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剣城かえで
2024年6月12日 20:16
「どうして、生き続けなければならないのか――苦しみながら、生きねばならないのか」 雨が降っていた。いつから降り出したのかを、どうしてか思い出せない雨だった。よく晴れた空を、見た記憶を探していた。広い砂浜で、無くしてしまった一粒の砂を探すような試みだった。見つけることを諦めながら光を探し続けないと、気休めがなかったのだ。だが、縋ることにも疲れていた。光の存在を、無いものだと決めつけることができな