映画『レミニセンス』

テーマ:記憶、過去、
・海面上昇の世界を描いたのはなぜ?
→海面が上昇するのは地球温暖化のせいだろうか?作中では、昼間の気温がものすごく高いから、人々のせいかいつスタイルが夜行性に移行している。地球温暖化に伴い海面は上昇する?
・戦争が4年間続き荒廃した世界を描いている。いつの時代だろうか?舞台はどこ?
・過去に取りつかれると、現実に失望する?逆の因果関係があるかもしれない。

・戦時中、拷問道具として使われたレミニセンス(記憶潜入)。戦争が終わった現在、過去にさかのぼって人々の幸せだった瞬間、過去に戻るために使われている。実際にそういった道具は存在する?燃焼(バーン)とはどのような原理か?なぜ拷問道具として使われていた?記憶をさかのぼるだけなら、何の拷問にもならないんじゃないか?記憶をさかのぼるには代償が伴う?なぜ記憶をさかのぼるためには、言葉が必要?作中では、記憶潜入しているもの以外の言葉によって、人々は記憶をさかのぼることができる。
・戦時中、安く陸地を買った地主が人々から、お金を搾取。お金は出てきていた?戦争で足を失った軍人が、コインのようなものを持っていた。

・映画のキャスト:ヒュー・ジャックマン(ニック)、レベッカ・ファーガソン(メイ)、タンディーニュートン
 制作会社:ワーナー・ブラザーズ
 監督:リサ・ジョイ(ウエストワールド)、製作:ジョナサン・ノーラン(インターステラー)
 ジョナサン・ノーランはテネットやインセプションで監督を務めたクリストファーノーランの弟。ダークナイトライジングという、バットマンが登場する映画では、監督がクリストファー・ノーラン、脚本がジョナサン・ノーランであり、兄弟によるアベック製作でとても豪華だ。
・映画の概要:ある日、店に現れた美しい女性メイ。彼女の記憶をたどることで、強く惹かれるニック。その後、互いに交流を重ねていくが、彼女は突然姿を消した。後々彼女の秘密を、様々な人の記憶を通して知ることになっていく。彼女は何者だったのか?何が目的だったのか?過去は人間にとってどのような存在なのかを問いかける作品。

・映画のセリフに、「過去に幸せはない」という言葉がある。人が過去にある思い出を振り返る時間は楽しいものではないのか?個人的には、楽しい思い出よりも苦い思い出のほうが多い。ただ、過去を振り返ると安心感がわく。もし変わろうとする自分がいた時、過去の自分が足を引っ張ってくる。君はこのままでいいんだよって。ノスタルジーを感じると、突然無能感にさいなまれたりする。昔の自分が何もできていなくて。今も何もできていないけど、少しは成長したと感じる。けど、昔の自分に後戻りするんじゃないかと思うことがあってすごく不安になったりする。幸い、私の場合、過去にとらわれて精神に異常をきたすほどの美しい・戻りたい過去はない。でも、過去にとらわれすぎるということは、自分の成長を阻害することにつながるかもしれない。
 
 誰しも、過去の記憶に浸る時間はあると思う。その記憶を思い出すことにより、苦い思い出、楽しい思い出、色々な感情をさかのぼる。人が過去にさかのぼるとき、自分はどこにいるのか?私の記憶の中に私はいる?記憶の中に私の意識がある?記憶と思考は絡み合っているのか?
 作中では、レミニセンスすることのできる機械を使い水槽の中に体を横たわり、頭に電気刺激を与えるヘルメットを装着し、神経を鎮静させる注射を打つ。そこから、第三者の声を通して、人は過去の記憶を鮮明に思い描くことができる。
 
 過去はどういう存在なのか?探し物の場所を思い出すとき、人に物語を聞かせるとき、その人の在り方を他者に示すとき、経験則に基づき推論をするとき、楽しい思い出を振り返るとき、などいろいろある。過去の楽しい思い出を振り返ることは、人にどんな影響を与えるか?もうあのころには戻れないという寂しい気持ちを与える。また、人の記憶は美化される。苦しかった思い出も、時がたてば、笑い話になったり、努力の結晶だというように自分の財産となる。しかし、思い出が美化されすぎると、過去の記憶にとらわれ、過去と現実の区別がつかなくなる。それを、作中では、燃焼(バーン)という概念を導入して表現している。過去の記憶にとらわれるってどういうこと?夫を亡くした妻が美しかった過去の記憶をそのまま現在に引きずって、過去と現実の区別がつかなくなっている。妻は衰退し、現実に対応できなくなっている。

・レミニセンスは心理学用語として使われていて、一昔前に研究が盛んだった。教育心理学では、「再学習をしないのに、忘れていたことを思い出すこと」と定義されている。臨床心理学では、「過去の個人的に経験したことを思い出す過程」と定義されている。映画で使われるレミニセンスという言葉はこのどちらの定義も深くかかわっているように思える。スラムの子供に英詩を覚えさせた後、10分後と2~7日後のどちらのほうが英詩を記憶をしているかという実験で、2~7日後のほうがより多くを記憶していたという結果を発見した。これをレミニセンスという。これは成人には見られず、幼児期に多く見られるという。その理由として、幼児期は認知の枠組みが未熟であり、理解に時間がかかるからだ。幼児期は分からないと思うことが多いから、その部分を分かろうとするために、無意識の間に認知の枠組みを組み立てる。それ故に、覚えた直後よりも、数日時間を置いたほうが記憶されやすいということが書かれてあった。
 映画の構造からみるに、すべてのストーリーが記憶の中に収まっている。冒頭のシーンと最後の締めくくりの言葉はセリフが一緒で、映画全体が、ニックによる記憶の旅なのである。記憶は何度でも繰り返し、振り返ることができる。ただ、時間というのはひたすら前に進んでいて、記憶をさかのぼろうが時間には抵抗することができない。過去にさかのぼること、未来に進むこと。


https://www.jstage.jst.go.jp/article/uekusad/7/0/7_KJ00009821799/_pdf


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