1stにしてベスト!TEAM SHACHI『TEAM』全曲紹介

2022年2月16日TEAM SHACHIが1stフルアルバム『TEAM』をリリースした。2019年10月に「チームしゃちほこ」から「TEAM SHACHI」に改名してから約3年4ヶ月でリリースする待望の1stアルバムだ。

「ラウド・ポップ・ブラス」を軸に楽曲を制作しているTEAM SHACHIのアルバムを全曲紹介していきたい。

1stアルバム『TEAM』各種配信リンク

『TEAM(通常盤)』収録曲

収録曲は以下。

#01:POSITIVE BEAUTIFUL!〜後ろ向きま宣言〜
#02:HORIZON
#03:番狂わせてGODDESS
#04:AWAKE
#05:Rocket Queen feat. MCU
#06:SURVIVOR SURVIVOR
#07:MAMA
#08:JIBUNGOTO
#09:HONEY
#10:かなた
#11:こだま
#12:Rock Away
#13:Today
#14:Rainbow

通常盤の14曲の構成は、シングルやEPなどで配信済みの8曲、ライブでは既におなじみの3曲、アルバムの新録曲2曲となっており、1stにして3年間のベストアルバム的な作品といえる。

#01:POSITIVE BEAUTIFUL!〜後ろ向きま宣言〜

作詞:おかもとえみ 作編曲:PARKGOLF

1曲目は意外にも軽やかな打ち込みのポップソング。まずは準備運動といったところか。朝起きてこの曲をかければ気持ち良く1日を迎えられること間違いなし。

最近のシングル曲(「HORIZON」「HONEY」「MAMA」など)はメンバーそれぞれの声の特徴が強調されていたが、この曲はそれぞれのメンバーの声の特徴がやや均され、それらが打ち込みの音と溶け合うことで、なんともいえない気持ち良い感覚を味わえる。4色が混じり合ったアルバムのジャケットをそのまま曲に表現しているようだ。(とはいえメンバーの声の違いははっきり分かる。特に秋本帆華と大黒柚姫の声がよく聞こえる。)

個人的に好きなところ:3Aメロ「るんるんるんるん」

オープニングとしての1曲目が終わると、いよいよ本編、ラウドポップの本領発揮だ。

#02:HORIZON

作詞:岡田マリア / 山森大輔 作曲:平出悟 / 山森大輔 編曲:平出悟

アルバムから先行リリースされたアニメ「ドールズフロントライン」のED曲。

初めて披露された2021年10月の「OVRE THE HORIZON はちゃめちゃパシフィコ」では咲良菜緒がの力強いサビパートの歌声が僕を含めた観客を大いに痺れさせた。

それだけでなく、イントロのブラス・咲良菜緒の低音の歌い出し・秋本帆華のシリアスなセリフパート、続く一瞬の静寂と咲良菜緒のブレス・坂本遥奈の打楽器のようなラップとラウドなパーカッションの応酬・大黒柚姫のCメロと聴きどころが満載の曲。

ボーカルと生バンドの力強さが映えるライブ盤も、電子音と溶け合うボーカルとドラム缶を殴ったようなラウドなパーカッションが盛り込まれた音源盤どちらも必聴だ。

個人的に好きなところ:サビの「まぶしすぎる Night Eyes 何を写すのだろう」

#03:番狂わせてGODDESS

作詞・作編曲:浅野尚志

2021年9月配信の『浅野EP』リードトラック。同年10月に行われたパシフィコ横浜公演でもキーとなる曲として1曲目に初披露されて以来、ほとんど全てのライブで披露されている。

この曲は、改名前「チームしゃちほこ」時代から人気曲をいくつも提供してきた浅野尚志が作曲・歌詞を手がけている。

歌詞は歴代曲を踏まえて現在のグループの想いを綴った内容となっている。

ギター・ベース・ドラム・ブラスが過剰なほど重なるサウンドはTEAM SHACHIの泥臭く熱い部分を表現しつつ、ライブではフロアに一体感とな熱狂を巻き起こす。

個人的に好きなところ:ライブ感のあるボーカルと重厚で音数の多いギター・ベース・ドラム・ブラスがギリギリのところで噛み合っているところ

#04:AWAKE

作詞:岡田マリア 作編曲:山森大輔

2021年5月配信の両A面シングル『HONEY / AWAKE』より。
TEAM SHACHIの掲げる「ラウドポップ」を最も詰め込んだアゲ曲。

イントロではやや不穏な雰囲気を奏でるブラスから始まり、ラップともセリフともつかないAメロ、ゆったりとしたBメロ、ハイトーンのサビ、アウトロの大団円感のある明るいブラスと続く。

ラウドなバンド、曲の進行と共に表情が変わるブラス、ハイトーンボーカル、「ぐーすかぴー」という言葉のチョイスどれをとっても、TEAM SHACHIにしか鳴らせない音楽だ。

個人的に好きなところ:アウトロのブラスと大団円感

#05:Rocket Queen feat. MCU

作詞:新藤晴一 作曲:本間昭光 RAP詞:MCU 編曲:山森大輔

2020年9月配信の1st シングル『Rocket Queen feat. MCU/Rock Away』より。TEAM SHACHIの中で「最も優しいアゲ曲」。

近年のTEAM SHACHIの曲の中で最も幅広い人にリーチした曲で、僕自身この曲の広告がきっかけでTEAM SHACHIを知った。

イントロにはロックマン2の「Dr. WILY STAGE 1」のオマージュが使用され、ロックマンの大ファンでもあるMCU(KICK THE CAN CREW / UL)によるラップ詞には以下のようなロックマンに関連する言葉が散りばめられている。

「真っ赤っかな」=ブルース(※筆者推測)
「ブルースター」=ロックマン
「E感じに」=E缶(回復アイテム)
「チャージされるpower」=ロックマン4から導入されたチャージショット
「土下座してでも」=ラスボスのワイリーは負けると土下座するのがお決まり

個人的に好きなところ:Bメロ「あの手で叶えた〜」のボーカルとベース

#06:SURVIVOR SURVIVOR

作詞:岡田マリア RAP詞:MCU 
作編曲:Josef Melin / Agnes Grahn
編曲:山森大輔

2020年8月配信の両A面シングル『MAMA / SURVIVOR SURVIVOR』より。次曲「MAMA」と共に海外の作家によって制作された、メスが群れを率いる海洋生物シャチとTEAM SAHACHIのイメージを重ねたモチーフにした曲だ。

ゆったりずっしりと体が揺れるミドルテンポのダンスロックナンバー。安定感のあるリズムにボーカル・ブラスのメロディが重なっていく。形式上Aメロ・Bメロ・サビという構成をとってはいるものの、それらは一定のテンションを保ったまま展開していく。

TEAM SHACHIの楽曲の中では珍しいテンポでアルバムでもライブでも中盤に変化をもたらす貴重な存在。

次曲の「MAMA」とともに、カッコ良いに振った曲ではあるが、最後の「Hey!」の抜け感が「あーシャチだわ。」とほっこりするポイント。

個人的に好きなところ:ゆったりしたリズムにのる2メロラップ

#07:MAMA

作詞:小川貴史 RAP詞:MCU 
作編曲:Viktor Strand / Ida Pihlgren / Chantal Richardson / Paulina Cerrilla
編曲:山森大輔

2020年8月配信の両A面シングル『MAMA/SURVIVOR SURVIVOR』より。
最もドラマティックでアダルトな雰囲気のあるダンスロックナンバー。

やや危険な雰囲気を醸すイントロのブラスと冒頭のメロディーから坂本遥奈の力強いラップ、艶やかな大黒柚姫のBメロを経て、サビへ展開していく。サビのボーカルに呼応するように奏でられる切れ味鋭いブラスが素晴らしい。

個人的に好きなところ:サビの「Looking For My Life」とくに「For」

#08:JIBUNGOTO

作詞:岡田マリア RAP詞:MCU 作編曲:Face 2 fAKE

2021年12月配信のシングル『JIBUNGOTO』より。
2021年12月、メンバーのコロナウィルス感染により予定されていた年末のライブが延期になる中で配信リリースされた。Billie Eilish「bad guy」をTEAM SHACHI流にアレンジしたようでもある曲。

四つ打ちのバスドラムとブラスが印象的なイントロから始まり、音数の少ないメロから一転、サビではボーカルをドラムがラウドに暴れまくる。ライブ音源では鍵盤のようなベースにも注目してみてほしい。

個人的に好きなポイント:1番のラスト「GO TO ミー GO TO ユー」

#09:HONEY

作詞:小出佑介 作曲:YCM 編曲:生田真心

2021年5月配信の両A面シングル『HONEY / AWAKE』より。レゲエのようなサウンドに甘めのボーカルを合わせたTEAM SAHCHIの中でもやや異色の曲。

改名前の大切な曲「colors」と同じBase Ball Bearの小出佑介が作詞を担当していており、歌詞や振り付けにも「colors」とのつながりが見られる。

哀愁が醸されるベースラインとブラスに甘くねっとりしたメロディーと歌詞が溶け合っていく。サビは4人のメンバーが順番に歌っておりそれぞれの声の特徴を順番に堪能できる。

個人的に好きなところ:歌い出しの「切らしてた」の「き」でバチっと高音が当たってるところ

#10:かなた

作詞:小川貴史 作編曲:Tsujiken

2019年春のツアー「タイムトレインかなた」のリードトラックだった2曲のうちの1曲。

キラキラしたバンドサウンドに普遍的な美しさを持つメロディがのり、さらにブラスが加わると、老若男女誰もが好きになる曲の出来上がり。

ライブによってさまざまなアレンジがされており、より硬質なバンドサウンドでロック寄りに演奏されても、アコースティックでしっとり聴かせても素晴らしい変幻自在な曲。アルバムでもライブでもブリッジの役割を果たしてくれるユーティリティプレイヤー。

個人的に好きなところ:冒頭の大黒柚姫の「静寂を裂いて〜」と冒頭のラストの音源盤では幻となったイントロのブラス(動画41:12)

#11:こだま

作詞・作曲:浅野尚志

2019年春のツアー「タイムトレインかなた」のリードトラックだった2曲のうちのもう1曲。かつてのツアーを思い出させる曲順がにくい。

メンバーの咲良菜緒がプロデュースした「楽しい」がテーマの曲。特徴的なスキャットやキャッチーな振り付けの効果もありライブで最高に楽しい。ワンマンライブに限らず5曲程度のフェス形式のライブでも選曲されることの多い人気の曲だ。

冒頭のブラスのリフから最高にテンション上がる。また、特筆すべきはベース。Bメロや落ちサビ前のメロディックな音、サビや間奏のスラップなど全部が痺れる。

咲良菜緒の声がややハスキーなところから、レコーディングはかなり前に行われたと思われる。(1st ミニアルバム『THEM SHACHI』の発声と似ているため。)

個人的に好きなところ:全部

#12:Rock Away

作詞・作曲:日高央 編曲:山森大輔

2020年9月配信の1st シングル『Rocket Queen feat. MCU/Rock Away』より。スカ・パンクの要素を取り入れたポップロックチューン。

ご機嫌なリズムとブラス、「Hey! Ho! Hey! Let's go!」の掛け声でライブ会場をあたためる曲。そんな曲の割にはハモリが綺麗なところにも注目してほしい。

個人的には、以前の記事でも触れた通り Green Day の「 King For A Day」を連想する。(Green Day - King For A Day/Shout [Live]
率直にいって、この曲は音源よりもライブの方が良さを感じられると思う。いつか、大きな野外会場でコールアンドレスポンスで盛り上がりたい。

個人的に好きなところ:間奏の「Way!」「 Hey!」のコールアンドレスポンス

#13:Today

作詞:いしわたり淳治 作編曲:シライシ紗トリ

2020年春のツアー「異空間」から披露されてきた曲。サビのメロディーに合わせて会場全体でシンガロングし、手を振って一体感のあるライブの終盤を迎えるために作られた。

冒頭のブラスが壮大に鳴ると、秋本帆華から順番にソロの歌唱が続き、サビでは「Hey Hey Say Yeah」とユニゾンで歌い上げる。三回目のサビの後、音数が少なくなり曲の終わりが予感される中、物足りないと言わんばかりに、ドラムが戻り、再びサビのボーカルとブラスの美しいメロディーが歌われる。最後は「Hey Hey Say Yeah」の声のみになり曲は終わる。

(ブラス民不在の2020年2月の豊洲公演のアウトロでは芳賀義彦の素晴らしいギターが奏でられたことが今でも印象に残っている。)

いつか声が出せるライブができたときには、会場一杯の「Hey Hey Say Yeah」の声によってライブは終わりを迎えるのだろう。

個人的に好きなところ:落ちサビ「空へ、Yeah---!」

#14:Rainbow

作詞・作曲:youth case 編曲:mugen

アルバム新録曲。アルバムの最後の曲でありED。

アルバムを通して聴いてRainbowのイントロにたどり着くと"Thank you for listening!"という字幕が脳内に浮かび上がってくる。ゲームクリアした後に幸福感に浸りながら見るスタッフロールのBGMみたいな曲。

ラウド感は薄めで普遍的で綺麗なメロディーラインはある意味シャチっぽくない曲。ザ・アイドルソングという感じだろうか。

EDに他のアルバム曲とは異なった趣の曲を収録しているということで連想するのは2021年にリリースされた東京事変の『音楽』の最後の曲「一服」だ。

椎名林檎は「一服」のインタビューに以下のように答えている。

ただ、「一服」はどうしても最後に「あとがき」や「エンドロール」として収録させてもらいたかった。他の曲のリリックを、堅苦しく思われるようなお客さんがいらしたら、それは誤解と申し上げたかったし、このアルバムはとにかく後味さっぱりさせたかった。
https://madamefigaro.jp/series/music-sketch/210610-tokyojihen1.html

TEAM SHACHIの他の楽曲を(改名前も含めて)みてみると、王道アイドル(もしくは王道JPOP)らしい曲は少なく、どこか過剰さ・極端さ・異質さのある曲が多い。(もちろんいい意味で。)

だからこそ、アルバムの最後を「さっぱり」させるために、王道アイドルソングをアルバムの最後に持ってきたのではないかと思った。

ラウドポップを全面に押し出しているTEAM SHACHIだが、当然そのファンは様々な好みを持っていて、王道的なアイドルソングを求めている人も多いはず。「Rainbow」はそんなファンへ向けたチームからのプレゼントなのかもしれない。

序盤、中盤、終盤と隙の無い構成

改めてアルバム全体の構成をみてみよう。
僕にはOP・3つのブロックによる本編・EDに分かれていにように感じられた。

#1はそれぞれアルバム全体のOP。
①#02~04はTEAM SHACHIの掲げるラウドポップの「オリジナリティ」を体現するブロック。
②#05~09は様々な音楽性を取り入れたラウドポップの「変化」を提示するブロック。
③#10~13はラウドポップの「ライブ」を表現するブロック。
#14はアルバム全体のED。(ソロ盤では週力曲が異なることからボーナストラック的な位置付けでもある)

特徴的な曲の間に、#05「Rocket Queen feat. MCU」や#10「かなた」のような普遍的な曲を挟み、聴いている人を飽きさせない。序盤、中盤、終盤と隙がない構成だ。

曲順と時間の流れ

曲が進むとともに時間の経過が感じられるのも構成の特徴だ。

個人的な感覚に過ぎないが、#01「POSITIVE BEAUTIFUL!〜後ろ向きま宣言〜」は朝、#09「HONEY」は夕方、#13「Today」は新しい日、そして#14「Rainbow」は晴れた春の日を連想する曲調だ。

2021年10月のパシフィコ横浜で咲良菜緒が「改名後3年間たってようやくやりたかったライブができた。」と晴れやかに語ったように、この曲順がこれまでの試行錯誤のトンネルを抜けた先の、明るい未来を暗示しているのであれば嬉しい。

TEAM SHACHIの真骨頂はライブ

さて、ここまでアルバムについて述べてきたが、実はアルバムをじっくり聴いたところでTEAM SHACHIの良さは半分も味わえないかもしれない。どうしてか。

それはTEAM SAHCHIの真骨頂はライブだからだ。

『TEAM(通常盤)』収録曲の中でも、#02「HORIZON」・#04「AWAKE」・#06「SURVIVOR SURVIVOR」・#12「Rock Away」あたりは音源よりもライブの方が遥かに魅力を発揮する曲だ。

アルバムを聴いて気になった人は是非一度ライブ会場に足を運んでTEAM SAHCHIの真骨頂を体験してほしい。

1stアルバム『TEAM』各種配信リンク

TEAM SHACHI 公式サイト

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