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知識がないと古本屋は務まらない│回想記6

あまり面白い展開になっていかない、自分語り。それでも続けます。

昨日は、古書に関わることで、自分の知らなかった、現役時代の祖父を感じられた……というような話でした。

さて、今回は、ネット古書店としての出品作業について話します。

最初のうちは、自社在庫(版元在庫品と研究資料≒祖父の蒐集した古書)を店頭に並べていきます。古書店なのに、ある意味、仕入れをせずにスタートしているのは、かなり特殊ですね。

大まかな流れとしては……

  1. 古書の清掃

  2. 状態確認(外観・刊行年等の確認)

  3. 値付け

  4. 状態等のデータ入力

  5. 写真撮影

  6. アップロード

  7. グラシン紙で包む

……という感じですね。順番は多少前後してもOKです。

まずは清掃

まぁ、文字どおり古書ですから古いわけで、ホコリやヨゴレが付いています。本はデリケートなので、丁寧に払ったり拭いたりします。

父もわたしも、微妙に潔癖なところがあるので、ここに妙に時間をかけたりして「時給換算」したらどうなるの……なんてことは多発します。

次に状態確認

折れたり、取れないヨゴレが無いか。虫食いはないか。書き込みはないか。ネット販売なので、状態が見られませんよね。だから、できるだけ詳しく書くことを心がけます。また、よく「初版本」なんて呼び方をしますが、初版の本には価値が見出される場合があるので、刊行年や出版社などもよく確認しておきます。

ちなみに、我々は無意識のうちに「出版社」の立場で出品する……ということを考えてしまって、いかに「新本」に状態が近いか……という見方をしていました。だから、ヨゴレや書き込みがあったら、価値が下がるものと思っていたんですね。

我が家は、「本は神様」みたいな家訓?で生きてきたので、幼少期にうっかり本の上に乗っかろうものなら、失神してよろめくくらいの勢いで叱られたものです。なので、我が家の本は、どれも綺麗で書き込みなんてあり得ないはずなんです。

……が。

あるんですね、書き込み。それも祖父の手で。なぜかというと、どんな古書であっても「誤植」があると赤ペンでチェックしてある……というね。もはや、職業病ですね。

なので、赤ペンチェックがしていないか、全ページよく確認するという作業をしていました。

その次に値付けです。

はい、わたしが普通に相場なんてわかるはずもなく。とにかくネットで調べて、いくらで販売しているのか、1冊1冊調べていきました。出版社の立場ですから、変に相場を崩すわけにいきません(そのあたり頑固でしたね)。

相場がわかれば、その相場で。わからない場合は……。

勘で……と言いたいところですが、変な値付けをしたら「この店は何も知らないな……」と思われてしまうでしょうし、ある意味、値段で伝わるメッセージもあると思ったので、簡単には出せませんでした。

どうしたかというと、まず著者について調べる。その周辺の刊行本を調べて、その相場を見る。それもわからなければ、その当時、著者と一緒に活動していた有名人などを調べる。その時代の出来事などを調べる。それに関連する本を調べる。そのあたりの相場を見る。

……というような感じで、とにかく調査でした。内容を読む……と言っても、歴史的仮名遣いで、そもそも読めない……っていうものも多かったですね。

これはかなり知識がないと古本屋は務まらないな……と痛感しました。祖父が居れば、いろいろ聞けたのに……と悔やみましたが、仕方ありません。

まぁ、でも、父と相談しつつ、結局は勘になった部分も多かったですね。

余談ですが、父曰く、歴史的仮名遣いについて、祖父が「蝶々(ちょうちょ)は”てふてふ”じゃないと、蝶々じゃないみたいじゃないか」と言っていたらしくて、ひらがなの奥深さを感じたのでした。

はい、次に、データ化。

要するに「初版。函入。装幀:○○ 挿絵:△△ 解説:□□ 函にスレ、縁にハガレ、弱ヘコミあり。裏見返しにラベル剥がし跡あり。全体的に経年劣化による強いヤケ、シミあり」みたいなことを書き込んでいきます。

そして写真撮影

他のお店は、写真撮影していないので、差別化?のために、表紙などが見えるようにせっせと写真を撮っていきます。

最後にアップロードです。

その後、本を保護するために、グラシン紙という半透明の紙に包んで保管しておきます。

あとは注文を待つ……という感じですね。正直、値段に関係なく、やることはだいたい同じですね。売れたとしても時給換算にすると恐ろしいことになるような作業をひたすら続けていました。

まずは数を増やすということで。

まったくもって余談ですが、状態のところで、カバーや箱がない本のことを「裸本」と書くのですが、裸本があまりに並びすぎて、エロサイト化しそうだったことがあります。どうでもいいですが。

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