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コロナ環境下におけるイギリスの株式投資型クラウドファンディング

こんにちは。マシューです。

連日様々なメディアで取り上げられている新型コロナウイルスは全世界に影響を与えていますし、ベンチャー企業の資金調達環境にも大きく影響するものと予測されます。

新型コロナウイルスの感染拡大で本業の業績が悪化しているため、大手企業はベンチャー投資を減らすという記事も出ています。


それでは、個人から資金を集める株式投資型クラウドファンディングにおいては、現在の環境下でどういう動きがあるのでしょうか。株式投資型クラウドファンディング先進国であるイギリス*の主要な事業者の動きを見ていきたいと思います。

※下記記事にてイギリスの株式投資型クラウドファンディングについて触れています。

|Crowdcube(クラウドキューブ)の動き

Crowdcubeは2010年に設立されたイギリスの大手株式投資型クラウドファンディング事業者です。
時系列に沿って動きを見ていきたいと思います。

・2020/3/16:シード向けVCの「Episode 1」との連携

要件を満たすベンチャー企業は、Episode 1とCrowdcubeの株式投資型クラウドファンディング両方から投資を受けるチャンスがあり、これは、ディープテック企業や次世代のインフラ企業といったB2B事業を行う企業への投資を強化するための連携です。
新型コロナウイルス環境下で資金が必要なベンチャー企業に対して幅広い資金調達の選択肢を提供しようという狙いがあるのではないかと思います。

・2020/3/20:新機能を発表

Crowdcubeは、新型コロナウイルスの影響によって株式の発行が遅延することは無いと考えているものの、ラウンドをより高い確度で成功させるために募集のタイムラインを柔軟に変更できる機能を発表しました。
このような動きからも、Crowdcubeはベンチャー企業に使いやすいサービス作り、そして資金調達をしやすい環境作りを心がけていることが感じられます。

・2020/3/27:欧州VCの「Vala Capital」の支援要請運動を支援

欧州のVCであるVala Capitalは、既存のコロナウイルス対策融資スキームでは多くのベンチャー企業、中小企業が利用できないとして、税額控除の引き上げや資金提供をするよう政府に要請しています。Crowdcubeに加えて、約5,000人がこのキャンペーンに賛同しています。

・2020/4/5:創業間もないベンチャー企業を支援する「Save Our Startups」キャンペーンの開始

Crowdcubeの共同創業者であるLuke Langは、リスクにさらされているベンチャー企業を支援するために、下記が必要であることをイギリスの首相に対して発表しました。

①株式の流動性を高め、ベンチャー企業に資金が提供される仕組み
②公的資金が迅速にベンチャー企業に支払われているかの追跡
③ベンチャー投資に関わる優遇税制の内容を見直し、ベンチャー投資を促進すること

このキャンペーンには6,000を超える署名が集まり、さらに首相との議論の結果、実現することが決まりました。

要件を満たすベンチャー企業にとっては下記が可能になりました。
・「Future Fund」と呼ばれる、新しい転換社債プログラムを通じて株式ベースの資金調達が可能
・助成金の活用、研究開発費控除の支払い早期化が可能

政府をも巻き込んでベンチャー企業の資金繰りの整備に動くだけでなく、それを短期で形にするCrowdcubeのスピード感、コミットには目を見張るものがあります。


|Seedrs(シードル)の動き

Seedrsは2009年に設立された株式投資型クラウドファンディング事業者で、イギリスで初めて株式投資型クラウドファンディング事業を開始したのがSeedrsです。
彼らの動きも見ていきたいと思います。

・2020/3/25 ベンチャー企業と投資家を支援する取り組みを発表

Seedrsチームは下記取り組みを進めると発表しました。

・資金調達期間を迅速に実施できるよう承認プロセスの短縮化
・コンバーティブルエクイティ型新株予約権の利用を促進
・募集期間延長のオプション提供
・オンラインピッチイベントの開催
・政府による支援プログラムを利用できるよう支援
・オンライン営業時間の設定(起業家と投資家がコミュニケーションできる時間)
・利用企業同士が相互支援できるプログラムの提供
・ベンチャーエコシステム内の最新動向の継続的な共有(情報発信の強化)

・2020/4/8:「Save Our Startups」キャンペーンの支援発表

競合であるCrowdcubeが開始した「Save Our Startups」キャンペーンの必要性に共感し、支援することを発表しています。
Seedrsの共同創業者兼会長のJeff Lynnは、イギリスのベンチャーエコシステムについて「過去10年間のイギリス経済の大きな成功の1つだが、現在この大きな成功は危機に瀕している」と述べており、新型コロナウイルスによるベンチャー企業への影響をかなり懸念していることが読み取れます。

・2020/4/30:スタートアップメディア企業の「Tortoise」と提携

人々が信頼できる透明性のあるジャーナリズムが必要であるとして、Tortoiseと連携してオンラインイベントを開催すると発表した。
このイベントには専門家、ジャーナリスト、一般の人々が参加し、現在の状況やコロナ後の経済環境がベンチャー企業やエコシステムにどのような影響を与えるのかを議論する予定です。

多くの人々を巻き込んで全員で課題解決しようとする動きは、株式投資型クラウドファンディング事業者ならではの発想であるように思われます。

|最後に

上記でご紹介した通り、イギリスでは株式投資型クラウドファンディング事業者がベンチャーエコノミーの中で重要な役割を担っており、ベンチャー企業の資金繰りを支援する動きを積極的に行っています。

株式投資型クラウドファンディングは、イギリスでは2012年頃に登場したのに対して、日本では2017年に登場したことから後発市場であると言えます。


今後も定期的に情報を発信していきます。


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