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留学のメリット~博士課程学生がマレーシアに研究留学した経験に基づいて考える~


はじめに


 私は、大学院博士課程2年次に、マレーシア工科大学に3か月研究留学しました。今回は、その留学経験に基づいて留学してよかったことを記します。
 簡単に自己紹介しますと、私は国立理系大学に通う博士課程3年の学生です。
 本記事では、まず留学に至った経緯、留学の費用について説明した後、留学先であるマレーシア工科大学について説明します。次に、留学してよかった点を記します。


留学に至った経緯


 私が博士課程1年の時、マレーシア工科大学の博士課程学生が、特別研究生として私の所属する研究室に6ヶ月間在籍し共同研究しました。その期間で、マレーシアの学生と親睦を深めたところ、指導教官に、交換留学のような形でマレーシアの大学で研究することを勧められました。私は、以下に示す2つの理由で留学することにしました。1つ目は、英語力の向上です。研究活動を進めていくうえで、英語力は必須です。英語論文を読む、英語論文を書く、外国の研究者と議論するなど、英語を使う機会が多くあります。日本にいるより海外に行った方が英語を使う機会が増え、英語力が向上すると考えました。マレーシア人の公用語はマレーシア語ですが、准公用語が英語のためほとんどの人が英語を話せます。2つ目は、新しい環境に身を置きたかったからです。私は、当時学部4年時から博士課程2年次まで約4年以上同じ研究室で研究を行っていました。正直、研究活動がマンネリ化し、行き詰まりを感じていました。環境を変えることで、新たな発見が得られると思いました。また、帰国後新鮮な気持ちで日本での研究を再開できると考えました。留学する意志を固めた後、マレーシアの研究室に留学してよいか尋ねたところ、快諾して下さいました。 

留学の費用について


 留学の費用は、私が所属する大学の長期インターンシップ派遣プログラムを利用することで自分で負担せずに済みました。このプログラムは、博士課程の学生ならびにポストドクターを対象として、産業界等の社会的ニーズを反映させた教育プログラムを実施し、技術革新、産業創出、社会政策提言ができる優れた人材の養成を目的として、国内外を問わず、企業・研究機関等への長期インターシップを実施するといったものです。応募申請書を作成し書類選考に通過して採用されると、大学から往復の航空費と滞在費(10万円/月)とVISA申請料が支給されます。さらに、他の機関から給与を受給していなければ、月額最大15万円までの給与も支給されます。

留学先であるマレーシア工科大学について


 マレーシア工科大学(UTM:University of Technology Malaysia)は1904年に創設され、ジョホールバルに本部を置くマレーシアで最も古い理工系大学であり、マレーシアにおける工学系人材の3分の2を輩出している国立の研究重点大学です。また、UTMのクアラルンプール校には、日本政府や20以上の日本の大学が支援して2010年に設立されたマレーシア日本国際工科院(MJIIT: Malaysia-Japan International Institute of Technology)があり、多くの日本人教員が教鞭をとっています(https://www.kansai-u.ac.jp/Kokusai/sankus/university/index.php?m=102)。
 その他の特徴を以下に示します。
・東京ドーム約244個分の広大な敷地面積(1148ha)
・大学内にスタジアム(陸上競技場)、プール、ボウリング場といった様々な施設がある
・留学生約15%、大学院生約50%といすれも高い。学部生14486人、大学院修士課程学生8606人、博士課程学生4458人 留学生4408人(2020年時点、https://www.utm.my/about/facts-and-figures/)

留学してよかった点

留学してよかった点を4点挙げます。

1. 国の文化の違いが分かる

 日本とマレーシアの文化の違いを知ることが出来ました。例えば、マレーシアは多国籍国家(マレーシア系、中華系、およびインド系)で、母国語であるマレーシア語だけでなく、英語、中国語を話せる人が多くいました。そのため、日本人の私を含む外国人に対して言語に寛容である傾向が強かったです。私がうまく英語を話せなくてもイライラしたりせず何度も聴き返してくれます。マレーシア人は日本人のようにせかせかしておらず、穏やかなでお喋りが得意(初対面の人でも躊躇なく話しかけられる)な人が多いように感じました。例えば、寮から大学まで徒歩で向かっていると、バイクまたは車に乗った人が「乗ってく?途中まで送っていくよ」といって乗り物に乗せてくれることが何度もありました。日本ではそのようなことをしてもらったことはありません。
 宗教については、マレーシア系のマレーシア人のほとんどがイスラム教です。毎日5回、決められた時間にお祈りをします。豚肉を食べることが禁止されているため、地元のレストランの食事では鶏肉や魚をメインとするものが多いです。女性は、ヒジャブと呼ばれる髪の毛を隠すためのスカーフを巻き、バジュ・クロンと呼ばれる露出を控えた伝統衣装を着ています(https://www.wbf.co.jp/malaysia/basic/religion.php)。憶測ですが、マレーシア人同士のコミュニティが強いのは、宗教が関係しているかもしれません。皆同じ共通理念や価値観に基づいて生きている。だから仲が良いんじゃないかと思いました。


2. 英語での簡単なコミュニケーションができるようになる

 マレーシアに留学する場合、基本的に英語でコミュニケーションすることになります。そのため、必然的に英語を使うきかいが増えます。私の英語力はTOEIC600点程度で、readingは何とか出来るレベルですが、listening、writing、speakingが苦手で、特にspeakingには恐怖心がありました。会話するとき、初めは「うまく話さなくては。文法を間違ってはいけない、正しい発音で話さなければ通じない」と気張っていましたが、徐々に「シンプルでいい。単語だけでも通じる」ということが分かりました。例えば、コンビニで会計のとき日本では「レジ袋はご利用になられますか」と言われますが、マレーシアでは「plastic?」という1単語のみです。レストランで食事を注文するとき、メニュー表から食べたいものを指さして「This one, please」だけで通じます。そのようにして、英語で話す恐怖心が無くなっていきました。

3. 物価が安い

 マレーシアは物価が安く、日本の半分以下です。マレーシアの通貨はリンギット(RM)と呼び、1RMは25.4円です(2020年11月現在)。例えば、自動販売機の500 mlの水は1RM、大学のレストランのナシアヤムと呼ばれるチキンライス(図1)は4.5 RM、大学付近のレストランのナシゴレンパタヤと呼ばれるオムライス(図2)は10 RMでした。食費は、外食中心でも1万円/月以下でした。大学内の寮の宿泊費は光熱費と水道代込み、Wi-Fi付で1000 RM/月であり、週一回部屋の掃除もしてくれました。ただし、クーラーが付いておらず、直径1m程度のファンが天井に設置されていました。タクシー代も安いです。スマホで操作するだけで車やタクシーを呼ぶことができるglabという配車マッチングサービスは、価格が安く簡便なため大変便利でした。正確な費用は忘れましたが、10km程度の移動でも5-10 RMほどでした。

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図1 ナシアヤム、4.5 RM

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図2 ナシゴレンパタヤ、10 RM

4. 暖かい気候。慣れると暮らしやすい

 マレーシアはほぼ全土が高温多湿の熱帯雨林気候に属します。年間を通じ湿度が高く、気温変動は小さいです。日中の最高気温は 34 度、最低気温は 25 度前後でした。滞在して間もない頃は、暑くてばてていましたが、慣れると過ごしやすいです。特に、私のような寒がりの人は年間通して一日中気温の高いマレーシアは過ごしやすいです。注意点として、頻度は多くありませんが日中1時間ほどスコールが降ることがあります。

おわりに


 留学をすることで新しい知見が少なからず得られます。チャンスがあるなら、留学してみてはいかがでしょうか。本記事では留学してよかった点を記しましたが、次回留学の注意点についてもまとめたいと思います。

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