マガジンのカバー画像

本の感想(ネタバレあり)

45
読んだ本の感想を勝手に呟きます。
運営しているクリエイター

#読書感想文

「真珠とダイヤモンド」(桐野夏生/著)を読んで思ったこと(ネタバレあり、そしてちょびっと辛口だよ)

2023年2月5日発行。しばらく積読してたけど、やっと読んだ。読むのが遅い私にしては驚異的速さの3日間読了。読んでる間はすごく熱中した。だけれども、読了しての感想を問われるとちょっと微妙な雰囲気で…。ちなみに私、桐野作品の大ファンなんです。本当に。

❖簡単なあらすじ ❖
バブル前夜の1986年に、とある証券会社に新卒入社した男女3人を中心として進む物語。未曽有の好景気に浮かれる世の中の狂騒と、巨

もっとみる

「地図と拳」/小川哲 ネタバレあり感想文

3月下旬から読み始めて、さっき5/1に読了。およそ1ヶ月と一週間ぐらいかかった。長かったー。でも、日露戦争から第二次世界大戦ぐらいの時期を描いた世界は好きなので、これでも結構真面目に読んだ。で、なによりも、625pの本文を一気読み出来る或いは3日以内で読み切れるような、時間に余裕のある人向けの小説だと思った。会社勤めとかしていたり、私のように読書は基本的にスキマ時間で読もうとするような人間は、ちょ

もっとみる

燕は戻ってこない ちょっと辛口でしかもネタバレありの感想文

相変わらずするするっと読ませる筆力で、読み始めると止まらなくなる中毒性のある物語も健在。とても重いテーマを扱っているのに、そしてそのテーマにこれ以上ない環境で生きる主人公を据えながら、どこか飄々としたユーモラスなやりとりが(かなりブラックユーモアではあるが)物語に、確実にある救いを齎している。怪奇小説や楳図かずおの漫画が、怖いを通り越して思わず笑ってしまう珍妙さをも一緒に運んでくるように。

 物

もっとみる

「砂に埋もれる犬」/桐野夏生/ネタバレありの感想文

帯にはこれでもかというほど「牢獄」だの「憎悪」だのと言った煽情的な言葉が躍っている。まるで桐野夏生ここにあり、みたいな。それはいい。桐野夏生先生の著作のなかでも、この本は途方もなく異質であるという意味で、「ここにあり」だと思うからだ。

まぁ、私も帯の煽り文句につられて、買って割とすぐに読み始めた方なんだけど、桐野夏生作品の、もっと酷い場面やラストシーンを見てきた私達(と敢えて言うけど)読者にとっ

もっとみる

ブロマンスの行きつくところ  「インドラネット」桐野夏生 著(ネタバレあり)

桐野夏生先生のファンである。だから、今回の本も期待大で読んだ。

高校の時の親友とその姉妹とが行方不明となり、26歳の主人公・晃(あきら)は、(冷静に考えれば)身元のよく分からない人間から依頼されてカンボジアへ旅立つことになる。そこで、いろんな人と会い、いろんな目に遭い、少しずつ逞しく変わっていく主人公…、の話かと思って読みはじめた。

で、途中まで、なんら切迫感が伝わってこない主人公の行動と人間

もっとみる

スモールワールズ/一穂ミチ

第165回直木賞候補作 という見出しと評判の良さにつられて買った。この方は今も現役の商業BL作家で、最近は文芸雑誌にその軸足を持っていっているのかな? と思われる「小説現代」とかでの露出だったけど、まさか日本推理作家協会賞の候補にまで入っているとは、知らなかったのでびっくりした。で、BL作家として10年のキャリアをもつこの作家が、一体どんな一般文芸作品を書くのだろうと、ちょっと意地悪な好奇心もあっ

もっとみる