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自己分析とは、結局なんだったのか。

3年前、僕たちは、やりたいことがあった。

就職活動での自己分析を経て、やりたいことが見つかり、社会人生活への期待を膨らませながら、最後のモラトリアムを謳歌していた。


就活支援団体に属していた僕は、

先輩のやりたいことを聞いて憧れ、
自分のやりたいことは何かと探し、
後輩のやりたいことを一緒に考え、

幾度となくお互いの想いを話し合った。そして、そんな時間は生産性のない上辺の会話を行うだけの飲み会よりも、確かに充実していた。



そして、3年が経った。


やりたいことは、できてるか?


そんな問いに対して、目を背けてしまいたくなるほどに、僕たちは変わってしまった。

3年前やりたかったことを叶えて、心の底から社会人生活を楽しんでいる人が、周りにどこにもいないのだ。


じゃあ社会人生活が途方もなくつまらないのかというと、そうでもなくて。新たなやりたいことを見つけたり、やりたいことがなくても楽しんでいる人は、周りにたくさんいる。


3年前の僕と同じ世代のインターン生と一緒に働きながら、こう思うのだ。


自己分析とは、何だったのか。



1.なぜ自己分析は上手くいかないのか

3年前は希望に満ち溢れていた同世代の人が、希望なんて存在しないことを自らに納得させるよう、現実的な話をするようになった。


素晴らしい才能が発揮されず、自信がなさそうな顔をしていることに、ある種の寂しさを覚えながら僕は思う。


「環境が変われば、また輝けるのに」

そう、環境で人は大きく変わるのだ。


なぜ良い環境を選ぶための自己分析は上手くいかないのか。

僕が導いた結論は以下である。



そもそも、人間の脳の仕組みを知らないから。


前提として、脳の仕組みを知らずして、自己理解を進めることは、非常に難しい。その根拠として、


女性の多くが優しい人が好きなタイプなのに、優しい人はモテない事件。

が、各地で勃発してしまうのである。

(かつて親友に「今の彼氏より優しいし、経済的だし、賢いし、話も楽しいし、見た目も悪くないけど、好きにはならない」なんて言われて笑ったことがある)


それくらいに、自力で自分の欲求を理解するのは困難なのだ。

ゆえに、この先は、自己分析を進めるために必要な脳の仕組みを理解が深まる構成にしていく。



2.好き嫌いと学習


「好きか嫌いか」

自己分析を行う際に、あらゆる物事にこの問いを問う。

しかし「好き嫌い」は変わるし、「優しい人がタイプ」問題のように正確に認知できないこともある。

まずはこの好き嫌いが生まれるメカニズムを解説する。


野球を好きになるまで


そもそも脳は「バットでボールを打つと気持ちいい」とは知らない。もしその感覚があるとすれば、雨の日に傘で1人で石を打って遠くに飛ばす遊びが流行るはずである。


それでも野球が好きになるのは、人間が持つ欲求と結びつくからだ。

認知と学習

初めて野球をしたときに、父やコーチに褒められると、

ボールを打つ→褒められる
=ボールを打つ→気持ちいい

のように、脳がボールを遠くに飛ばすことは良いことだと学習をする。


一方で、初めて野球を行うのが少年野球チームに通う友人との遊びで、全く打てなくて馬鹿にされたらどうだろうか?


一瞬で「野球は嫌い」と学習するだろう。
(どんなに運動神経がよくても)


これが脳の学習のシステムである。

僕が地元とは縁もゆかりもない千葉ロッテマリーンズを好きになり、10年以上応援しているのは、

「戦力と金がない割に頑張っているから」と何となく応援していた年に優勝して、ファンと喜び合う興奮を味わったり、下克上を成し遂げるストーリーに共感したからである。

以来、
千葉ロッテの勝利=嬉しい

脳が認知するようになり、負ける日々が続いても「勝ったら嬉しい」と脳に刷り込まれているから、応援を続けられるのだ。


ここまでを総括すると、

物事と感情が結びついて好きは生まれる。
ので、

学習結果次第で、好き嫌いは簡単に操作できてしまうと言える。


また、シンプルに接触機会が増えることで、好きになっていく単純接触効果もある。

最初は好きでも何でもなかった音楽も、幾度となく聞くうちに好きになっていくのはこのためである。


更に深堀をすると、

好きは環境と得意によって作られるのだ。


他人より上手くいったり、周りから褒められることが多くなれば、大抵のことは好きになるし、得意なことであれば、上手くいく確率、褒められる確率が上がる。

そうやって”好き”は作られていく。




3.自己分析の3パターン

脳の学習の仕組みを知った上で、自己分析で良く聞く話を3パターンに分類する。

自己分析の分類

生物的欲求 :人間誰もが持つ欲求
思考性・感性:ある程度先天的に決まる個性
好き嫌い  :学習の結果生まれた後天的個性


具体例を以下に示す、

①生物的欲求
「人を笑顔にして喜ばせるのが好きです。なので、人の笑顔が直接見れる飲食店で働きたいです」
②思考性・感性
「1つの物事に没入し、細部まで拘る傾向にあります。なのでエンジニアが向いていると思います」
③好き・嫌い
「旅行が好きです。なので観光業界に携わりたいです」

このように、自己分析の結果は大きく3パターンに分けることができる。


そして、脳の仕組みを理解し、自己分析を進めるためには、これらを分けて考えることが非常に大切である。



4.生物的欲求は絶対守るべし

「人を笑顔にする仕事がしたい」
「誰かに認めてもらえる仕事がしたい」
「裁量権のある仕事がしたい」

のような自己分析結果を何度も耳にする。


しかし結論、

これらはほぼすべての人間が持っている欲であり、自己分析でも何でもない。

人間は誰しも、人に認められたいし、人を喜ばせたいし、人に勝ちたいのである。


これらの欲は、LF8にまとまっている。

人類が生存し、発展することができたのは、他でもなく、競争欲があり、共同体としての機能を備え、子孫を残す欲求が備わっていたからである。


一方で、

この欲を無視してしまったら、非常に高い確率で幸せになれない。

よくある不全になるパターンを挙げると、


飲食業が好きで飲食店に就職したが、同僚との関係が悪く、残業時間も多いため、辞めたい。
サービスや理念が好きで就職したが、営業として全然成果を残すことができず、仕事が辛い。
旅行が好きで旅行会社に入ったが、自分が決められることはほどんどなく、上司のいくことをルーティンでこなすだけで全然楽しくない。

のようなケースだ。


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<普遍的な人間の真理の例>
・人よりも成果を出したい。
・人に褒められたい。
・社員や顧客に感謝されたい。
・健康的に働きたい。
・自分で考えて働きたい。
・成長し、新しいことを知りたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これらは、万人にとって共通の欲求なので、これらが満たせる環境を選ぶことは幸せに働くために非常に大切であるし、逆にこれらが叶わない職場は人間本来の欲に逆らうことになるので、やめたほうがいい。

多くの就活生や、転職者の健全な意思決定によって、ブラック企業が駆逐されることを祈っている。


もし、これらの欲に、心当たりがなければ、潜在的にはそのような可能性を持ちながらも、機会に恵まれず自覚できていないだけの場合が非常に多い。

学生時代に聞く「恋愛に興味がない」や「向上心がない」は、多くの場合において、傷つかないための防衛手段か、機会に恵まれず欲を知覚できていないだけである。

恋愛や変化を伴う成長は人間によって大きな1つへの幸福感を感じる瞬間である。



5.個性は思考性と感性である

ようやく本題だ。


結論、自己分析において最も大切なのは、
思考性・感性の理解である。

なぜならば、
思考性・感性こそが人によって全然異なる一方で、後天的にも変化しずらいので、向き不向きはここで決まるからだ。

自己分析の分類


思考性とは、

・考えるのが好きで1日中を使っても疲れない
・達成が好きでそのためなら苦労も厭わない
・人と話すことが好きで誰とでも仲良くなれる

のような無意識レベルの行動パターンであり、


感性とは、

・部屋が汚いと気になる/気にならない
・悲しい話を聞くと辛くなる/ならない
・根拠のない自信がある/ない

のような感受性を指す。


そして、この特徴は、変わりずらい。

正確には後天的に獲得されるのだが、(体感値として)15歳までにある程度決まることが多く、

自分の頭で考えて行動したら結果が出た
→考えるのが楽しい

のように中学校くらいまでに学習されて、その後は概ねその思考性・感性を背負って生きていくことが多い。

幼少期の家庭環境や小中のスクールカーストによって、この辺は決まりやすく、自己肯定感の類もここに起因する。

根拠ない自信がある人や楽観的な人は、伸び伸びと育った場合に多く、逆のケースでは厳しい環境で育ったケースが多い。


そして、思考性・感性こそが自分らしさを発揮して社会で活躍するための最大の鍵になる。

なぜならば、

思考性・感性が生きる仕事に就くことで、成功体験を多く積むことができる。

その結果、生物的欲求が満たされ、仕事自体が"楽しい"と学習し、"好き"になるからだ。

自己分析の順番


例えば、

元々は営業に興味がなかった人も、得意のコミュニケーションを活かして受注し、取引先と社内双方に褒められたら営業が好きになる。
元々はマーケティングに興味がなかった人も、得意の人間分析を活かして、成果を残し、顧客の感謝の声まで届いたらマーケティングが好きになる。

”好き”は後天的に作れるから、今好きな仕事を探すのは、かえって可能性を狭めかねないのだ。


逆に生物的欲求や好き嫌いを軸にすると、

生物的欲求:金持ちになりたい
→外資コンサル
→ついていけなくて辛い
好き嫌い:食が好き
→食品メーカー
→仕事内容が楽しくない

のようなエラーがおきてしまう。

思考性・感性を軸に自己分析を進めることが非常に重要なのだ。



6.思考性・感性の活かし方

ここまで読まれた方は、

え、思考性と感性だけでそんなにうまくいくの?

なんて思われているのではないか。


ゆえにここからは思考性と感性が役に立つ事例を紹介することとする。

自分の思考性を把握するためのツールとして、34種類の思考性に順位が付くストレングスファインダーがおすすめだ。


<僕の事例>

僕の主な思考性は以下である。

1位個別化:無意識に人の個性を見ている
2位戦略性:逆算して考えがち
5位分析思考:何事も分析しがち

30位達成欲:忙しいのが嫌い
34位調和性:意見を合わせることに興味がない
(ストレングスファインダーの結果を引用)

これは強み弱みでもなく、個性である。

逆算して考えがちなので、行動力に欠ける。
人と違っても気にならないから、忖度しない。

2位の戦略性は弱みもある一方で、34位の調和性は強みにもなり得る。


この個性を活かすと、

向いている:マネージャー
人の強みや弱みを分析し、理解しながら、どう戦えば勝てるのかを考え、周りの目を気にしすぎずに意思決定もできる。ついでに戦略さえハマれば早く帰れる。
向いていない:プレイヤー
決められた戦略で戦うことになり強みが活かせないし、忙しいのが嫌いなうえ、チームの空気も乱す問題児。

と向き不向きがはっきり表れる。


<その他>

それ以外の話の例を出すと、

人と話すのが全く苦にならない人
→営業やチームの雰囲気作り
感受性が豊かな人
→商品開発・メンタル面のサポート
1つのことに没入しがちな人
→エンジニア

のように、思考性・感性を活かすことで、自分に合う仕事が見つかりやすくなる。



7.自己分析とは行動の数

つまり、ここまでを総括すると、

思考性・感性が活かされる仕事を見つける。

が自己分析の答えになりそうだ。が、ここで1つ自己分析の罠がある。


自分の思考性・感性と、それが活かされる仕事は、全て行動することでしか発見できないのだ。

何をするのが楽しいのか、自分の強みが活かされる仕事には何があるのか、それらは実際にやってみたり、人と比べてみないと分からない。


だからある意味、3年間でやりたいことが変わるのは当然である。

色々挑戦してみた結果、自分の強みが分かり、強みが発揮できる場所で活躍するうちに、その仕事が好きになり、周りから認められるようになっていくのだ。



まとめ

自己分析とは、結局なんだったのか。

その問いに今答えるならば、


自分の思考性・感性を知り、活躍できる場所を知ることで、周りを笑顔にして、自分も幸せに生きるための武器。

であり、

頭の中で考えるのではなく、行動し、人と出会い、アップデートし続ける終わりのない行為。

である。


そんな今インターン生に

自己分析って何すればいいですか?

と言われたらこう答えるだろう。


自己分析なんてしなくていいから、色んな仕事をしなさい。インターン以外でも、色んな体験をしなさい。その中で、自分が1番になれそうな場所を探しなさい。

そして、生物的欲求から逃げるな。
たぶん、知覚できていないだけだ。

~fin~


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