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株式投資型クラウドファンディングには、 既にIPO事例があるんです。

こんにちは。マシューです。

緊急事態宣言が解除され、徐々に経済活動が再開してきましたね。
日経平均株価は2020年6月9日現在で2万3,000円台まで回復していますし、5月21日には2銘柄のマザーズ上場が承認され2ヶ月半ぶりのIPOとなります。
ベンチャー企業にとっても出口が再び開かれたので、資金調達環境も良くなってくるのでは、と期待したいところです。


さて、今回は株式投資型クラウドファンディング発のIPO事例を見ていきたいと思います。
「え、株式投資型クラウドファンディング使った企業でIPOした会社あるの?」と思われた方もおられるかと思いますが、あります。

2012年から株式投資型クラウドファンディングが利用されているイギリスを中心にIPO事例が出ているので、IPOした企業をご紹介していきます。

|IPO事例

1. Bidstack(ビッドスタック)

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■事業概要
・ゲーム内のスペースを活用した広告配信プラットフォーム
 (例.サッカーゲーム内の広告看板、レースゲーム内の車体広告、ゲーム
 世界内の看板広告など)
・ゲームの世界観を邪魔すること無く自然な形で表示され、広告ブロックされることもないため、広告主はブランド保持、高い費用対効果が期待できる
→クライアントは、ユニリーバ、SUBWAY、ドミノピザなど
・ゲーム開発者は、Bidstackが提供するSDKを利用するだけで自社ゲーム内のスペースを広告チャネルとすることができ、新たなマネタイズ手段が手に入る

■沿革
・2015年10月:創業(イギリス)
・2015年12月:株式投資型クラウドファンディングCrowdcubeで
         約13.5万ポンド(約1,900万円)調達
・2018年6月:リバーステイクオーバー*を発表
・2018年9月:ロンドン証券取引所に上場

■IPOについて
・2018年6月にロンドン証券取引所上場企業のKin Groupによるリバーステイクオーバー*を発表
→株式交換によってBidstackのすべての発行済株式を取得(買収金額は680万ポンド(約9.6億円))
→企業名をKin Group→Bidstack Groupに変更
・2018年9月にロンドン証券取引所のプロ投資家向け新興市場(AIM)に
上場

※リバーステイクオーバー(逆買収、逆さ買収):M&Aの手法の一種で、事業規模が明らかに小さい会社を存続会社とする合併のことである。上場企業による、事業規模の小さい未上場企業のリバーステイクオーバーであれば、正規IPOの手続きを経ず上場資格を獲得することができる。日本では裏口上場と呼ばれることもある。

(下図、SUBWAYの広告配信イメージ)

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2. CNS Pharmaceutical(CNS ファーマスーティカル)

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■事業概要
・脳腫瘍の治療法開発を専門とする非臨床段階のバイオテクノロジー企業
・当社の主薬である「Berubicin(ベルビシン)」は、抗腫瘍薬で、血液脳関門を越えて腫瘍細胞に働きかける
・「Berubicin」の特許を持つヒューストンファーマシューティカルズ社から独占的な特許ライセンスを取得している
・NASDAQ上場企業のリータファーマシューティカルズ社と「Berubicin」の開発のための業務提携契約を締結している

■沿革
・2017年7月:創業(アメリカ)
・2018年6月:株式投資型クラウドファンディングRepublicで約63万ドル
      (約6,900万円)調達。株式の種類はSAFE*
・2019年11月:NASDAQに上場

■IPOについて
・IPO時の時価総額は5,400万ドル(約60億円)、900万ドル(約10億円)調達
・IPO時の株価は4ドル。株式投資型クラウドファンディングで投資をした投資家は、IPO完了時に株価3.36ドル(4ドル×16%ディスカウント)で普通株式に転換された

※SAFE(Simple Agreement for Future Equity、将来株式取得略式契約スキーム):2013年にアメリカのY Combinator が開発した、簡略な資金調達契
約であり、あらかじめ決められた購入金額を投資家が支払うことによって、会社側が投資家に対して会社の一定の株式に対する権利を一定の条件で発行
するもの。新株予約権に近い。



3. Augmentum Fintech(オーグメンタム フィンテック)

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■事業概要
・Fintech領域に特化したベンチャーキャピタル
→投資会社RIT Capital Partnersからのスピンオフ
・Fintechファンドとしてはイギリス初の上場
・シリーズA以降の、ヨーロッパ拠点のスタートアップに投資
・1社に対して、複数ラウンドを通じて500万〜1,000万ポンド(約7億〜約14億円)を投資する
・2020年6月現在で公開している投資先は17社(投資先の詳細はこちら

■沿革
・2017年12月:創業(イギリス)
・2018年2月:株式投資型クラウドファンディングSeedrsで約71万ポンド 
      (約9,900万円)調達
・2018年3月:ロンドン証券取引所に上場
・2019年7月:2,580万ポンド(約36億円)を調達

■IPOについて
・IPOで9,400万ポンド(約132億円)を調達
→目標としていた1億2,500万ポンド(約175億円)には届かず



4. FreeAgent(フリーエージェント)

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■事業概要
・フリーランス、中小企業向けにクラウド会計ソフトを提供
→イギリス版freee
→イギリスでは、全企業の95%超が従業員10人未満(500万のフリーランスや中小企業が存在)
・2019年10月からモバイルアプリも提供している
・2020年6月現在で利用者数は9万を超える
・株式投資型クラウドファンディング初のIPO事例(と言われている)

■沿革
・2007年2月:創業(イギリス)
・2015年7月:株式投資型クラウドファンディングSeedrsで約121万ポンド
      (約1.7億円)調達
・2016年11月:ロンドン証券取引所に上場
・2018年3月:イギリス大手銀行のTHE Royal Bank of Scotlandが
       5,400万ポンド(約75.6億円)で買収
      →上場廃止

■IPOについて
・IPO時の時価総額は3,440万ポンド(約48億円)、1,070万ポンド(約15億円)調達
・ロンドン証券取引所のプロ投資家向け新興市場(AIM)に上場
・Seedrsで調達した際の時価総額は3,140万ポンド(約44億円)であるため、Seedrsでの調達時から時価総額を下げての上場

|最後に

冒頭でもご説明した通り、イギリスでは2012年から株式投資型クラウドファンディングが利用されています。初めてのIPO事例と言われている​FreeAgentが上場したのが2016年11月なので、4~5年かかったことになります。
日本で株式投資型クラウドファンディングが利用され始めたのは2017年なので、IPO事例が出始めるのは単純計算すると2021年~2022年頃、ということになります。
(上場の制度自体の相違もあり、上記はただ4~5年を足しただけですが、要するに、日本におけるIPO事例はこれから、ということです。)

また、IPOまでに相当の時間はかかるので起業家にとっては長い道のりとなることが予想されます。その長い道のりを、事業に共感し起業家を信じてくれる株主達と共に進むことができることは、株式投資型クラウドファンディングの醍醐味ですし、起業家の支えになると考えています。



今後も定期的に情報を発信していきます。



参照:
Bidstackサービスサイト
Crowdcube記事
Bidstack Groupプレスリリース
CNS Pharmaceuticalコーポレートサイト
Republicサービスサイト
証券経済研究 第99号
Augmentum Fintechコーポレートサイト
FreeAgentサービスサイト
FreeAgentのSeedrs募集ページ
Crunchbase掲載の情報参照

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