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人材派遣利用マニュアル ~人材派遣料金~ ②適正な派遣料金の考え方

人材派遣利用マニュアル ~人材派遣料金~編を解説しています。

人材派遣を利用する際に知っておくと良い派遣料金についてのお話です。

今日は、第二弾!「適正な派遣料金の考え方」いってみましょー!

「ひたすら具体的」で「生々しく」人材派遣利用の教科書を作るという狙いなので、僕の独断で、派遣先企業が知っておくべきことについて超実践的に解説していきます。

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派遣先が納得いく金額のうち、最も高い水準が良い派遣料金

適正な派遣料金について、僕は

「派遣先が納得いく金額のうち、最も高い水準が良い派遣料金」

だと考えています。


「適正な派遣料金」について、人材派遣営業という仕事をしていると良く聞かれます。

そのたびに、立場上、安い金額を望むはずがないがゆえに、僕の気持ちが伝わる言葉が見つからないな・・・って悩みます。

正直、僕は派遣業界ってべらぼうに儲かってはいけないのではないかとさえ思っています。少なくとも、誰よりも高い給料が欲しい!って思っている人は、人材派遣業界はやめておいて、もっと他に儲かるものを売ればいいのではないかと思っています。(一方で、派遣業界で働いている人が、十分に豊かな生活ができて、胸を張れる水準の待遇も必要だと思っています)


なので、心の底から、派遣会社や所属している会社が儲かるために言っているわけではないのですが・・・「派遣先が納得いく金額のうち、最も高い水準が良い派遣料金」なんて言うと、ポジショントークだと思われてしまうんですよね・・・w


今日は、自分のポジションは関係なく、人材派遣ビジネスに長年携わってきたものとしての意見をお話しすることにします。

僕の意見に賛成できないこともあるかと思いますが、デメリットを裏返せばメリットだったりするので、今回説明するようなポイントを意識しながら、バランスのいい価格帯であったり、自社に適正なサービス品質の人材派遣サービスやサービスの利用の仕方を選んでいただければと思っています。


安ければ安いほうが良いわけがない

前回のnote↓でも書きましたが、

派遣料金と派遣スタッフの給与や待遇は、本質的には関係ないのですが、現実は密接に関係しています。

ですので、派遣料金が安いことは、ほとんどの場面で、そこで働く派遣スタッフの給与や待遇が低いことを意味します。


確かに、役務の提供というサービスですし、商取引されているサービスである以上、安いに越したことはないかもしれません。

しかし、そこで働く派遣スタッフの給与や待遇も安くなるので、それによるデメリットが沢山あります。

人材派遣サービスに関わらず、世の中のサービス全てに共通する部分として、安すぎて従業員の給与が低くなりすぎると様々なデメリットが出てくるのです。

ましてや、人材派遣サービスは労働分配率が70%もある世界。(↓の派遣協会のグラフ…しつこいですかね?)

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安いということによるデメリットのインパクトも必然的に大きくなります。


最安値を目指すデメリット

早速、僕が、派遣サービスは最安値を目指さないで、「派遣先が納得いく金額のうち、最も高い水準が良い派遣料金」にする方が良いと思う理由である、安さを求めるデメリットを5つお伝えします。


デメリット①:ロイヤリティが下がり、離職率が上がる

→こちら、わかりやすいですよね。

とにかく賃金が安い…そんな仕事についていて、ロイヤリティが高まることはありません。

ましてや、派遣スタッフは定年まで続けるつもりで仕事を選んでいるわけではないので給与が低ければ、その仕事にこだわる理由はほとんどありません。

想像してほしいのですが、そんなモチベーションの方と一緒に働くのも、できれば避けたいものではないでしょうか。


デメリット②:調整が増える

→同一労働同一賃金についての解説でもお話ししましたが、派遣先均等・均衡方式にせよ、労使協定方式にせよ、最安値を求めれば求めるほど、調整が増えます。

それなりの価格を支払えば、派遣会社の中で、給与の設定や、統計データの更新に関わる賃金の調整をしてもらうことができますが、ギリギリの安値設定ではそうはいきません。

市場の影響、就業評価、統計データの変更など、様々な場面で少し状況が変わるだけで、頻繁に価格交渉や調整が必要となります。

余程の人材派遣マニアであったり、人材派遣専任の担当者であるなどでないかぎり、必要以上に知識を得る必要が出たり、調整に時間を取られたり、デメリットは多いと思います。


デメリット③:持続不可能な価格で提案される可能性が高い

→こちらは、人材派遣あるあるだと思います。

短期的には、たった一人、その瞬間に良いスタッフが確保できればOKなので、いくつかの派遣会社に声かけたうえで、最安値を求めれば、必然的に次回以降は同じ条件では難しいかもしれないけども、偶然確保できた、比較的安い賃金で働いてくれる人が紹介される可能性が高いです。

ちなみに、これは、「とにかく若い人・・・!」とか、「とにかく〇〇な人・・!」と一つのモノサシで極端な希望を出すと、どのような場面でも起こり得ます。

派遣先のお眼鏡にかなわないと契約が成立しない=ビジネスにならないために、中長期的に見たら、あまりお勧めできないような提案でも、目先のビジネスのために押し通してしまうのです。

価格面の場合だと、紹介した方が何らかの都合で辞めることになった場合、その後、同じ条件で同じようなスタッフを派遣することは難しいのですが、それについてフォローがあることも少なく、なんだか腑に落ちないまま派遣料金を上げるか、なかなか良いスタッフを派遣してもらえずに苦戦することになったりします。


デメリット④:派遣会社のレベルも下がる

→これこそ、どのビジネスでも同じです。

安い料金でのサービス提供も、度を超すと、派遣スタッフの賃金や待遇にとどまらず、派遣会社の営業などのインターナルな社員の待遇にまで影響してきます。

人材派遣はそもそも、簡単な仕事ではない&ストレスがかかる仕事である上に、待遇は良くはない業界です。そこからさらに待遇が悪化すれば、他の業界や他の会社では雇ってもらえないような方が働くようになり、派遣会社の(どういうスタッフが来るか以外の)サービス品質も劇的に低下します。

結果として、そんな会社は、良い派遣スタッフの確保もできなくなり、取引先としてもデメリットが大きくなるのではないでしょうか。


デメリット⑤:違法行為に手を貸してしまうことも・・・

→これも悲しいかな・・・たまに見かけます。

極端な安値を求められ続けた結果・・・違法行為に及んでしまう派遣会社が・・・

積極的に違法行為に及んでいるように見える会社もありますが、ほとんどは、なるべく安い価格であることが有利になってしまうがゆえに起こっていると言えると思います。


代表的な例で言えば、「社会保険に加入させなくてはいけない要件でも加入させない」ということがあります。

実は、「派遣先の講ずべき措置に関する指針」で、「派遣元から労働・社会保険に加入していない理由の通知を受けた場合、当該理由が適正でないと考えられる場合には、加入させてから派遣するよう求めること」と規定されています。

普通、知らないですよね・・・?

派遣契約書の中に、社会保険加入状況の通知があるのはそのためです。

しかし、実際にこの通知に「未加入」とか「手続き中」とかの記載があったとしても、わざわざ「適正ではない!」と指摘することはない・・・ですよね。


そんな中、安値で派遣するために、派遣スタッフを社会保険に加入させないことでコストを下げるという手段をする派遣会社も(昔より、かなり減ったと思いますが)存在します。

明らかに、法令に反しているわけで、このような業者に手を貸さないためにも、何が何でも安値を優先するということは避けたほうが良いかと思います。



こういった理由で、最安値を求めることは、僕はお勧めしていません。

もちろん、価格以外に、派遣会社の得意分野やポジショニング、信頼できる営業パーソンとの情報交換などによって適正な価格を探っていくのが好ましいと思います。

ですが、そういった要素を排除して、適正な料金とは?ということに、単純な答えを出すのであれば、納得して払える予算を決め、その中でサービス提供を受けることが好ましいと、僕は考えています。(おそらくその予算の最も高い水準となることでしょう)


最後に

今日は、適正な派遣料金は「派遣先が納得いく金額のうち、最も高い水準が良い派遣料金」なのではないかという立場から、安値を求めるデメリットをお伝えしました。

他にも、派遣スタッフへの教育の投資が減ったり、他の派遣先と比較して優先順位を下げられてしまうなどのデメリットも考えられますが、分かりやすい5つに絞ってお話ししたつもりです。


「派遣先が納得いく金額のうち、最も高い水準が良い派遣料金」が適正な派遣料金の一つの形であるというのは、僕は大真面目に考えていますが、必ずしも全ての派遣先から納得を得ることができるとは思っていません。

実際に、仕事する中で、クライアント企業にそのまま伝えることはほとんどなく、

「たった一人、低い賃金で働く人が見つかれば、サービスとしては成立しますが、持続的ではないです。また、同じ地域で極端に低い金額で設定すれば、良い方が確保できる可能性は低くなります。逆に、相場よりも少し高く設定できればより良い方を確保できる可能性は高まりますし、派遣契約を継続する中での価格変更などを避けるという考えで行けば、相場より高く設定する代わりに派遣会社任せにするという方法も・・・・」

などと、丁寧に対話します。


なので、必ずしも、「派遣先が納得いく金額のうち、最も高い水準が良い派遣料金」にして下さいと言うつもりもないです。

今回の安値を求めるデメリットを参考にしていただいて、自社なりの価格水準はどのような考え方が適正なのかを検討してもらえればと思います。

そばに信頼のおける派遣営業がいれば一番ですが、そうでない場合、↓問い合わせフォームからメールいただければ、できる範囲で、真摯な回答をさせていただきます。

では、また!



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