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Employee Journey Map の2つの前提

1.今回のテーマ の前に

5月から少しずつ更新を続けているnoteですが、せっかくなのでページの背景を何かつくろうと思い、この度 視覚翻訳家の黒木さんにイラストを書いていただきました。黒木さん、ありがとうございます!

黒木さんは「視覚翻訳家」という、わかりそうだけど一体何でしょうなお仕事をされています。どのようにお仕事紹介したらよいでしょうかと伺ったところ「人の気持ちや理念などをその人の感覚に近いかたちで絵におこす、非言語や暗黙知の視覚化や音楽やダンス、味覚といった非言語を非言語(絵)として翻訳するなどをしています」とのことで、教育現場にて学校設立時の意思・方向合わせなどのテーマですでに活用されているようです。企業研修などともとても相性がよさそう。

ご興味持たれた方は、ぜひ以下より黒木さんへご連絡してみてください。

【黒木あゆみさん】
視覚翻訳家/イラストレーター/グラフィックレコーダー
Twitter: @ayu01331
※もちろんご本人のご承諾を得ております。


2.今回のテーマ

私のnoteにて度々登場しているEmployee Experience(EX)について、今日はもう少し詳細に入った内容を書いてみようと思います。
「Employee Journey Map」(EJM)をご存じでしょうか。EXについて学ばれたり、自社に取り入れようと考えている方は聞いたことがあると思いますし、実際に活用している方もすでにいらっしゃるかと思います。

私がこのフレームに触れたのはもう3年くらい前でしょうか。前職でEXについて学び、そこから色々と触れる機会がありました。EXの熱が加速している今だからこそ、このEJMについても改めてポイントを押さえておく意味がありそうだなと思いましたので、今回のテーマとします。


今回のテーマは「Employee Journey Map の2つの前提」


※ちなみに、Employee Experienceの入り口については、以前noteを書いているので興味ある方はこちらもご参照ください。

「Employee Experienceと聞いて飛びつくことなかれ」


3.Employee Journey Mapとは

EXについて、再度整理してみます。以前のnoteでEXを自分なりに言葉にするならば「社員が企業・組織の中で体験する経験そのもの」とし、様々な人からともに働きたいと思ってもらえる企業になるには、その企業で得られる経験(コト)に目を向け、その価値を魅力的なものにしていくことが重要だと述べました。

EJM(ちなみにEJMという略称は通称ではなく、私の便宜上省略しているだけです)の設計はそのEXをデザインしていく過程のプロセスの一つで、もとはCustomer Journey MapというCustomer Experience(CX)のテーマで活用されているプロセスをEXに応用したものとなります。

EJMについて、ネット検索しても日本語で解説されているページはあまりないため、大枠をつかみたい方はCustomer Journey Mapをインプットしてから、EXに置き換えてみるというのが学びやすいのではないでしょうか。

Customer Journey Mapに関する書籍はたくさん出版されておりますが、個人的には以下の2冊がCXの全体像からマップ設計の詳細までカバーされており、わかりやすかったです。

『CX戦略―顧客の心とつながる経験価値経営』


『はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ』


EJMを簡単に整理すると、

①対象者の行動や体験を洗い出し、
②行動や体験の中で経験してほしいことや感情を整理し、
③それを支援するための施策を検討する

ことです。

その行動や体験の流れを旅に例えているので、Employee Journey Mapといいます。EJMを整理することで、対象者がその旅の中で企業やチームとどのような行動や接点を持つのかが整理でき、そこでの経験を通じてどのような体験・感情を得てもらいたいのかを描いていくことができます。

ちなみに先ほど紹介した「はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ」では、Customer Journey Mapの描き方をプロセスごとに丁寧に解説されているので、こういったものに始めて触れる方にはとても参考になる書籍だと思います。おすすめです。

4.EJMの2つの前提

EXを考える上でとても有用そうなEJMですが、検討する際には2つの重要な前提があります。

2つの前提とは

①ペルソナ(対象者)を設定する
②ジャーニーの場面(期間)を設定する

ことです。

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EJMに関する解説が広く知られていないのと、EJMのフレームワークの構図が非常にまとまっているため、EJMを前後の文脈なく知った場合、EJMを「施策の全体像(人材マネジメントサイクルの全体像をおさえるための一覧表)」のように扱ってしまうことがあるかと思います。
ただ、その捉えた方は実は誤りで、EJMというのは「対象と場面に合わせて複数存在」し、EXの施策の全体像を捉えるものではなく「対象者の視点に立って体験・感情を整理する1プロセス」に過ぎないのです。

以下にそれぞれの前提について、少し詳細に記載します。


①ペルソナ(対象者)を設定する
EJMを描く前に最初に行うのはペルソナの設定です。(ペルソナは採用を担当されている方にはお馴染みですね)ペルソナの設定軸については様々あります。自社の人材ポートフォリオをベースにペルソナを描いてもいいですし、新卒採用と中途採用の観点や社員のライフステージ、社歴、人事制度の等級区分などを紐づけて考えていくこともできると思います。

切り口がたくさんあると書いた通り、EJMは施策の全体像を表す「施策起点の一覧表」ではなく、「対象者起点の体験と感情の整理」を行うものです。なので、対象者を様々な切り口で捉え、その人の視点に立った体験・感情を毎度整理してみるというのが正しい使い方であり、活用すればするほど様々なペルソナをベースに色々なEJMが見えてくることになります。

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(ペルソナを描くのイメージ)


②ジャーニーの場面(期間)を設定する
続いて大事なのがジャーニーの場面(期間)を設定することです。例えば、「中途採用者の内定承諾から入社3か月までのジャーニー」とか「ハイパフォーマーを次期昇格候補とする期初から期末までのジャーニー」「退職意向のある社員の退職意向表明から退職後の接点づくりまでのジャーニー」などしっかりと起点と終点を定義することが重要です。

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(場面・期間を設定する)


この②については、いろいろな意見があるように思います。そこまで細分化していくと際限なくなってしまうので、ペルソナの設定は行ったうえでジャーニーの期間は普遍的なもの(人材マネジメントのサイクルなど)を置いて考えるという意見もあるかもしれません。

ただ、個人的にはこの場面の設定は重要かなと思います。もともと、CXにおけるCustomer Journey Mapでも、最後は購買行動や企業・商品のシェア、ファン化など明確なゴールに向けて逆算的に接点を整理していきます。EJMでも同じようゴール設定(起点と終点)がないと、結局体験のつながりに意味を持たせることができません。
逆の言い方をすると、ゴールに向かって体験を整理するんだという意図を持ってEJMの設計に臨まないと体験・行動別にあるべき姿を考えるだけのものになってしまいEJMにマップとしての意図がなくなってしまいます。(つまり結局は施策の一覧表と同じようなアウトプットになる)

①と②の前提をおさえた上で改めてEJMの活用をイメージすると時間をかけて抜けもれなくマップを埋めるために活用するのではなく、ペルソナと場面を仮置きしてクイックにマップを描いては体験・感情・施策を俯瞰し、足りない部分や体験のストーリーがつながっているかを確認していく作業の一部となってくると思います。

世に出ているEJMのフレームは非常に美しいものが多いため、いきなり完成イメージを頭にいれてしまうとEJMの設計が非常に工数がかかるもののように感じるかもしれませんが、あまり構えすぎずにサクッと紙に書いて整理してみるとかそいういうところから始めていけるものかなと思っています。

5.最後に

前回のnoteにも書きましたが、働き方が変わることで組織との接点のあり方もこれまで通りにはいかなくなってきます。人事担当者も今までより社員の動きをリアルな目で捉える時間が減っていると思いますので、EJMを活用し社員の目線に立つことを心がけるのは大切なことではないでしょうか。

もし、EJMの切り口(ペルソナと場面)でこれは!というものがあれば、ぜひご教示ください。きっと様々な企業で同じように活用できる切り口が存在していると思うので、このあたりは情報シェアしながらいろいろな場所で組織・人事の発展に寄与できるとおもしろいと思っています。

今回はここまで。ありがとうございました。

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