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短歌で小説作ってみた


短歌名「観覧車 回れよ回れ 想ひ出は 君には一日 我には一生」

主人公:葵(20歳女子大学生)
=田舎町に暮らす、ごく普通の女子大学生。
19歳の春、同じ大学に進学する翼と付き合い始め、素敵なキャンパスライフを過ごしていた。ただ、
その一年後、脳に腫瘍が見つかる。無事手術は
成功するも、そのまた一年後癌が再発し、さらに
余命宣告を受ける。切なくも淡い、男女の愛を描いた
田舎町のある物語。

第二話【わずかな綻び】

2月15日。結局、昨日から一睡もできなかった。
医師から受けた余命期間は30日。
1ヶ月持てば良い方だ、と言われた。
残り720時間の命を無駄にする勇気が私にはなかった。
昨日、翼に聞かれた時咄嗟に嘘をついた。
翼に嘘をつくのは初めてだった。不安な表情から
私のついた嘘によって、非常に落ち着き安心する翼を
みた時、私の中で何かモヤのようなものが心の中に
発生した気がした。
この時は、まだモヤの正体はわからなかった。
「葵さん、今お時間大丈夫ですか?」
ぼーっとしている私に声を掛けてきたのは、
余命宣告をした医師だった。
「大丈夫ですけど、なんですか?
 出来れば今は会話する気分じゃないです」
本当に八つ当たりだが、
随時医師の先生には冷たかった。
「ごめんね、そんな時に。ただ、1日だけ
 外出許可が出せることを伝えたかったんだ。
 本当に何もしてあげられなくてごめんね」
「わかりましたので、早く出てってください」
こんなに人に冷たく接するのは初めてのことだった。
自分で言うのもなんだが、人よりも温厚な性格だった。人生でまだ一回も人に怒ったり、悪口を言ったことが
なかった。
「葵って、仏様みたいだね」
よく友達から言われていた言葉だ。まあ、死ぬ前くらいはこんなことをしてもバチはあたらない。たった1日の外出。この24時間をどう過ごすかはすぐに決まった。

2月16日。昨晩は、昨日と違ってぐっすり眠った。
「おーい。もう昼だぞ」
翼にそう言われて、私は眠りから覚めた。
「ほんとに静かに眠ってたから、死んだかと思ったぞ」
「縁起でもないこと言わないでよ」
「ごめんごめん。でも安心した」
「ねえ翼、外出許可貰ったよ!
 もちろん、その日は3月の6日!」
「まじか!やった!今年の誕生日は悲しく1人で
 過ごすのかとヒヤヒヤしてた」
「それは私もだよ」
私が外出に選んだ日は翼と私の誕生日だった。なんの偶然かは分からないが、私と翼は同じ日に生まれた。
この日は、決まってある遊園地でデートしていた。
その遊園地こそ、翼と私が付き合った場所だ。
「そうと決まったら、準備しなくちゃな。
 なんせ、今回の誕生日は特別だからな。
 また明日学校終わったらお見舞いくるから!」
そう言い残し病室を後にする翼の背中を、
私はただじっと見つめていた。
【特別】
その言葉でまた、あの時のモヤがより大きくなった気がした。まだ、私にはこのモヤの正体がわからなかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

たった1日の外出許可を貰い、
翼との誕生日デートが決まった。恐らく、人生最後の
遊園地デート。果たして、葵にとってどんな1日に
なるのだろうか。
また、日に日に大きく鮮明になっていく
心中のモヤの正体とは?
翼が言った【特別】の意味とは?
次回、【特別】という言葉の意味が明らかになる。           

3話に続く
10/24配信予定

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