「地図と拳」/小川哲 ネタバレあり感想文

3月下旬から読み始めて、さっき5/1に読了。およそ1ヶ月と一週間ぐらいかかった。長かったー。でも、日露戦争から第二次世界大戦ぐらいの時期を描いた世界は好きなので、これでも結構真面目に読んだ。で、なによりも、625pの本文を一気読み出来る或いは3日以内で読み切れるような、時間に余裕のある人向けの小説だと思った。会社勤めとかしていたり、私のように読書は基本的にスキマ時間で読もうとするような人間は、ちょっと慣れるまでが大変だった。膨大な地名、建物、登場人物、ロシア人、中国人、日本人、の(特に中国人の)名前に章が変わるまでふりがながつかない不親切さとかね(笑。嘘です、ふつうは章が変わるまでふりがなはつけませんよね)。

それで、読了してから、ああ、なるほどと思ったけど、物語が始まってすぐに主人公かと思っていた高木少尉が絶命してしまったのはかなり驚いたし、びっくりした。
実際には、彼をめぐり、彼を追うかたちで時が降り積もる、いうてみれば物語の背骨の部分を担っていた大事な登場人物なんだったが、それは最後の最後のシーンに来てやっとわかったって感じ。

そんで作者がそのことはたいして意図してないのは分かるけれども、人物の描写が極端に少ないから、誰が誰だか途中で分からなくなる。後半は頻繁に眼鏡をかけていると説明がつくけど、最初出てきて、しばらく潜っててまた出てきたときに、眼鏡 ときいても「そんなんかけてましたっけ?」ってカンジだった。

物語最後まで消えない、細川と高田の関係、高田の姿。これはずっと忘れずに読み進めることは出来た。だけれども、前半地図を作っているクラスニコフ神父の行動のほかは、機密事項のため(当時地図は最高の機密)隠されているうちにいつのまにかワタシの頭から抜け落ちていき、いつのまにか地図のハナシが建築のハナシになっていた、っていう印象だ。
んで、ラストシーンで、それがなんとなく融合するような雰囲気。

そう、なんていうか、「識者」とか、「あの時代に詳しい人」向きな小説のフンイキが徹頭徹尾ぷんぷんしていた小説だった。…ように思うのは、たぶん私が門外漢だからだけ、というわけでもあるまい。

建造物の大河ドラマと言ったらいいか、途中で建築の話にもっていかれたかと思ったら、16章に至ってまた地図の話に戻ってきた。

あと、全18章(+序章、終章つき)のうちの16章でまた新しい登場人物出すのヤメテ~と思った。

でも面白かったよ。(でなければとっくに途中でやめていた)
そんでいっぱい付箋も貼ったし、黄色の蛍光ペンでラインも引いた。

文章すごく魅力的。巧い。
でも、、、、知識のない読者にはもうちょっと説明がほしかった…

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