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poetry

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長文、一行詩、 Twitterに投稿した詩、駄作。ぜんぶ。
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2022年2月の記事一覧

12年目

12年目

朝もやの中
会いたい人の姿を求める
寝ぼけ眼と裸の足

還らぬと知りつつ
呼び掛ける声はいつも
白い静寂に消えていった。

霧がかかれば
また貴方が現れる気がする

現実と夢の狭間で
名前を呼んでくれる気がする

強く優しい面影に
すがりついたまま

湿気を帯びた砂時計は
今も動いてはくれない。

あの夏。

鳴き止まぬ蝉と陽炎の揺らぎ

首にまとわりつく髪が
鬱陶しくて眩暈がした

頬を伝ったの

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囚われた脳

囚われた脳

海馬が唸る
忘却さえも赦されないのか
あの頃 感電していた声が
切ないほどに反芻する

月のように貴方は
私のあとを
歩いても
歩いても
浮遊する面影
(離れない)

綺麗な円は穏やかな光を放ち
あの日の笑顔を思い出す
取り返しのつかない落陽と
知っていたのに

生温い優しさならいらない
可笑しくて哀しくて
ひとりぼっちを煽るから

火傷だろうと
凍傷だろうと
真実だけが欲しかったよ

(正面を見

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残り火

残り火

遠ざかる無神経な足音

仮相も虚勢も欲情も
総てを此処に置いていく

ノックをしても叫んでも
開かない扉に
見切りをつけて

要らないよ
まだ僕には足がある

要らないよ
まだ僕には片目がある

蝉恋時雨

蝉恋時雨

夢うつつ 現れるヒト
紐を解き 心を縛る

幾度 情事を重ねても
浴衣の裾
決して汚さぬ あのヒトの
甘い護衛

「愛して仕舞った」

冷えた西瓜
クウラアも
私の熱を下げてはくれぬ

火照りを鎮めて
炭酸の夜
一瞬で消えた
快楽のとき

なにゆえ 女に生まれたか
あのヒトに愛されぬのなら

短命の性(サガ)身を焦がし
ジリジリと啼く

蝉でよかった