2022年の好きだったやつ(他ジャンル編)

前回のHIPHOP編に続いて,今回は他のジャンルから何枚か紹介できればと思います。

まずはやっぱりコレでしょう。BIG CROWN / BARRIO GOLD RECORDSからリリースされたBobby Oroza "Get on the Otherside"

フィンランド出身のチカーノ・ソウル・シンガーが、地元のレーベルTIMMIONのスタジオ・バンドCold Diamond  & Minkと共に作り上げた2ndアルバムは、美しく甘美な歌声と、それに寄り添うように溶け込む演奏でヴィンテージでありつつも決して古臭くない素晴らしい名盤です。歌詞も愛と強さに溢れていて、是非対訳とインタビューが載ったブックレットが付いているフィジカルを手に取って欲しいです。また、先日来日公演を行い、その前哨戦的に渋谷のタワレコで行われたトークショーでも本人が言っていたのですが、彼のルーツにあるものは『アンダーグラウンド』ということは非常に重要だと思います。コロナ禍になって家族を養うために肉体労働をしていたというエピソードもあって、ある種ハードコアな人であることが感じられます。そこが、普通のヴィンテージ・ソウルとは違って、人々を惹きつけるのかなとも思います。11/3に代官山の晴れたら空に豆まいてで行われたライブも素晴らしかったです。
余談ですが、同じくCold Diamond  & Minkがサポートしたフィンランドのヴィンテージ・ソウル・シンガーのCarlton Jumel Smithのアルバムもめちゃくちゃ良かったです(2019年作ですが)。

Bobby Orozaも1stアルバムでカバーしていたチカーノ・ソウルのレジェンド、Sunny & The Sunliners "Mr. Brown Eyed Soul Vol.2"も同じくBIG CROWN / BARRIO GOLD RECORDSからリリースされました。

60~70年代の英語詞曲のコンピレーション盤の今作はテキサスという土地も関係しているのかなと思わせる絶妙ないなたさとスウィートな響き、そして漂うサイケデリアで極上の1枚です。古い音楽ばっかり聴いてたらそれはそれで問題だと思うんですけど、自分の好きなアーティストのルーツであるとか、影響を受けたものに触れるのって凄く大事だと思うんですよね。Bobby Orozaが心惹かれて、カバーもしたチカーノ・ソウルの名盤を是非。そして、サニー・オス‪─‬ナも1曲参加したコンピレーションEast Side San Jose "BACK IN THE DAY IN ESSJ"は、ソウル、ファンク、クンビア、更にはメキシコの伝統音楽ソン・ハローチョも収録されていて、チカーノ・カルチャーに触れることができるオススメ作品です。

関連作だと、同じくBIG CROWNから出たLady Wray (元々Nicole Wrayとして活動)の"Piece of Me"Surprise Chef "Education & Recreation"なんかも良かったです。

そして、チカーノ・ソウル関連作として最後に紹介するのはPENROSE(ロゴが最高にイケてる)からリリースされた西海岸のバンドThee Sacred Souls "Thee Sacred Souls"

ジャケがフロイドの1stっぽくて良いですね〜。そんなことはさておき、こちらもまた現行のチカーノ・ソウルを奏でるバンドで素晴らしい作品になっています。個人的には3曲目の"Easier Said Than Done"がもうイントロのギターからたまらなくて大好きな曲です。
これまで偉そうに書いてきましたが、MUSIC CAMP Inc. / BARRIO GOLD RECORDSの宮田信さんがいなかったらこの辺の音楽に触れることもなかったと思います。是非インタビュー読んでみてください(前半 / 後半)。

そして、ガラッと変わって今度はHardcore Punkです。待ちに待った最高の1枚。and more "proof of existence"です。

かつてはestrella 20/20、idea of a joke、younGSoundsとしても活動していたモリカワアツシが静岡で結成したHardcore Punkバンドの1stアルバムです(LPは完売っぽい)。自分はこのアルバムを聴いて心の底から感動しました。身体の芯から熱く燃えるような純然たるHardcore Punkに震えました。社会への怒りに満ちた歌詞も本当に素晴らしくて、『ハードコア』という思想や姿勢、生き様をまざまざと見せつけられた感じがしました。以前通販した時に梱包の段ボールに書かれていた「MAKE NOISE NOT WAR!」という言葉、痺れたな〜。何年か前にMETEO NIGHTで見たライブも本当にカッコよかったです。また見たいですね。

そして今度はこちら。Compuma "A View"

これまでに数々のMIX CDや竹久圏との共作ではアルバムをリリースしていましたが、DJとしての活動も活発なCompumaの単独名義としては初めてのアルバムです。北九州の演劇グループ『ブルーエゴナク』からの依頼を受けて2021年秋公演『眺め』に向けて制作した楽曲を再構築したものです。正直なところ、今の自分にはこのアルバムの素晴らしさを伝えるだけの語彙が無いのですが、"A View"というタイトルに相応しく、聴く者の脳内に様々な景色を構築して遠くに連れて行ってくれるような素敵な音楽です。想像力が刺激されて素晴らしい音楽体験ができると思います。配信は無くてCDのみのリリースになってるので是非手に取ってみてください。ele-kingのインタビューも凄く興味深い内容でした。

最後に、これは再発作品なんですけど、是非紹介したかったので。日本発のノイズバンド、非常階段のメンバーJOJO広重が設立したアルケミーレコードの再発作品からSlap Happy Humphrey "Slap Happy Humphrey"

JOJO広重、サバート・ブレイズの藤原弘昭、エンジェリン・ヘヴィ・シロップの板倉ミネコから成るユニットの1994年作。"ぼくたちの失敗"でお馴染みの森田童子の曲のカバーで全編構成された作品で、言ってみれば『森田童子 meets ノイズミュージック』です。ただ、これが本当に素晴らしい。元々、森田童子の曲が持つ暗さとやるせなさにノイズが交わることで、その魅力が何倍にも増幅されて、サイケデリアを纏った様は美しさすら感じます。

同じくアルケミーの再発でリリースされて、初めて聴いて衝撃を受けたのがこちら。ほぶらきん "GREATEST HITS"

1979年に滋賀県で結成されたバンドの音源をまとめた51曲(!)のコンプリート盤です。それにしても、これは何なんでしょう…本当に謎のバンドです。内容も1分もない曲がどんどん繰り出されたかと思ったら、語りみたいな曲が続いたり(ゴースンのところ)。でも、どこかキャッチーで、一方ではめちゃくちゃトガってる感じもする。本当のアンダーグラウンド、本当のパンクってこういうことなのかもなと思わされました。

こちらも同じくアルケミーの再発でリリースされた、伝説のHardcore PunkバンドS.O.B.と非常階段が組んだライブアルバム、SOB階段 "Noise, Violence & Destroy"も素晴らしいです。

多くは語りませんがとにかく燃えます。爆音で聴いてください。最高です。

あと、自分は乃木坂46が大好きなんですけど、今年の乃木坂の曲で一番良かったのは"絶望の一秒前"でした。

多分今年出た乃木坂の曲で一番聴きました。池田瑛紗さんが好きです。てれ〜

あと、大して本数見られてないのでサラッとにしときますが、今年好きだった映画も書いておきます。

・クリント・イーストウッド "クライ・マッチョ"
・ブランドン・クローネンバーグ "ポゼッサー"
・ジュリア・デュクルノー "TITANE / チタン"
・ポール・トーマス・アンダーソン "リコリス・ピザ"
・ジョーダン・ピール "NOPE / ノープ"

来年はもう少し映画観たいです。音楽もいっぱい聴きたいです。また何か書きます。では、良いお年を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?