一橋大学マンキューソ准教授によるハラスメント(11)教員が流布したフェイクを拡散した学生に送付した内容証明

「大学における差別・ハラスメントについての緊急シンポジウム」を8月3日に開催します。

今年国立市で新しく施行された「国立市人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくり基本条例(平和・人権条例)」について取り上げ、大学での差別規制のためにどのように活用できるかを考えたいと思います。
国立市議会議員の上村和子さんに加え、専修大学教授の河野慎太郎さんがゲストです。また千葉商科大学専任講師の常見陽平さんにビデオメッセージをお寄せいただきます。
ぜひお越しください。

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さて、一橋大学の准教授ジョン・マンキューソ氏によるハラスメントについて取り上げていきたいと思います。

今回の記事では、マンキューソ氏の影響を受けた学生によるTwitter上でのデマや誹謗中傷に対して我々ARIC側がとった措置とその経過について説明していきます。

以前の記事で詳しく書きましたが、マンキューソ氏は、自身が担当している英語の授業の最中に私やARICに対して悪質なデマや誹謗中傷を行なっていました。
そしてこうしたデマ・誹謗中傷によって影響を受けたシンパの学生がTwitter上で我々ARIC側に対してデマや誹謗中傷の拡散を行なっていたのです。

※詳細についてはこちらの記事をご覧ください。


さらにこれだけでは止まらず、マンキューソ氏に好意的な学生が匿名で流したデマがさらにネット上に拡散することで、それを元にさらにネトウヨがデマを流すという事態が生じています。

大学の権威とインターネットを利用したフェイクニュースの拡散プロセス

つまり、

①マンキューソ准教授によるフェイクニュースが授業内外で流布
②それを信じた学生・卒業生によるフェイクニュースのSNSでの拡散
③ネトウヨによるそのフェイクニュースのSNSでの拡散

という大学の権威とインターネットを利用したフェイクニュースの拡散プロセスがあるのです。

こうした学生によるをデマ・誹謗には本当に困りました。それで私たちは、デマを流した匿名アカウントの学生が誰であるかを特定し、その学生が所属するゼミを特定しました。その指導教官に対して、ゼミの学生が同じ一橋大学の学生である私と学内サークルを誹謗するデマを流していることにたいして相談に乗ってほしいと連絡をしたのです。

しかしながら、その教員は会ってもくれなかったのです。自分は関係ない、という態度でした。同じ一橋大学の学生を明らかに誹謗しているのに、なんの対処もしてくれなかったのです。

そうこうしているうちにも、当該学生の匿名アカウントによる誹謗中傷は1000近いリツイートがなされ、無視できない実害を生んでいました。しかし一橋大学の教職員もこの問題に対して何もしてくれません。

そこでやむなく私たちはマンキューソ氏によるフェイクニュースに踊らされ、私とARICが暴力を振るったなどと名誉毀損した当時経済学部4年生の学生本人を刑事・民事で訴えるよりほかなくなりました。一橋大学の教員が学生にデマの流布をやめるよう教育的な指導を行っていたら、こんなことする必要がなかったのですが

弁護士にお願いし、提訴する旨の内容証明を送ってもらうまで、非常な時間と労力をかけるほかありませんでした。そしてようやく内容証明を送ってもらえたのが何とほぼ1年も経過した2018年8月。

こちらがデマを流した一橋大学経済学部4年生(当時)の学生に対して実際に内容証明郵便で弁護士を通じて送付した通知書の内容です(抜粋)。

マンキューソ准教授によるフェイクニュースを流した一橋大学経済学部4年生(当時)の学生に弁護士を通じて内容証明郵便で送付した通知書の内容

1.「一橋に蔓延る某エセ人権団体、活動内容がかなりグレーでそれを批判した教授に対し、録音したまま肩パン(暴行罪に当たらない)をしに行って相手の暴行を誘発した挙句、結局その教授がやり返さなかったから虚偽の内容をハラスメント相談室に持ち込んでそれが受理されたらしく、手口が卑劣極まりない。」
(https://twitter.com/yn_8941971/status/917020777915883525)
2.「その団体の名前はARIC、百田尚樹氏の講演潰した団体に同じ。個人的にも胡散臭いとは思う。」
(https://twitter.com/yn_8941971/status/917025385920970753)
3.「その教授はハラスメント相談室に受理された後、弁護士を立て警察署にまで行き法的書類を用意、法廷に出ることも辞さない姿勢だったけど驚いた大学側が独自調査をするという事で話かがつけた。ただまだ独自調査なるものは行われてないらしい。そしてその教授は結局授業が1年停止、非常に理不尽。」
(https://twitter.com/yn_8941971/status/917029529037676544)
上記本件各投稿は、ツイッターにおいてツリー状の言説として構成されていることから通知団体を指し示していることが明らかでありますところ、その投稿内容においてまったくの虚偽であり、何ら事実に基づくものではありません。 
まず、通知団体の活動〔ARIC:注引用者〕に対して「それを批判した教授に対し、録音したまま肩パン(暴行罪に当たらない)をしに行って相手の暴行を誘発した挙句、結局その教授がやり返さなかったから虚偽の内容をハラスメント相談室に持ち込んでそれが受理された」事実は存在しません。また、通知団体が「百田直樹氏の講演潰した」事実も存在しません。本件各投稿において示される「教授」とはジョン・F・マンキューソ(MANCUSO,John f.)氏のことと思われますが、同氏に関する「授業が1年停止」した原因に通知団体の活動が関係しているという事実も存在しません。
また、貴殿は本件各投稿において通知団体を「某エセ人権団体」「活動内容がかなりグレー」であるとしていますが、その根拠らしきものすら上記の虚偽事実以外には一切示されていません。
以上のような本件各投稿が、真実として公開の場で語られていることによって、通知団体としては社会的評価を低減されたものであり、現在もその団体としての名誉を侵害されています。
つきましては、本書面到達後速やかに、上記の本件各投稿(URLに示された3つの記事)を削除するよう、本書面をもって通知いたします。あるいは、貴殿において本件各投稿内容が伝聞等ではなく客観的根拠に裏付けられたものであって真実であるという御見解でしたら、その旨を「客観的根拠」に関する資料も添えて当職まで書面でお知らせください。
いずれにせよ、本書面到達後14日以内に上記本件各投稿の削除がなされず、貴殿からの客観的根拠資料の提示もなされない場合、民事事件としての提訴、刑事事件としての告訴等、考え得る一切の法的措置に及びますので、この旨十分に御承知おきくださいますよう本書をもってあらかじめ強く警告しておきます。
最後に、本件に関しては当職が通知人代理人として受任いたしましたので、今後貴殿からの本件に関する御連絡等あれば、当職宛まで書面で御連絡くださいますよう、併せてよろしくお願いいたします。
まずは要用のみにて失礼いたします。 

上のツイートの内容は、マンキューソ准教授が垂れ流したフェイクニュースの内容がうかがい知れるもので興味深い(処分によって1年も授業が停止したという事実に反するデマとか)のですが、いまは措いておきます。

さて、この通知が届くとどうなったか。当該学生(その時は一橋大学を卒業して某大手企業の新人社員として働いていました)は即座にツイートを削除してしまいました。
いったい何だったのでしょうか?
けっきょく自分が言っていることに自信もないのに、また事実かどうかも確認しないまま、私とARICを誹謗するツイートを匿名アカウントで、じつに一年ほども拡散し続けたわけです。
なぜこんなことができたのでしょうか?
それは①マンキューソ准教授という国立大学教員という権威と、②一橋大学の授業という権威こそが、根拠のないデマを学生に流布させたのです。(それに加え③無意識/意識的なレイシズムが背景にある)

ところで本人からは、何の謝罪もありません。私梁英聖を彼はツイッター上でブロックしたうえ、マンキューソ准教授のツイートをリツイートし続けています。
全く何の反省もないといえましょう。彼はいまも、一橋大学という権威を背景に某大手企業に就職し、2年目の社員として特権的な労働者として不自由なく暮らしていることでしょう。

匿名アカウントによる一橋大学学生のデマツイート事件から得られる教訓

ここで重要な教訓がいくつかあります。まずは、

①今の時代、いくら言っても反省しない学生がいるという事実
②しかし反省しない学生でも、差別やフェイクニュースを許さないと言う、社会的な抑止が加わった場合、とりあえず加害はやめるという事実

です。

私たちは②を重視します。被害者から言わせてもらいますと加害者の「反省」などもはや聞きたくありません。とりあえず加害行為をやめてくれることが最優先であり、そのために必要なのは「理解」や「教養」などではなく、社会的な「抑止」―ということが、この事例からわかるのです。「抑止」としての反差別こそ(いいかえれば正義としての反差別が)、戦後日本社会には欠落してきたものだったのではないでしょうか。

これは一橋大学はじめ「リベラル」な教員の方々によくお考えいただきたいのです。従来の反差別教育で想定されていたのはおそらく学生の「良心」がうまく作用することを前提とするものであり、マイノリティ/マジョリティの相互理解によって差別はなくなる(だろう)というものです。
しかし、いまやこの前提は通用しない、と考えたほうがよい。
「理解」が通用するかどうかはともかくも、とりあえず加害行為をどう防ぐか、加害者を差別させないためにはどうするか、という問いを立てるべきです。
「リベラル」であるはずの、また「エリート」であるはずの、「教養」があるはずの一橋大学の学生でさえ、このレベルなのですから。

もう一つの教訓は、

③そもそも一橋大学の加害学生のゼミの指導教員が学生に適切に教育的な指導をしていれば、名誉棄損による刑事告訴・民事で提訴するまでもなかったのです。
④そもそもマンキューソ准教授を一橋大学が処分していなかったからこそ起きた問題です。

つまり、法律以前の、一橋大学という一つの市民社会内の自治的な民主主義による差別抑止力が機能しなかった問題なのです。

(これこそじつはマリ・マツダらの『傷つける言葉』(いまARICの若手研究者が翻訳しています)が提起した問題でした)

改めて大学の権威とインターネットを利用したフェイクニュースの拡散プロセスを考える

長くなったのでそろそろ終わりにしますが、最後にこの問題を考えましょう。

結局、ほぼ1年間も時間と労力を費やして、たった3つのツイートしか削除させることができませんでした。しかしほぼ1年も1000ちかいリツイートによってジョン・マンキューソ准教授が流布したフェイクニュースは、SNSで私とARICを攻撃したり差別する極右やネット右翼によって、大いに利用されてきたのです。それは今でも変わりません。

これをどう考えればよいのでしょうか。

もちろんこうした問題の中心は結局のところマンキューソ氏によるデマ・誹謗にあります。

しかしそれだけでもない。マンキューソ氏の手口に特徴的なこととしては、マンキューソ氏自身は自身のTwitterではあまり多くのことを呟かずに、むしろ学生が積極的にデマの拡散を行なっていたという点です。

というのも、自分はできるだけ授業内という閉鎖的な空間で私たちに対するデマや誹謗中傷の拡散を行なっておきながら、インターネットではむしろ学生に匿名でツイートさせ、それを自分のアカウントでリツイートするという形をとっていたのです。

デマの発信源は安全圏にいながら、それを大量に拡散して実害をもたらすのは学生であるという構図は、昨年問題となった弁護士不当懲戒請求事件を彷彿とさせます。というのも、不当懲戒請求事件でも、デマの発信源は懲戒請求を送らず、実際に大量の懲戒請求を送ったのはデマによって煽動された人たちでした。

ここまで悪質な、手の込んだフェイクニュース拡散の手口をマンキューソ准教授が駆使していることに、私たちは改めて驚愕します。

どうすればよいか。いうまでもなく、大学内において差別を禁止し明確に処罰するという基本をまずは行うべきです。
教訓のところで書いた通り、じつは大学が厳しく差別に対処するということをやっていれば、この問題は十分防げるものだったのです。
しかし差別とハラスメントの不処罰が続けば続くほど、ここに書いた通り、授業でフェイクニュースを垂れ流し、学生に匿名アカウントでそのフェイクニュースを拡散させ、自分がそれを根拠にフェイクニュースを拡大再生産させるという、うそのような酷いハラスメントが可能になるのです。

今回は以上です。

冒頭でも紹介しましたが、8月3日に一橋大学で大学における差別・ハラスメントを考えるためのシンポジウムを行います。
このシンポジウムは、公的機関における差別を禁止するために私たちがどう行動すべきかを考える上で貴重な機会になるかと思いますので、ぜひお越しください。

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