師走

師走

終電の人も疎らな駅から改札を抜けると
慣れ親しんだ街並みも冷たい空気に覆われ
知らん顔したかのような表情を僕に向ける

マスクをつけたまま、眼鏡をかけると 自分の呼気で曇る視界
街灯は綿毛のように、はたまた アメーバのようにも見える
このレンズ越しの世界でも この道は歩きなれた道 迷うことはない

さあ
歩けよ 歩け
しっかりと踏みしめろ

二本の
足で その足で

いつか繋がる この道を
走れ、走れ

研ぎ澄まされた五感とCONVERSEのソールの薄さが
普段よりも余計に地面の硬さを伝える

知らず、知らずの師走

外気と呼気の温度差で、水滴のついた不快なマスクを剥ぎ取る
解放された熱気、さらに鼻から冷たい空気を取り込み
息を吐く、眼鏡を外す、視界は良好
今一度 白い息を吐き、行方を追う、澄んだ冬の空気

今ならさ、月くらいわけなく届く気がするんだ
大丈夫、君の所なんてすぐにつくよ
だからさ、もう少し待っておくれよ
その時までは、お別れさ

ほら、また誰かの足音が聞こえる
すぐに会えるよ、うん、それじゃあ また

「暮れまして、ありがとう」


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