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ディシジョンメイキングをするときに僕が気を付けていること

社会人はいろんな場面で「議論をする」ということから避けられないと思います。口を動かさずに仕事をするってたぶん不可能。
ましてや組織を動かしたり、集団で何かを判断しなければいけないときにはなおさら必要になってきます。

ここ3年間ぐらいの組織の中での経験を振り返ったときに、僕自身もいろんな場面で挫折したり、多くの人に成長させてもらったと思えるもののひとつに、組織の中で「議論する力」があると思っています。それは議論によって相手を打ち負かす方法ではなく、相手と合意形成し意思決定する(結果的に組織を前に進める)ための力です。

自分なりにもがき悩んだ結果として、こんなことを頭に浮かべながら議論をするとけっこうスムーズにいくことが多いことが分かってきたので、そこで得られた気づきを書こうと思います。

結論からいうと、下の1~3の「どこを話しているのか」を相手とまずすり合わせること、ほんとにこれに尽きます。

何かを意思決定するとき、人と人とのあいだで交わされているのはだいたいこの3つのうちのどれかなはずです。で、「議論かみ合ってないな……」と感じるときは、双方で別々の箇所を話していることにあとあと振り返って気づくことが多かったんです。

たとえばこんな会話のやりとりがあったとします。

A:「弊社でもそろそろ昼寝制度の導入を検討したいと思っています。」
B:「従業員全員が昼寝をすると業務時間が削られるため、売上にも影響が出るのでは?」
A:「いや、昼寝をすれば、かえって生産性があがるというデータも出ています。ぜひ導入すべきです。」
B:「昼寝をする人と昼寝をしない人がいた場合、昼寝をしない人の勤務時間が長くなって不公平ではないですか?」
C:「昼寝は何分までOKにしますか?」
A:「そもそも弊社は勤務時間が長すぎます。せめて昼寝だけでもできるようにすべきです。」
B:「1日30分昼寝をするのであれば、いっそのことプレミアムフライデーの導入を検討してみては?」
A:「今トレンドはプレミアムフライデーではなく、昼寝の導入です。昼寝を導入している会社は〇社に及ぶとも言われています。」
・・・・・

こんなことが実際の経営会議などで議論されていると少し不安にはなりますが、こういった議論の展開がないとは限りません。

これらはすべて、上の1~3のどれを今話しているか、その相互認識がズレているために発生している茶番劇です。
具体的に、この議論はなぜ並行線っぽいかんじになってしまっているのでしょうか。

まず、Aの会話は「打ち手」の具体策から入っています。これだと、どのような問題意識から生まれたアジェンダで、どんな課題を解決するための打ち手なのかが分かりません。
にも関わらず、BはAが提示した「打ち手」に反論をします。この反論も何に対する打ち手を話しているのか分からないため、本来は客観的な視点から反論をすることはできないはずなのですが、人には好みや主義があったりするので、こういった反論が発生するケースは意外と多く潜んでいます。その結果、以降の議論はすべて「水かけ論」になってしまいます。

このような水掛け論に陥ってしまうと、「問題意識が低い」「現場の理解がなさすぎる」など、よくわからない印象を残してチームが崩壊してしまうこともありそうです。

この場合、まずAが発した「打ち手」に対して、何の課題を解決する打ち手なのかを聞いていく必要があります。これ、僕も以前はできていないことが多くて、「なんか気に入らないけど代案があるわけではないから飲みこむ」ということをずっと経験していました。提案された「打ち手」のGo or No goを判断するときに、何の課題に対する打ち手なのかを理解しなければ、当たり前ですがその打ち手が正しいかどうかをジャッジすることはできません。
当然ですが、組織にいるひとたちすべてが、同じ目線で組織を見ているとは限りません。人がちがえば抱えている問題意識も違います。加えて、人と人の会話は雰囲気がその場を支配することが多いため、これを意識しないと「なんか自分の考えと合わない」という気持ち悪さだけが残ってしまいます。

そしてもう一つ重要なのは、1~3の「どこに感情を込めるか」です。

問題意識を持っている人は、ある種の怒りを推進力に変えているケースが多いので、感情を込めて問題提議をされるケースが多くあります。でも、ひとたびその問題を分解し、課題を明確にするときは一度冷静になるべきです。起こっている問題を客観視して、どこを解決すればいいのか、ツボを見極めていくためには、感情を置いてある種の冷静さが不可欠になります。

そして、打ち手を考えるときは、それをどんな風に伝えるのか、何から伝えていくのか、どうすれば相手が喜んでくれるのかといった打ち手の先の「人」を想像するため、「打ち手の考案」のときには、再度感情を込めることが大切です。数々の議論の結果出された打ち手は、必ず誰かの幸せにつながるものであるはず。だからこそ、このフェーズでは感情を発揮して相手の幸せを想像しながら打ち手が考案されることが理想的です。

結局、組織の意思決定をするということは誰かの幸せを考えていることなので、それを実現するためにいろんな思いが交錯します。しかも組織の意思決定はスピードも重要。より早く、自分の組織にとっての最適な打ち手を実現させるために、合議制のシステムのなかでは意思決定者どうしがなるべく目線をあわせながら議論をすることが求められます。

僕はこんなかんじで議論の順番を意識するようになってから、話している相手と「なんでソリが合わないのか」を理解できた気がして、少しだけ楽になりました。言われてみれば結構当たり前のことだけど、今相手が1~3の何を話しているのかを理解するだけで、意思決定の質とスピードが上がります。
組織が大きくなっていくと、自分が正しいと思っていたことが相手とちがってくることが増えてきます。少人数では当たりまえのように通用していたことが通じなかったりする。でも、組織をよくしたい思いはみんな同じだったりします。だからこそ、議論で発生するボタンのかけちがいはものすごくもったいないと感じることが多いんです。

組織が大きくなればなるほど、阿吽の呼吸で意思決定することが難しくなります。でもそこにチャレンジする方法を考えることが、社会に大きなインパクトを残すためには欠かせません。
ひとつでも相手と議論のスタートで目線合わせをすることができれば、その議論の質とスピートはもっと上がるかもしれません。

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