見出し画像

人材派遣利用マニュアル ~契約開始から契約終了まで~ ④直接雇用したくなったら

人材派遣利用マニュアル ~契約開始から契約終了まで~編を解説しています。

人材派遣を利用する際に知っておくと良い、自社で採用したくなった時についてのお話です。
「直接雇用したくなったら」いってみましょー!

「ひたすら具体的」で「生々しく」人材派遣利用の教科書を作るという狙いなので、僕の独断で、派遣先企業が知っておくべきことについて超実践的に解説していきます。

シリーズのマガジンはコチラ↓


直接雇用にまつわる背景

人材派遣サービスを受け入れていると、とても素敵なスタッフさんであったり、仕事ができるスタッフさん、社風にぴったりなスタッフさんに出会うことがあります。
そういう方に出会ったら、直接雇用(正社員、契約社員などで自社で採用)したくなる場面もあると思います。

今日は、そういったときの考え方とどのように行動するとスムーズなのかを解説します。


まず、直接雇用したいと思った派遣先が一番最初に疑問に思うのは、「派遣スタッフを派遣会社から引き抜くような行動は問題ないのか?」ということかと思います。

結論から申し上げますと、全く問題ないです。
↓派遣法の三十三条でも、明白に、派遣会社が派遣契約終了後に派遣先に派遣スタッフが雇用されることを禁じてはならないとされています。

(派遣労働者に係る雇用制限の禁止)
第三十三条 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先である者(派遣先であつた者を含む。次項において同じ。)又は派遣先となることとなる者に当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない。
 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律より

今の派遣契約が終了した後であれば、直接雇用にすることは問題ないと理解してください。
むしろ、わざわざ派遣法において、直接雇用することを禁止するような契約はダメと言っているくらいですから、(厚生労働省や政府からは)推奨されていると捉えても間違いではないと思います。


お金はかかるのか?

そして、次に考えないといけないのは、「お金はかかるのか?」ということです。
これについては、千差万別ではあるのですが、原則として、【派遣先が派遣労働者を雇用する場合の紛争防止措置】というものを設けることが義務付けられているので個別契約書などに以下の内容が明示されていることがほとんどです。(有料職業紹介の許可を取得していない派遣会社などだと、ない場合がある)

主に明示されていることが多いのは以下の2つのポイントです。

①労働者派遣の役務の提供の終了後、当該派遣労働者を派遣先が雇用する場合には、その雇用意思を事前に派遣元事業主に対して示すこと。

②派遣元事業主が有料職業紹介の許可を取得している場合で、派遣元事業主からの職業紹介を経由して派遣先に直接雇用された場合は、派遣先は派遣元に紹介手数料を支払うものとする。紹介手数料の額については別途派遣元と派遣先で協議して決定するものとする。


手数料額が明示されている場合もありますが、おおむね、派遣先が直接雇用したい場合は、事前に派遣会社へその意思を示し職業紹介を経由して紹介手数料を支払うということが取り決められていることが多いです。


さて、ここで「さっき、直接雇用することを禁止してはいけないってあったでしょ!禁止はしてないけど、お金が発生するなら、実質制限しているんじゃないの!?」と思った方!

めちゃくちゃ、鋭いです!!!!

平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第3集]のQ11に以下の表記があります。

Q11: 「派遣先が、派遣契約期間中または契約終了後に、派遣労働者を直接雇用することとなった場合に、派遣先から派遣元事業主に一定の金額を支払う」旨を規定し、労働者派遣法施行規則第22条第4号の紛争防止措置として派遣契約に定めることに問題はないか。

A11: 派遣先が派遣労働者に対して直接労働契約の申込みを行った場合に派遣元事業主と派遣先との間で設問のような金銭を受け取ることは労働者派遣法第33条第2項や、労働基準法第6条に抵触する可能性があり、問題である。
なお、派遣元事業主が、有料職業紹介事業の許可を有していれば、職業紹介手数料として徴収することは可能である。

平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第3集]

ちょっとわかりにくいですが、「直接雇用することへの制限として、反則金的に金銭のやり取りが発生することは派遣法や職業紹介の禁止(労働基準法第6条)に抵触する可能性が高い。しかし、(別に推奨しないけど)派遣会社が有料職業紹介事業の許可を持っているなら職業紹介手数料としてなら徴収することは違法ではないよ。」という意味合いで理解していただけると良いかと思います。

ここまでをまとめると、派遣先が直接雇用するのは問題なく、そして、直接雇用にする場合の多くは紹介手数料が発生する。その手数料は、直接雇用への切り替えを制限するものとしての金銭のやり取りではなく、職業紹介事業としての初回手数料が発生するという立て付けであるということになります。


雇用安定措置の場合はどうなる?

ここで、さらなる疑問が発生すると思います。
それは、「雇用安定措置の場合はどうなるのか?」ということです。
雇用安定措置のおさらいはコチラ↓

雇用安定措置とは、

同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある方は義務。同一の組織単位に継続して1年以上3年未満の見込み、もしくは派遣先が変わろうとも今の派遣会社に1年以上雇用されている方、は努力義務。として、以下の4つの、雇用が安定するための措置をしなくてはならない。

①派遣先への直接雇用の依頼
②新たな派遣先の提供
③派遣元事業主による無期雇用
④その他雇用の安定を図るために必要な措置

というものでした。
つまり、同じ派遣スタッフが3年同じ仕事に従事した場合、①派遣先への直接雇用の依頼ということで、派遣会社のほうから「直接雇用してください」と依頼してくる場合があるということになります。

派遣スタッフを直接雇用したい派遣先としては、渡りに船ですよね。
派遣スタッフが3年間辞めないで続けてくれるなら、3年待てば、直接雇用の依頼が派遣会社から行われる可能性が高いというわけです。


さて、この場合、手数料は発生するのでしょうか。
(派遣で働く皆様へ)平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&Aを見てみましょう。

Q4: 雇用安定措置の一つである「派遣先への直接雇用の依頼」を派遣会社に実施してもらったのですが、派遣先からは、派遣会社に職業紹介手数料を支払うことができないので直接雇用できない、と言われています。この場合、派遣先は派遣会社に対し、職業紹介手数料を支払わなければならないのでしょうか。

A4:「派遣先への直接雇用の依頼」は、職業安定法上の職業紹介ではないので、派遣先は同法上の職業紹介の手数料を支払う義務はありません。
また、派遣先は、正当な理由なく、派遣先と派遣労働者の間の雇用契約を実質的に制限するような金銭については、支払う義務はありません。

「派遣先への直接雇用の依頼」は、派遣会社が労働者派遣法に基づき講じなければならない雇用安定措置の一つであり、派遣労働者の雇用の安定を確保し、派遣先での直接雇用に結びつけることを目的としたものです。これは、職業安定法上の職業紹介ではないので、派遣先は同法上の職業紹介の手数料を支払う義務はありません。

また、派遣会社と派遣先との間で金銭の授受があることにより、「派遣先への直接雇用の依頼」が不調に終わることは、雇用安定措置の趣旨に反するおそれがあり、問題があります

なお、「派遣先への直接雇用の依頼」に際して、派遣会社と派遣先との間で金銭の授受があることなどにより、派遣先と派遣労働者の間の雇用契約を実質的に制限することとなれば、実質的に労働者派遣法第33条第2項に違反することにもなり得ます。

(派遣で働く皆様へ)平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A


こちらは、派遣スタッフ向けのQ&Aなので、分かりにくいかもしれませんね。

まとめると、
①雇用安定措置の派遣先への直接雇用の依頼は職業紹介ではないので、手数料を払う義務はない
②紹介手数料の存在で、直接雇用化が妨げられる場合、問題である
ということです。


つまり、雇用安定措置による直接雇用化は、職業紹介の手数料を支払う義務はないということになります。

続けてくれる見込みがあるなら、3年待てば、手数料が発生せずに、直接雇用ができることになります。

【補足】
雇用安定措置での直接雇用化は職業紹介の手数料を支払う義務はないのですが、私はすべてのお客様から、職業紹介の手数料を頂いています
なぜなら、このQ&Aが出る前から手数料として頂いていたからです。
もしも、手数料を一切頂かない形にした場合、結果的に全体的に派遣料金を値上げすることになってしまうからです。
そうなると、直接雇用しない派遣先にも費用負担を頂くような側面が出てきてしまいます。ですので、雇用安定措置か否かに関わらず、直接雇用化をする派遣先から紹介手数料を頂くというやり方をしています。
義務かそうでないかは、非常に重要ですが、派遣会社との商習慣や関係によって、義務ではないけど職業紹介へ切り替えて、紹介料を支払うことも多いです。ぜひ、派遣会社と丁寧にコミュニケーションをとっていただけたら嬉しいです。


最後に

今日は、「直接雇用したくなったら」というテーマで解説しました。

派遣会社ごとに、職業紹介の資格があるかなどで取り決めが異なりますが、基本的な派遣先とるべき動きは以下の通りです。

①直接雇用したい旨を派遣会社へ伝える(途中で立ち行かない場合などに、トラブルになるので派遣スタッフではなく、派遣会社へ!
②解説した背景を踏まえて、派遣会社との取り決めについて話し合う
③雇用する条件を明示し、派遣会社から派遣スタッフへ意思確認をしてもらう
④合意できれば、入社手続きを進める

ポイントは、
・必ず、事前に派遣会社へ伝える
・紹介手数料について、確認、交渉を行う
という部分です。

厚生労働省のQ&Aのニュアンスからすれば、直接雇用を推奨していると思われる・・・なのに費用がかかる・・・そんな風に考えると、詳しい方ほどモヤモヤすると思います。
僕も正直、紹介手数料の交渉は(たとえ取り決めがあっても)、ドキドキします。
ぜひ、直接雇用と費用に関わる背景を整理したうえで、派遣会社と二人三脚ができるような調整や決着を頂けるようお願いします。今日のnoteが、背景を整理するヒントになると嬉しいです。

では、また!




転職エージェントや人材派遣会社を利用する中で、不満、不便、不安を感じている方、就職してお悩みがある方、これから転職を考えている方、どちらでもない方、ご質問やご相談はこちら↓へお願いします。

※無料で全力でなんでも答えます。

僕のプロフィール↓

オープンチャット「人材派遣営業の駆け込み寺」を始めました↓

ちょっと、一回勉強してこい!っていう派遣営業がいたら、ご紹介をお願いします!

無料&匿名で相談できますので、ぜひ!(↓関連記事)

サポートいただいた分は、人材派遣で働く人のサポート、人材サービスで働く方のサポートの活動に使います!必ず、世の中の役に立てますね。