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死亡フラグと彼女 [ショートストーリー]

僕には同棲して1年の彼女、ユミがいる。
しかし、最近ユミの様子がおかしい。

今日の朝の出来事である。
いつも通り僕はユミの20分前に家を出る。

「じゃあ行ってくるね」

 僕はユミに告げる。

「アキラ待って」

「どうした?」

「私...今、幸せだよ」


「う、うん、どうした!?急に」


「ごめん、何もないの。ただ、アキラは...いつまでもそのままのアキラでいてね」

明らかにユミは悲しみのある表情を作っている。

「え、ユミまた..」


「早く行って!」


そうやってユミは僕を無理矢理外に出し、勢いよく玄関のドア閉めた。閉める時に「さよなら」という一言を告げて。

「おい、ユミ!」

僕が叫ぶとドアの向こうからかすかにユミのすすり泣く声が聞こえた。

僕はわかっている。これは嘘泣きだ。
僕は軽くため息をして「じゃあ行ってくるね」とドアに向かって告げた。

彼女からの返事は無かった。


その夜、僕は定時で仕事をあがり、家に帰り着く。

ドアを開けるとカレーのいい匂いがする。


「ただいまぁ」

僕がそう言うとリビングの方からユミが顔を出し、「おかえり〜!」と陽気に返事をする。

そう、朝のことなんてまるで無かったかのように。

このような生活が1カ月前から続いている。

僕の彼女、ユミは死亡フラグを立てる事にハマっているのだ。

そして夕食の際、「今日の朝のフラグどうだった?」と聞いてくる。

正直もう相手をするのに疲れたのだが、彼女はやけに楽しそうなので「うん、臨場感があって良かったよ」などと肯定的な返事をする。

「だよね!自信があったんだ〜」

嬉しそうに話す彼女の笑顔を見ると今日1日の仕事の疲れがとれる。

朝イチで疲れて、夜に疲れが吹っ飛ぶ。

結局はプラマイゼロだし、僕も彼女の笑顔が見れるなら彼女が飽きるまで死亡フラグに付き合おう。



「あれ、コンコンって落としなかった?」

また始まった。

「いや、してないよ」

「え〜したよ〜、全く誰よ、こんな夜遅くに」


そう言うと彼女は玄関に向かって行った。

しばらくして僕はカレーを一口食べ、こう呟いた。


「ユ、ユミ、どうした?」




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