ツナマヨおにぎり

一粒の戯言に、お付き合い下さい。

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最近の記事

霧と夜

霧で隣の街灯が滲む夜。 外の空気が風となって部屋に入る。 霧が部屋に溶けだして消えて。 中が少し外になり、窓を閉じて中になった。

    • 君に宛てた日記

      中学を卒業して、寮のある学校に入学した。 17歳と19歳の時、同じ部屋で過ごした友達から着信があった。 iPhoneから「休学する」と聞こえてきた。 彼は頭が良くなるまで勉強できて、バスケが上手くなるまで練習できるいい奴だ。 国公立の大学院に通っていて、インスタは楽しそうだった。 「やりたい事が分からなくなった」 彼女との結婚、車のローン、明日の仕事、今日の晩御飯。 そんな時期もあったなと思った僕が悔しかった。 そして、何を言っていいのか分からなかった。 「頑張れ」も「やめと

      • 明日っていつから明日だろう。

        起きて、昨日蒸したサツマイモを食べた。 控えめな甘さとねっとりとした食感がクセになる。 気付いた時には食べ過ぎていて、しっかり気付かないフリをした。 朝降らなかった雨が、夕方になって降り出した。 自転車での初出勤で雨だ。これでいつでも私は自転車に乗れる。 サドルが濡れている。 立ってペダルを踏む。 体を揺らし、水溜まりを避ける。 さっき追い抜かれた自動車を追い抜き返した。 赤から青。目の前に車。 悔しさが雨に溶け出す前に家に着いた。 夕飯は簡単に作って、簡単だから普通だっ

        • テヘランの死神

          八戸に引っ越してもう1週間が経とうとしている。 ついこの前の生活より30分早く起き、朝ごはんを作り、食べる。この朝にも少しずつ体が馴染んできた。 朝ごはんは作りすぎた豚汁と、鶏胸肉の炒め物。 簡単な食べ物を作れるのがこんなにも幸せだとは思わなかった。 自分で作った料理が胃袋に入る。体の一部になる。 料理をしていた時間が、自分を構成していく。 もっと緑を増やして、みどり人間になれたらいいな、と思ってみる。道のりはだいぶ長い。 仕事では外に出たのでラーメンを食べた。 煮干し醤油

          ぴったり同じ2つの花火。水平線に君はいますか。

          ぴったり同じ2つの花火。水平線に君はいますか。

          友の横顔 私の涙は海へかえって。 未来の対岸タイムカプセル

          友の横顔 私の涙は海へかえって。 未来の対岸タイムカプセル

          スイミーと孤独と一番星

          8月23日18時04分。 新幹線を待つ間、西を向いた目に夕焼けが映っていた。 高い雲が道を開けてもくもくしている。 白の輪郭は、次第に灰色に染まり、日が落ちる寸前に赤く光り始める。 小鳥が鳴き声をあげながら飛んでいて、1羽、また1羽と数を増やしていく。 日が沈み、背中から夜の気配が強まる。 その日の最高気温は37度で、クタクタな体で、ただこの景色が美しいと思った。 18時11分。鳥の群れがすごい勢いで数を増している。 黒い流体が空を自由に飛んでいる。群れの数は3つ。1番大きい

          スイミーと孤独と一番星

          アイスクリームの詩

          子供の頃、一日に一個の冷たいあいつは、いつだってとびきりおいしかった。 パピコのもう半分はいつもばあちゃんへ、その後僕の所に帰ってきて、あげたつもりが貰ってた。 部活終わり、ソーダ味は青い記憶だ。 〇〇のお母さんのアイスはバニラ味で、母さんのアイスは小っ恥ずかしくて覚えてない。 アイスどころかお菓子を食べなくなったのが今の僕で、帰るとアイスを出してくれる実家が暖かかった。 風呂上がり、真夏のサービスエリア、敗戦後の溶け出す雫。 アイスを渡す役を担いたい。 頭を冷やし、口角が上

          アイスクリームの詩

          サザンクロスライフ

          二秒前、すれ違った。 どんな顔をしていただろう。どんな服を着ていただろう。 ただ、電話の声が優しかったことを覚えている。 肩が触れた。 僕の隣に座るまで、楽しい一日を過ごせていただろうか。 トイザらスの袋の中に、緑色のリボンが見えた。 写真の中。 もう名前も思い出せない君は、朝9時、起きているだろうか。 とびきり早く登校した日、体育館に君がいたのを覚えている。 たった一瞬の人生の触れ合いに、気付かないほどの熱があった。 私も、かすかに放熱しているのだろうか。

          サザンクロスライフ

          無くなったことにすぐに気付けるのなら、それが宝物だってことなんじゃないか。

          無くなったことにすぐに気付けるのなら、それが宝物だってことなんじゃないか。

          光の果てのチャコールグレー

          知らない星、愛の招待、大きな波にのまれる寸前、その期待は絶望に変わり、一方はその絶望を新たな希望とし、飛び立つ。 時刻は朝の9時前で、誰かの夢が途絶え始め、壮大な物語をめいいっぱいの想像力で脳にかきこむ。 1次元、2次元、3次元、4次元、5次元まで来たところで君が僕に語りかける言葉はきっと耳では聞こえない。 ここは多次元。 想像力では届かず、科学の進歩が足場となって壁の上からサインを送る。 加速、加速、加速する。光の果ては何色だろうか。赤青黄色。 好きな色は緑色で、おなかをす

          光の果てのチャコールグレー

          パピコと春

          目の前に長い長い坂がある。この上まで、自転車で行かなければいけない。 春になったので、有名な桜が見たくなった。車は持っていないので、移動手段は徒歩か自転車である。 Google Mapで目的地までの経路を確認すると、徒歩3時間3分と表示された。往復6時間はさすがに足が棒になりすぎてしまうので、自転車を選んだ。 家の周りは盆地のようなっていて、少し離れたところに行くためには山を必ず越えなくてはいけない。そして今回上らなくてはいけないのは弱虫ペダルに出てきそうな激坂である。こ