不確かな位置、先延ばされる成就――レオス・カラックス「アレックス三部作」
レオス・カラックス監督『ボーイ・ミーツ・ガール』(1983)、『汚れた血』(1986)、『ポンヌフの恋人』(1991)は、「アレックス三部作」として知られるように、いずれもドニ・ラヴァン扮するアレックスという名の男が登場する映画だ。しかし、3人のアレックスは、顔も名前も同じ人物でありながら、別々の世界に生きているまったくの別人という印象を受けもする。たとえば『汚れた血』は近未来という設定であるのにたいし、『ポンヌフの恋人』は制作年と同時代という設定である。他方で、いずれもパリ