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poetry

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長文、一行詩、 Twitterに投稿した詩、駄作。ぜんぶ。
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2022年3月の記事一覧

緑の受胎

緑の受胎

「もういいよ」
そんな声が
聞こえた気がした
翠緑の下

忘れられた約束と
濁った雫を
還したら
明日を生きゆく
力を宿して

私は言葉を身篭っている

向こう岸のアルタイル

向こう岸のアルタイル

走る景色の中 
見たものは
陽炎だったか

夏が近い

もうすぐ
年に一度のあの日だよと
思い出させるように
あの人から便りが届く

あの頃
何度も何度も渡った橋を
封鎖したはずの橋を
私はまた渡ろうとしている

恋心なのか
欲情なのか 
ただ
沸き立つそれを
抑えることができない

川の向こう側
あの人が手を振る

高揚する胸と
紅葉する頬

手を伸ばしかけたそのとき
あの人は背を向け

ごめん

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「1+1=1」

「1+1=1」

満開のソメイヨシノ
「綺麗だね」とハモる声

暑さは苦手な二人
閉じこもる部屋は冷蔵庫

黄金の稲穂
虫嫌いな君の服は土まみれ

冷え症の足
温めてくれる天然行火

君が笑う
僕が笑う

猫のようにじゃれ合って
一緒に居よう
ずっと ずっと

君は僕の半分だから

失恋

失恋

白昼の元気は嘘のように
じわじわ濃くなる夕焼け色が
笑顔の仮面を剥がしていく

残光が頬を照らせば
隠していた寂しさが
見透かされてしまいそうで恐い

二人で居ることを覚えてしまった
この体が この心が
彼からの受信を待ち続けている

歯車が狂い始めたのは
いつ頃からだったのだろう

私を呼ぶ 愛しい声が
頭を撫でる 大きな手が
苛立つはずの 我が儘が
私を置いて
どんどん遠くへ行ってしまう

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六花

六花

真っ白に染まった大地は
この思いのように
どこまでも続いていた

また届くことのない

ただ貴方の街にも
同じ景色が広がっていますようにと
せめて、せめて

ふたつ並んだ足跡は
しあわせの象徴だ
貴方が残した足跡の
すぐ隣を歩いたら
何かが変わっただろうか

もうすぐ太陽が顔を出す
白銀の世界でしか描けない夢が
ポタリ、ポタリと溶けていく

雪になりたい
氷の結晶となって
貴方のもとへ
(大きな、

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distance

distance

鐘の音が聞こえる
いつか遠退いた憧れ

走って走って
なり振り構わずその手を掴んだ
恰好悪い
情けない
それでもアナタが欲しかったから

一目だけでは終われない
この躯に電流を

寂しさが100kmの距離に敗けたら
私の息は途切れ途切れ
アナタの連絡も途絶え途絶え

冷えた躯では
直ぐに消耗してしまうよ

泣き顔ではなく
寂しいではなく

「幸せ」と
言えばよかった

這い上がれ

這い上がれ

菩薩のような顔をして
言の葉の兵器を持ち
突然前に現れた

君もこんな風に
痛めているのか
無きものにはできない
得意のスイッチで
移行しよう

あの場所で
待っているから

溺れた海の
水かさを
涙で増やすなんてこと
馬鹿げた茶番は
もう止めよう

結び方は幾通りもある
空限りなく青に近い
笑うこともできるはず

生命線

生命線

緊急の赤い回転灯が
夜の街に鮮やかな光を放っている

「綺麗」

鳴り止まないサイレンと赤色を
呆然と眺めながら
また心が躰から
離れようとしているのを感じていた

君と同じものを手に入れて
その意味を知ってもなお
君への回路を断ち切れずにいる

それはもうひとつの生命線だった

現実と欲望の狭間で息をしている
私を手遅れだと嘲笑うかな

それとも、君も。

心の中で呼び続ける
君の名が
口を衝い

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