見出し画像

昭和の歌謡曲について勝手に講釈

少し前のことだが、近くのイベント広場でビアフェスとやらがあり、暇だったのでふらふら出かけると、ステージパフォーマンスにちょうど若い女性の2人組が登場したところだった。素人なのかセミプロなのかはわからない。何を歌うのかと思ったらザ・ピーナッツのモスラ、ピンクレディのUFO、あみんの待つわと来たので少々驚いた。しかもなかなか上手である。ほぉ、今どきの二十代が昭和の歌謡曲をカバーするんだ。昭和34(1959)年デビューのザ・ピーナッツはさすがに私もリアルタイムで見た記憶はないが、ピンクレディやあみんならドンピシャの世代である。そこそこ年齢層高めな観客も、ビールを片手にそれなりに盛り上がっていた。

思えば昭和の時代、歌とは原則一人で歌うもので、複数でも2人組か3人組がせいぜいだった(グループサウンズというのがあったが、それはいわゆるバンドであってボーカルは一人だったはず)。それがなんだか最近は、やたら大人数で一緒に歌って踊るのが流行っているようだ。昨年末の紅白歌合戦は久しぶりに全編を「ながら見」したが、なんだって男も女も一組の人数が多い。一目では数えられないほど多い。果たして楽屋の数は足りるのだろうか?などと余計な心配をしてしまった。

私は大学4年の頃、つまり昭和61(1986)年頃、NHKの外信部というところでアルバイトをしていて、大晦日の深夜、紅白が終わった歌手たちが集う食堂の様子をチラッと見に行ったことがある。本当にチラ見だったので、石川さゆりってすごく小柄なんだなと思った以外は記憶にないが、相当な数の人がいたことは確かだ。基本一人で歌う時代でああだったのだから、今の人数なら入りきらないんじゃなかろうか。もっともNHKの中も当時とは変わってるだろうし、そもそも今どきは食堂で打ち上げなんてやらないのかもしれない。いずれにせよ、これも余計な心配ではある。

テレビとラジオとレコードしかなかった昭和の歌謡曲は、ビジュアルもさることながらまずは歌い手の声と歌詞を楽しむものだったと思う。でも、今のように8人も10人もみんな一緒にユニゾンで歌ったら声の判別はできないし、字幕がなければ歌詞だってほとんど聞き取り不能だ。そういう音楽はもはや、耳というより目で楽しむものなのだろう。

ビアフェスの2人組の声はきれいにハモって、歌詞もよく聞こえたし、ほろ酔いの耳を思いがけず楽しませてくれた。それでこんな勝手な”講釈”を垂れてみる気になった。中年あるあるですね、はい。

数日前のベランダから、19時近くの西の空。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?