【#1088】ネット記事の嘘
お元気ですかー?
今日のnoteは「ネット記事の嘘」というテーマのお話です。
新聞もテレビもたまに間違えますが・・・
僕は派遣業界に18年いますので・・いろいろな報道を見てきました。
新聞やテレビでも
「派遣に代表される非正規雇用が・・・」(派遣は現在170〜200万人くらい。1500万人くらいがパート、アルバイトで70%を占める)
「仕事のない人が集まった年越し派遣村では・・」(本当は派遣社員で年越し派遣村にいたのは16.1%)
などと、事実とは異なる報道がありました。
↓一例
ただ、今はSNSなどの台頭で情報が民主化されてきています。
個人がメディアに指摘できるので、露骨に間違っているニュース記事は減ってきたように思います。
情報が民主化されたのに誤解が加速している
しかし、派遣で働く方や派遣営業の方の支援もしている僕の実感としては、情報が民主化されているにも関わらず、派遣で働く人や派遣営業の方に間違った認識や誤解が増えているように感じるのです。
「正社員になれないから派遣社員になるんですよね?」
「派遣って交通費もらえないんですよね?」
「派遣は企業にとって安いんですよね?」
と言ったような間違った認識をベースとした質問をよくもらいます。
なんの事前情報もなければ、「わからないので教えて欲しい」となるはずなので、誤解を生み出した事前情報があるはずです。
それはなんなのか?
実は、犯人の一人は、(一部の)ネット記事だと思われます。
僕のnoteもそれに該当すると思うので、専門領域を扱うときは、なるべく事実に基づいて話すようにしていますが、デマを撒き散らしたいのか?と邪推したくなるくらい、事実誤認をしている記事もあります。
正直、ネット記事は怖い・・・!
記事の納期が短いのでしょうか。人材領域の記事を見る限りは、情報に間違いがあり、下調べが足りないと思われるものがたくさんあります。
誤解を生む記事の特徴を煮しめたような記事
このネット記事で誤解が広がる現象、どうしたものかなぁ・・と考えているのですが、昨日、そういう記事の特徴を煮しめたような記事を見つけました。
ある特定の記事を指摘するのは憚られるので悩みましたが、僕の運営するLINEのオープンチャットにいる派遣社員の方にだけでも届けたい思いもあり、その記事を一例に解説していきます。
今回、サンプル的に指摘を入れさせていただくのは↓の記事です。
最初に、「派遣の平均時給が高いのはIT系やクリエイティブ系が引き上げているから」と言いつつ、次に「派遣社員は全般的に給与が高い」というのが論理的に矛盾があり、その点も気になりますが、明らかに誤りと言えるものだけ指摘していきます。
「派遣社員の時給には、交通費が含まれていることがほとんど」
まず、交通費によって時給が高く見えるだけという内容について。
以下、引用です。
「派遣社員の時給には、交通費が含まれていることがほとんど」とのことですが、これは事実と異なります。
現在の派遣法では(労使協定方式の場合)、確かに交通費は2通りの支払い方法があります。
実費で支払うか、労働局長通達にある金額以上を時給に含めるかです。
この選択肢の中で、時給に含んで交通費を払っている会社がほとんどであれば、この記事の言うとおりです。
まずは、派遣協会のアンケートの回答を見てみましょう。
3493名のうち、90.2%が通勤交通費を支給されているとのことです。
これは僕の感覚とも合います。
この記事は他の情報ソースからそう結論づけたのでしょうか。
念の為、大手派遣会社がどう交通費を支給しているのか調べてみましょう。
ざっくり、売上が多ければ稼働している派遣社員も多いだろうと言うことで、上記サイトにある企業を調べてみます。
この6社のうち、4社が交通費を時給に含めていれば、ギリギリで「ほとんど」と表現していいと思います。
1位のテンプスタッフさんの交通費は・・・実費です。
2位のスタッフサービスさんも3位のリクルートスタッフさんも・・・実費です。
・・・ソース全部貼り付けると長くなるので結論から言うと、上記6社は全部、原則実費です。(労使協定方式の派遣労働者について)
どう考えても「派遣社員の時給には、交通費が含まれていることがほとんど」は、言い過ぎだと思うのですがいかがでしょうか。
募集費や社会保険料の手間がかからない
次に、以下の部分です。
なんでしょう。間違いすぎで説明が難しいです。
求人広告や社会保険の手間がなくなるのは事実ですが、これだと、求人広告や社会保険のコストも含めて派遣に発注すると世の中から消えてなくなるように読めます。
ちなみに、社会保険に加入していない派遣労働者はほとんどいません。
派遣協会によると8割を超える派遣社員は社会保険に加入しています。
そして、当然ですが、このコストは派遣会社が負担しており、派遣料金に反映されています。
同じく派遣協会のホームページからお借りしますが、派遣料金の内訳は下記のイメージです。
諸経費の中には派遣会社の従業員のコストも入っていますから、社会保険に加入する手間ももちろん含まれています。
そして、派遣会社も求人広告を打ちますし、手間をかけています。年々採用コストは上がっているくらいです。
その分の費用はどこに消えるのでしょうか。派遣先企業が派遣料金しか払わないのはその通りですが、それによって派遣社員の給与が高くなるというのはどういう理屈なのでしょうか。
人材派遣以外で言えば、
「引越し業者さんを使うと、引っ越す側は自分で手伝ってくれる人を探す手間がなくなるので引越し屋さんの従業員の給料が増えます。」
と言っている(比喩や例えではなくそのままの意味)のですが、なんというか・・・
少なくとも僕の頭では理解が及びません。
派遣社員はごく一部を除き、大多数の求人が1ヶ月から3ヶ月ほどの契約更新を繰り返して働きつづけることになる
最後の指摘は、記事の以下の部分です。
派遣社員のごく一部を除き、大多数の求人が1か月から3か月ほどの契約更新を繰り返すとのことです。
つまり、大多数が期間が決まった雇用契約を派遣会社と結ぶために不安定であると言うことだと思いますが、大多数とはどのくらいを指すのでしょうか。9割は欲しいところですが、少なくとも8割くらいですかね。
さて、以下は厚生労働省の資料で、令和3年の派遣労働者の内訳です。
209万人中、77.5万人が無期雇用。期間の定めがある有期雇用の方が131万人とのこと。およそ62%です。
さらに、記事にある1−3か月の更新となるとさらに減るはずです。参考になるのが厚労省のアンケート。
1か月以下と2〜3か月を合わせると73.4%です。
分からないという回答を入れて、84.8%なので、先ほどの131万人の84%が1−3か月の更新を繰り返す雇用契約だとします。すると、およそ110万人になります。
209万人に対して、110万人が1か月から3か月ほどの契約を更新している現状を
「派遣社員はごく一部を除き、大多数の求人が1ヶ月から3ヶ月ほどの契約更新を繰り返して働きつづけることになります。」
と表現するのは流石に間違いと言えるのではないでしょうか。
最後に
今日は「ネット記事の嘘」というテーマでお話ししました。
例に挙げた記事は、専門家である僕からしたら徹頭徹尾、間違っているのですが、試しに友人に読んでもらったら、全く違和感がなかったとのことでした。
ネット記事って体裁が整っているから本当のこと言っているように見えるのがとても怖いですよね。僕も健康系の記事とか鵜呑みにしがちなのですが、人材系の記事を読むたびに、自分でも調べよう・・!と思いました。
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