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人材派遣利用マニュアル ~人材派遣利用のルール~ ⑪評価・昇給の制度

人材派遣利用マニュアル ~人材派遣利用のルール~編を解説しています。

人材派遣を利用する際に知っておくと良いルールの紹介です。

今日は、第十一弾!「評価・昇給の制度」いってみましょー!

「ひたすら具体的」で「生々しく」人材派遣利用の教科書を作るという狙いなので、僕の独断で、派遣先企業が知っておくべきことについて超実践的に解説していきます。

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派遣労働者の評価をしろと言われるんだけど!?

労使協定方式について、派遣先と話をすると、良く出てくるのが、「なんか、急に派遣スタッフの評価をしてくれって言われたんだけど、どういうこと!?」ということです。

前回のnoteで労使協定方式を解説したときにも出てきましたが、改めて振り返ります。


「評価してください」という派遣会社からのお願いは何なのか。

まず、↓図の②のイがポイントです。

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②のイだけ取り出すと、↓の通り。

・派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合に、通勤手当等を除く職務の内容に密接に関連して支払われる賃金が改善されること
・派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等を公正に評価して賃金を決定すること



職務内容、成果、意欲、能力、経験などで①賃金が改善される。それが②公正に評価されるということです。

これはどういうことか。

ここで、思い出していただきたいのが、労使協定方式の基本的な考え方です。

派遣先均等・均衡方式とは正反対の概念で、派遣元(派遣会社)の従業員と均等均衡をはかり、派遣元に存在するとは限らない賃金(基本給、賞与、退職金、通勤手当)だけは、統計データをもとに、最低限の賃金が定められるというものでした。

原則的に、派遣元の従業員と均等均衡をはかるという考えと、いわゆる正社員と均等均衡をはかるという考えがベースにあります。「労使協定方式」というより、「派遣均等・均衡方式」と呼んでも、分かりやすいかもしれません。


ココで規定されている、「職務内容、成果、意欲、能力、経験などで①賃金が改善される。それが②公正に評価される」というものも、同じ考え(いわゆる正社員と均等均衡をはかる)をベースとしています。

そう考えると、正社員にありがちな制度で、「職務内容、成果、意欲、能力、経験などで①賃金が改善される。それが②公正に評価される」ものが思い浮かびませんか?


そう、定期昇給です。

同一労働同一賃金の概念は、

同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すもの

でした。

派遣社員にも、賞与や退職金、通勤手当と同じように、定期昇給(的なもの)がないと、不合理であるという考えなわけです。



評価どうやる問題

ここで、問題となるのが(特に派遣会社にとって)、一緒に働いていない派遣会社が、そもそもどうやって評価するの?と言う話です。

これは、基本的には派遣会社が評価するために、派遣先に情報提供の協力を仰ぐという形になります。こういったカラクリで、「評価をお願いします!」って派遣会社が言ってくるわけです。


詳しく見ていきます。今日も↓サイトが支えですw


「派遣先の皆さまへ」というリーフレットを見ていきましょう。

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派遣先が知っておくと良いことは、この黄色い線を引いたところの配慮義務です。

派遣会社は(派遣スタッフと一緒に働いているわけではないので)、派遣先の協力がなければ、勤怠くらいしか評価のしようがありません。ですので、派遣先が協力をする形になっているわけですね。

知っておくこと:派遣先は、派遣労働者の業務遂行状況などの情報を提供するなど必要な協力をする配慮義務がある



マッチポンプじゃない?

さて、ここまでで、評価と給与見直しの概要がつかめたのではないでしょうか。

で、ここで気になることがありませんか?

現実には、こういったやり取りになるわけです。↓

派遣会社「評価してください!」

派遣元「頑張ってるし、できることも増えてきた!評価◎だよ!」

派遣会社「良かったです!賃金見直すので、派遣料金上げてください!!!」


・・・・・マッチポンプじゃん!

いや、ちょっと違うか・・・チンピラじゃん!w


自ら、自社の従業員である派遣スタッフの評価を聞いてきて、それが良ければサービス料金を上げるという・・・・どうなのコレ!?


実際、これについては、派遣会社に所属している僕としても、「これは・・・マッチポンプに近いっすね。」としか言いようがないです。



それでも協力したほうが良い

僕は、この法律を知ったとき、さすがに派遣先は評価の手伝いはしなくていいのでは・・・?とさえ思いました。

しかし、それでも、協力したほうがいいです。

その理由を3つのポイントから説明します。


まず、協力しない理由にもなるポイントですが、

「派遣スタッフの賃金と派遣料金をある程度、リンクさせる商習慣である」

ということがあります。


どういうことか。

まず、前提となるのが、

そもそも派遣契約と雇用契約は別

ということです。

実は、評価したからと言って、派遣料金を値上げしないといけないわけではないのです。

今、たっぷりと派遣料金を払っているなら、その中から、派遣会社が昇給してあげればいいだけです。


しかし、現実には、派遣料金には、評価が高い、賃金の高い派遣スタッフの給与の分の原価は入っていません。

それは、個別に判断する商習慣になっています。

他の派遣先に派遣されている優秀なスタッフの賃金まで、(自分のところには、そこまでのスタッフは来ていないのに)支払うのは納得がいかないですよね。

ですから、商習慣として、実際に派遣しているスタッフの賃金や評価をベースに派遣料金を設定することがほとんどです。


派遣サービス全体として、高い賃金の派遣スタッフも低い賃金の派遣スタッフも関係なく、派遣料金を統一すると、低い賃金の派遣スタッフを受け入れている派遣先が損をしたような図式になるので、派遣料金は派遣スタッフの賃金ごと調整する。つまり、評価に関しても、

「派遣スタッフごとに個別に一緒に評価していきましょう」

コンセンサスが、派遣先と派遣会社の間に存在しているとも言えます。


実際に、全ての派遣先が評価による値上げを断れば、必然的に派遣サービスが評価による昇給ができるよう、全体的に値上げが行われるはずです。

ポイント①:派遣スタッフの賃金と派遣料金をある程度、リンクさせる商習慣である



そして、2つ目のポイントが、

「派遣料金に配慮義務がある」

ということです。


こちらも、「派遣先の皆さまへ」のリーフレットにありますが、待遇確保のための派遣料金への配慮義務が派遣先にありますので、値上げは嫌だ!と言うわけにもいかないということです。(少なくとも検討する義務があります)

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これは、労働者の賃金という非常に重要なものの規定であること、しかし、派遣会社と派遣先は、サービス提供者と顧客の関係にあり、一般的には派遣先(顧客)のほうが、力関係が強くなると想定できるために、定められた配慮義務だと考えられます。


ポイント②:公正な待遇を確保できるよう、派遣料金について配慮義務がある




そして、3つ目のポイントは

「派遣会社任せになってしまう」

ということです。


このルールは、評価結果によって、賃金の改善が必要となるわけです。

ポイント①の商習慣でも分かるように、評価結果が「派遣料金」として、派遣先に影響してくる可能性が高いということです。

さらに複数の派遣会社をご利用されている場合は、派遣会社ごとに賃金テーブルや評価項目が異なるため、もしも、あまりにも派遣会社ごとに差が出てしまうとスタッフ間でのトラブルにつながる恐れもあります。

ですので、派遣先が積極的に評価に関与していくことで、評価項目や昇給について派遣会社ごとの対応とならないよう、派遣先としてはある程度、統一できる状況を作ったほうが望ましいと考えられます。

ポイント③:派遣会社任せになってしまう



まとめると、

派遣料金と派遣スタッフの賃金がリンクしているうえに、派遣会社が公正な待遇を確保できるよう派遣料金への配慮義務がある。そして配慮義務があるのに、評価を任せてしまうと、派遣会社任せで派遣料金の相談に乗るハメになりかねない

ということです。

しかも、派遣先は、派遣労働者の業務遂行状況などの情報を提供するなど必要な協力をする配慮義務があるわけで、評価には前向きに対応してあげるほうが良いのではないかと思います。(僕が派遣会社に所属しているから言っているわけではないですよ!w)



派遣スタッフが変わってもいいなら、協力しない選択もあり・・・?

ここで、あまり積極的に協力しない場合の考え方もお話しておきます。

基本的には配慮義務ですから、協力しないっていうのもおかしいのですが、派遣スタッフが入れ替わることが問題なければ、協力しないで派遣活用することも、可能かと思います。

もちろん、1年ごとに評価の依頼があったら、派遣会社との契約を切って、入れ替えるというわけではないです。


どういうことかというと、先ほど解説したように、評価に協力しないことで、派遣会社任せ状態で派遣会社から、承諾しがたい値上げの依頼があったとします。

その時は、「シンプルにその価格交渉を断る」ということです。


実は、それでも問題ないのです。

ガイドラインのP90を見てください。

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黄色い線を引きました。大事なことです。

評価の結果、より高度な業務を行うことができると認められた場合には、より高度な業務にかかわる派遣就業機会を提供する

基本的には、

評価が高い⇒派遣料金アップ

ではなく、

評価が高い⇒評価に見合った待遇や業務を準備できる派遣先へ変更する必要がある

ということで、派遣会社の義務としては、今の派遣先のまま待遇改善をするだけではなく、派遣先の変更も視野に入るということです。

つまり、派遣先として、違う派遣スタッフの受け入れが問題ないのであれば、事前にその方向性を伝えたうえで、その状況が好ましい派遣スタッフ(例えば、未経験からチャレンジして、評価があがったら他の派遣先を目指す)を派遣してもらうよう、すり合わせて行けばOKです。

(そういう派遣先が派遣スタッフに求められるかは、地域や、条件などで変わってくるので、そのあたりの設計を派遣会社と行いましょう)

知っておくこと:派遣スタッフが入れ替わっていいなら、評価への協力をしない手もある



急に職能給

そして、最後にお伝えしたい、知っておいていただきたいことは、この評価・昇給の制度の最大の違和感についてです。

その違和感とは、統計データなどを駆使しながら、ずっと職務給で話をしてきた労使協定において、急に職能給の考えが飛び出してきているということです。

職務給:職務に対して賃金が決まる仕組み。この仕事は〇〇の待遇。派遣は基本的に職務給的。

職能給:人の職務遂行能力に対して賃金が決まる仕組み。年功序列はまさに、1年たてば能力があるだろうということで、賃金が上がっている。


今までの職務給の考えであれば、明らかに派遣される業務が変わったりすることで値上げなどが行われていました。

それ以外で値上げするとしても、いわゆるリテンション(引き止めたい人が辞めないようにするため)など理由が明白でした。

それが、今回の労使協定方式の評価のルールは、昇給の部分だけ、正社員と同じような職能給の考え方を移管しているという強引ともいえなくもない部分もあり、そこがマッチポンプ的になってしまう原因になっています。

知っておくこと:職能給と派遣サービスの不整合問題もある



最後に

今日は、派遣法における同一労働同一賃金のうちの労使協定方式の、さらに、評価・昇給の制度について解説しました。


派遣会社の営業が、

「法律が改正されて、評価・昇給の制度が運用されています。評価自体、派遣先様のご協力がなければできないので、〇〇にご協力お願いします。」
「一見、マッチポンプのように感じるのは、実はその通りでして、派遣サービスに職能的な考え方を当て込んでるためなんです。とはいえ、配慮義務もございます。過度なご負担にならないように二人三脚で評価進めていきたいです。」
「また、必ずしも値上げがすべてではなく、本当に評価が高いにもかかわらず、待遇に反映できない場合は、その方には違う派遣先で待遇改善を図り、よりマッチした人材の派遣を検討することもできます。」

と依頼をしてきて、概要もしっかりと説明してくれれば一番いいのですが、みんながみんな、説明ができるわけでもないです。(すみません・・・)


なるべく、オープンに、現場で起こっていることと、法律の考え方をお伝えしたつもりです。

参考にしていただき、対応を決めていただければ嬉しいです。

次回は、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式を改めて、比較していこうと思います。

では、また!





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