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管理系部門がIPO準備でやること Part.01 - 管理部門全体編 -

 管理系部門は、IPO準備前、準備期間中は大忙しです。でも、いったい何から手をつけて、何をやったら良いの?と迷うことが多いかと思います。
 今回から数回に分けて、管理系部門がIPO準備でやることを、まずは全体編から、次回以降は個々の部署ごとにPickupして説明します。
(*ただし時系列ではないので、その点はお許しください。)
(*約5分程度でお読みいただけます。)



管理系部門がIPO準備で大忙し(?)

 IPO準備をする会社では、多くの社員がその準備に携わる・・・ハズですが、意外にも「一部分の社員」のみで準備を進めてしまうケースが多いようです。大抵の場合は、管理系部門の社員がメンバーのメインとなり、これを軸(中心人物)にして他部門を少しずつ巻き込んでいく、という感じでしょうか。

 私の考えでは、このかたちは間違ってはいないですが、けっして “ 正解ではない ” と考えます。なぜなら、IPOは会社の出来事であり、初動(準備前)から管理系部門以外にもある程度、部門横断的にメンバーを集めないと、やるべき行動が取れないことになるからです。また、まずは上場後の会社全体の「あるべき姿」を考えたうえでIPO準備を始めるべきところ、一部分から準備を始めて徐々に全体を作っていく、という会社があるかもしれませんが、それでは順序が逆です。枝葉末節の言葉のとおり、主要な幹が無いままでは、一部分からの準備は、あまり意味がありません。それと、IPO準備は部分的に “ 人海戦術 ” に頼ることもしばしばありますので、ぜひ準備前の全体設計を怠りなく行なってください。



 さて、IPO準備に携わるメンバーの多くは、管理系部門から選抜されるかと思います。経理はもとより、総務、法務、人事に至るまで総力を結集することになります。
 「人事が?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。今回多くは触れませんが、人事に携わる皆さんも、準備の作業タスクでは直接のメインメンバーとして動いていただく場面がありますので、お楽しみに!


 管理系部門で大忙しになるのは、経理と法務ではないでしょうか。主要業務と準備作業タスクが重複しているため、仕方ないところかと思います。これに総務の皆さんの “ 縁の下の力持ち ” があれば、心強いところと思っております。




長い道のり

 先般「IPO準備の内部統制 Part.03 」で、どのくらいの準備期間を要するかについて少々触れましたが、改めてご紹介すると次のようになります。


  • 会社のサイズに合った内部統制体制を見定め(3か月〜)

  • 各プロセスの内容等の整備と整備評価(6か月〜)

  • 各プロセスの運用評価に必要な証憑(1事業年度分)の収集。これと並行して上記整備状況の微調整(1年〜)


 「長い」と思われるかもしれませんが、東証より発表の「新規上場申請者に係る各種説明資料の記載項目について」(最終更新日 2022年6月30日 *グロース市場/適用対象 2022年7月1日以降に上場を希望する会社の申請から適用。)の最終ページに上場申請時の添付資料に次のように記されております。


<添付資料について>
a 最近1年間の取締役会議事録の写し
b 最近1年間及び申請事業年度の監査役会(監査委員会、監査等委員会)議事録の写し
c 最近1年間及び申請事業年度の監査計画の立案から実施、報告等に至るまでの一連の監査役監査(監査委員会監査、監査等委員会監査)資料の写し
d 最近1年間及び申請事業年度の内部監査計画の立案から実施、報告及び改善等に至るまでの一連の内部監査資料の写し
e 最近1年間の法人税申告書及び添付の勘定科目内訳明細書の写し
(*以下省略)

東京証券取引所「新規上場申請者に係る各種説明資料の記載項目について」


 上記のように、1年間分の資料を必要としています。
 これが先にご紹介しました準備期間の「各プロセスの運用評価に必要な証憑(1事業年度分)の収集。これと並行して上記整備状況の微調整(1年〜)」にあたります。また、添付資料のそれぞれをよく見ると、1年間分を用意するためにはそれ相応の前準備が必要です。これが先にご紹介しました準備期間の「会社のサイズに合った内部統制体制を見定め(3か月〜)」、「各プロセスの内容等の整備と整備評価(6か月〜)」にあたります。これは「決まり」というよりは、この資料から当該申請会社の状況、内容をつぶさに把握、確認、審査するための資料としては最低限必要な資料だと思います。

 以上のとおり、IPO申請までには相応の期間が必要となりますので、準備に携わる社員の皆さん、特に管理系部門の皆さんの負担は、重いものになります。




負担の少ない準備の進め方

 先のとおり、IPO申請までには相応の期間が必要ですが、これは上場申請時の必要資料を整えるための期間で、準備タスク自体がこの期間を必要とするわけではありません。それでは時間的な量は置いておき、タスクとしての量はどうでしょうか。これは調整できるものと考えます。具体的な内容は次回以降説明しますが、私からは特に管理系部門内に留めますが、業務の分担(配分)や業務開始時期、人員の配分等、いろいろ目を配れば、管理系部門だけに負担が掛かることは少なくなるものと考えます。特におすすめとしては、IPO準備当初は会社内の社員で慣れている方は少ないものと思いますので、その点はいったん外部に業務を委託しつつ、その業務のやり方や進め方を伝授してもらい、来たるべき申請期前後で社員がメインに入れ替わる、というものです。こうすれば、上場申請前後に人材採用で困ることもなく、また、必ずしも上場会社として必要な業務(例:内部監査、IR等)について正社員でなければならないわけではなく、上場後も引き続き外部委託のままでもよい業務もありますので、この点はいつでもご相談を承りますので、お気軽にご連絡ください。


 ただし、私は「気軽にIPOができる」とおすすめしているわけではありません。しっかりとした準備は必ず必要です。しかしながら、これに相応の期間と費用がかかり、そのうえ上場料(証券取引所に支払う新規上場料金、年間上場料金など)がかかりますので、準備会社はかなり重い金銭的負担を強いられます。また昨今の人材不足を考えると、人材採用にかかる費用は高騰しておりますので、上場制度としては門戸が開いているものの、金銭的、人材的問題が発生して上場を断念する会社が多いのも事実です。


 私がこれまで内部監査、内部統制、管理系部門に関する記事を皆さんにお示ししている目的は、IPOすることでワンランク上に飛躍できる “ ハズの ” 準備会社において、企業価値を高めることができるチャンスを逃さないように、いろいろな切り口で少しでもお手助けになるようなお勧めをしたい、と考えたからです。

 しかし、IPOは会社成長の “ マイルストーン ” (中間地点、節目)であり、決してゴールではありません。これを理解している経営者の皆さんであれば、自ずと取るべき手段は選択できるものと思います。


 ともあれ、このマイルストーンを通過するために、管理系部門の皆さんが疲れてしまっては、もったいないです。経営者の皆さん、ぜひ社員に無理なく、しかし会社の次の飛躍のために、IPO準備についてご検討ください。




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