足音と同時に、もう一つ…あの大きな足音にかき消されて、鮮明には聞き取れなかったが、確かにあの空間から。
あれは、管楽器のような、何か空気が振動させられたような、少し低い音。
吹奏楽をやっていたのは小学校と中学校の時期だから、あまり自信はないが。
風が通ったとか、そんな音かもしれない…でも…
私は…確かに"何か"を感じた。
「あのー!大丈夫ですかー!?今からリビングでみんなの自己紹介するみたいですよー!」
階段下から彼女の声がする。
さっき着替えたばかりなのに、私の背中はもう汗でびっしょりだった。
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